The Iron Lady
January 1, 2012
お腹がすいているのに、こーゆーことのめんどーを見てくれるはずのひとはみんなモニの世話にうつつをぬかしていて、わしはうち捨てられた子犬のように暮らしているので、テーブルの上に皿がない。
こーゆーときには日本の上流家庭では、まず右を見て「おーい、右近はおるか」とゆってしばらく待ち、左を見て「おーい、左近はおらぬか」とゆって、またしばらく待ち、それから悠然とたちあがって、「では仕方がない、わしが自分で食べ物をつくるとするか」と台所にたってゆくものだと誰かが書いていたが、誰の本だかもう忘れた。
ニョッキが食べたい、とツイッタで述べたら、だんだん身体がイタリア主婦化しつつある(特に悪意のある表現ではありません)とゆわれている「すべりひゆ」が呪文を教えてくれた
https://twitter.com/#!/portulaca01/status/153066058163556352
ので、ゆわれたとおり、
「ニョッキにょきにょきぱぁ~!ニョッキにょきにょきぱぁ~!!!」
と必死に唱えてみたが、ニョッキはあらわれなかった。
…また、欺されてしまった。
呪文でおいしいゴルゴンゾーラソースにまみれた、ぷりぷりぷぷんのニョッキが出てくるという、いかにもありそうな話に、つい欺されたわしがバカであった。
信じていたのに。
閑話休題
モニが、ガメ、映画見に行こう、というので「The Iron Lady」を観に行った。
日本ではどんな名前かなあー、と思ったら「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」という椅子からずるっこけるような、打撃から恢復するのに2分間を要するような題名になっていました。
邦題、やめればいいのに。
映画は、これから観る人もいるだろうから内容はあんまし触れないが、サッチャー首相の一生を断片化して描いたもので、メリル・ストリープは芝居が上手だのおー、とか、
そーゆー素朴な感想をもったが、サッチャーの時代の連合王国が武力闘争時代のIRAとの激しい抗争(マーガレットサッチャーはIRAの爆弾によって親しかった同僚を失い、自分も、5人が殺され34人が負傷した「ブライトン・ボミング」
http://en.wikipedia.org/wiki/Brighton_hotel_bombing
で殺されかけている)を除いては、いまの日本と共通の問題があるかしれん、とヘンなことを考えた。
実際、日本が巨額というのもアホらしい負債を抱えていながら、一気にぶち倒れてしまわないのは、ひとつには過去の巨大債務国のケースを徹底的に官僚が研究しているからだが、サッチャーが頭角をあらわした1970年代末から1980年代には、連合王国は、「社会を構成する人間全体の需要に応えるだけの生産性がない」という、殆ど不治とみられる病に陥っていた。
イギリス人に訊けば、サッチャーの最大の功績は「肥大化した官僚や組合との対決に勝った」ことだというだろうが、実際には、ことはそう単純ではなくて、文明が発達した結果できあがった大衆社会の生活レベルそのものが生産性がおいつくわけがないところにまで来てしまった、というほうが当たっている。
簡単に言えば国民ひとりひとりが「最低限の生活」と考える生活を送るのに30万円かかるとして、収入は20万円しかない、という状態に国全体が陥っていたからでした。
慢性赤字なのね。
「モニさん、うち、もうずっと赤字なのよ。家計簿つくってみても、明日もあさっても今月も来月もずううううーっと赤字で借金がふえるだけなのよ。わたし、もうどうしたらいいかわかんない」と、しおしおと泣く大庭亀夫のような状態である。
家計と国家の財政を一緒にするなんて、サイテーだな、というカネのない正月でひまをこいたカシコイひとがまたあらわれそーだが、
サッチャーも、
「Any woman who understands the problems of running a home will be nearer to understanding the problems of running a country」
とゆっておる。
家計も国家財政も似たよーなもんです。
借金続ければつぶれるのよ。
恐怖と憎悪の対象であった、このサッチャー首相というひとは同時に
「If you want something said, ask a man; if you want something done, ask a woman. 」
口先ばかりで、内実は、自分の評判しか考えない連合王国の男共とはまるで違うひとでした。
いまでも大学の老先生のなかには、サッチャーの目の部分だけ切り離して逆さまに貼った
(やってみると判るが、こうするとマーガレット・サッチャーの顔は鬼よりこわい形相になります:注1)写真を飾って日々当時の予算大削減と大学を含む伝統社会を破壊しつくした政策の数々を呪詛するのが習慣(^^;)になっているひとがいるが、サッチャー首相の鉄腕ぶりは、それはもう見事、というか言葉の上でも、文化や学問を守る気がないのか、とでもちょっとでも言い返そう日には、この穀潰しのニセ学者のアンポンタンの唐変木野郎が、とえらい勢いで罵倒されてしまうので、誰も口答えが出来なくなるていのものでした。
そのくせ、日本のひとが映画を観れば必ず竹島や尖閣諸島を連想するであろうフォークランド諸島戦争になると、大蔵大臣が「戦争やるよーなカネないっちゅうに」とゆっておるのに、「これはカネの問題ではない。国家は領土で出来ておるのだ、そんなこともわからないのか、ボケ」とゆって、大艦隊を派遣して、途中で対艦ミサイルで船沈められまくってるのに、どんどん攻めて、途中で周章てたアルゼンチン政府が裏外交交渉で「和解してあげよーかあー?」「和解しない?」「和解して和解して和解して」と何度も和平交渉を申し出るのも無視して、ポート・スタンレーを包囲、陥落させた。
戦前は、もしかしたら、そのうちマイナスになるんちゃうか、とゆわれていたサッチャー首相の支持率は戦後73%にはねあがります。「カントリーズ・ダーリン」になって女王の嫉妬を買うほどになる。
ふりかえってみると、マーガレット・サッチャーは良くも悪くも破壊者だった。
もうあかんくなった古いシステムを延命させようと頭のわるい努力を続けていた男共を蹴散らして、錆びた企業管理システム、朽ち果てた教育制度、なかんずく、幹のなかが空洞化されて虚ろになっていた社会保障システムを、彼女は容赦なく叩き壊して歩いた。
自分のまわりの利権や利権にたかる有権者への媚びから「協議」「調整」を口にする男共を軽蔑しきったように、この首相はこう述べている。
「To me, consensus seems to be the process of abandoning all beliefs, principles, values and policies. So it is something in which no one believes and to which no one objects. 」
バカの話し合いはやすむに似たり、と述べる。
アメリカ合衆国では、政治のことはよくわかんねーけど、きみたちを笑わすジョークではおれのほうがうまいんだぜ、なレーガンが、古くさいシステムをバンバン壊して歩きます。
レーガン大統領に異議を唱える学者はたくさんいたが、レーガンという人はそんな研究者がくだくだしく述べる「あるべき政府の姿」がわかるほど頭がよくなかった。
なんだか、よくわかんねーけど、うるせーやつだなあーと呟きながら、どんどんがんがん旧制度をぶちこわしてまわりました。
きっと、「国家」なんてエラソーな顔してても現実はおれがむかし仕事をしてたハリウッドの書き割りみてーなこけおどしだろう、と真実を見破っていたのかもしれません。
このふたりを呪詛する声をうわまわる大きな賞賛の声がいまでも存在するが、それはふたりが信じた「完璧に破壊すれば新しい芽が必ず芽生えて育つ」という信念が現実のものになったからで、よく考えてみると、信念が現実にならなかったら、どーするつもりだったんだろー、と思うが、もうちょっと先も考えてみると、破壊しなければ今度は未来はゼロだったので、やっぱり正しいともゆえるか、と思う。
紙一重のところで、こういう危険ではあるが実行するしかない博奕を社会として打てる文明の力量の裏には、やはりサッチャーの言葉にある
「There is no such thing as society: there are individual men and women, and there are families.」
という、当時の「おまえに言われたくねーよ」という一部(^^)国民の呟きが聞こえてきそうな部分に垣間見えている「個人がすべて」という自由人社会の長くて分厚い伝統がある。
お正月早々だから、もういいや。
わしのこのブログは「あけおめでごんす」という正月にふさわしからぬ、おちゃらけたセリフで始まった。
シンガポールに行ってきた、と書いてあったが、実はシンガポールから書いていたのであって、嘘をついてすまんこってあったが当時は思いもかけない理由から日本にいるふりをする必要があったのです。
あれから、途中で何回かテキトーに理由をでっちあげてはつくった何回かの長期のサボリはあったものの、ずっと日本語で遊んでいる。
なんだか気が遠くなってしまう。
わしの社会では元旦は二日酔いの朝の日だが、日本では遙かにましな、静かな新年をすごすことを知っている。(実は、見たことないんだけどね)
でわ
ハッピー・ニューイヤー。
注1:後年2012年1月2日に森野夏の研究によって坂根巌夫作とおもわれるものが発見された。
http://scienceblogs.com/mixingmemory/2006/09/cool_visual_illusions_the_marg.php
ははは。唇もへっくりかえすと、もっとこわいんだな。
しらなかった。

