はにてんてんのちから

ガメ・オベール博士が最近発明した表記法によると、わっしは「ハにてんてんの力のあるひと 」であります。これを旧来の表記にしたがって書くと、「バカ」ともいう。

シャチョーなら、そんなの初めからわかってんじゃん、と言いそうですが、そんな自己客観視があっさり出来るくらいだったら、自転車操業の零細ゲーム屋なんかに職を求めたりしません。

わかってなかった。

わっしは、さっきまで妹と昼飯を食べておった。仲がよいからではありません。

金がないからです。

ハシがちゃんと使えないといういまどき珍しいひとである妹が和食と中華は嫌だというのでイタリア料理屋に行った。わっしはカツ丼が食いたかったのに。

注文を終わって、ひとの顔をしげしげと眺めた挙げ句妹がいうことがひどい。

「おにいちゃんって、ほんとうにダメなひとね」

まあ、日本語だと心底では兄を思ってるように聞こえなくもないですが、実際には、

「You are so useless」と言った。しかもsoが、soooooくらいだったな。

ははは。英語というのは身も蓋もない言語だということがよく判りますね。

わっしは全然おぼえてませんが、妹によると、

*子供の時、鼻の穴にタバコをつっこんで、とれなくなり救急車を呼ばれたことがある

*同じくガキんちょの頃、徒競走に出ていていちばんでゴールの直前まで来たのに妹とかーちゃんを見つけた瞬間、立ち止まって手をふって、全員に抜き去られた

*ハワイでパラセール(パラシュートをボートで引っぱって空に浮かぶ遊びです)をやっていて、高さが頂点に来たとき、係のおにいちゃんが「もうおりていいよ!」と冗談で叫んだら、真に受けてベルトを外し、まっさかさまに海に落ちて,

そのおにいちゃんを真っ青にさせた。

と、まだ延々と続くのですが、なるほど上のみっつだけでも立派にバカだ。

バカを直すには勉強するしかないのでなにか勉強しなければ、と大盛りでも足らんのでカルボナーラをもうひとつ注文しながら考えました。

わっしの本年の目標は日本語をパーペキにすることであります。

出来たらオカマ言葉とかもおぼえたい。

でもよく考えると「言葉」は「勉強」してみにつくものではありませんが、でも、それでも「勉強したい!」と思うことがあるものの筆頭です。

シドニーのニュータウンというところは街の名前は退屈ですが面白い店がたくさんあるところで、わっしは好きです。妹がボンダイビーチの有名な「アイスバーグ」で潮風に吹かれながらソルティドッグかなんか飲んで涼んでたある日、わっしは、摂氏42度のくそ暑い通りを歩いてニュータウンまで出かけた。

ここの大学裏にごしゃごしゃとあるド汚い学生アパートのひとつにフランス人の友達が住んでいて、そのビンボー人がわっしというもうひとりのビンボー人を呼んで、ふたりで昼飯を食おうと思いついたからです。

通りの外れにおいしいタイ料理屋があって、それは具体的にはどこにあるかというと通りの向かいがロシア人のやっている仕立て屋で二軒先がメキシコ料理屋でいちばん近いデイリー(タバコや菓子や飲み物を売っているよろずやのことです)がエチオピア人の経営である。名前は忘れました。

ここは滅茶苦茶人気のある店なのですが、愛想が悪い。

給仕しているのは話している英語からして多分二世代目くらいのタイから移住してきた女の子たちですが、はいもOKもなんにもなし。こわーい顔をして、のんびりなわっしが、ためつすがめつメニューを見てると、あまつさえ、舌打ちまでします。

ねーちゃん、あせるでない。人生は長い。と、わっしは思いますが、ねーちゃんの人生は短いもののようでした。

しかし、しかあーし!

わっしというひとの不撓不屈な点は、機嫌がいいときはなにが起きても腹が立たない。

もしかすると炎天下を歩き過ぎて(なんせボンダイビーチからニュータウンまで歩くと三時間はラクショーでかかります)頭がへんになっただけかもしれませんが、わっしは、そのとき幸せな気分だったのです。タイのねーちゃんが舌打ちしたくらいじゃ、機嫌わるくなりません。

いよいよ魚のすり身を揚げたの(日本で言えば薩摩揚げ、さつまでは天ぷら、タイでは….あかん、忘れた)とチャーハン食べたら、これが滅茶苦茶おいしい。

にゃはっ、にゃはっ、にゃはっ、とこれもロシア語が崩壊したようなへんな笑い声をあげて喜んでいる友人ともども、大喜びだったのでした。

安いし。

でっ、さっきからにらみつけられたり舌打ちされたりされているにもかかわらず、根が寛潤であるわっしは、タイのねーちゃんに「アロイ!」と言ってしまった。「アロイ、マー!」。

ケーハクを絵に描いたわっしのことでありますから、ただ知ってるタイ語を使ってみただけです。でも、これって、外国人がウエイトレスのバイトをやってる六本木の料理屋とかで「デリーシャス!」とか女の子に話しかけているバカタレおやじと行動としては同じですね。

ところが、その後に起きたことは、わっしには忘れられない。

あの仏頂面の女の子が、ほんとうに「花がひらくように」笑ったのです。

笑うと、すげー、かわいいんでやんの。なんちゅうか、日本のひとや西洋のひとにはない、恥じらいを含んだ、どーゆーか、ほとんどゲージュツ的な微笑です。

お金をはらうときも。わざわざタイの言葉で「コプン カー」と言って、ほんとうに嬉しそうに笑います。

わっしはタイ語をならいたいなぁー、と考えました。

だって顔はタイ人だけど態度は西洋人然としてたねーちゃんの態度の変化があまりに鮮やかで。

英語国民は「人間が英語を話すのはあたりまえだ」と思ってます。

そうでないふりを出来るだけの知恵があるひとはいても、心の中では、やはり染みついたようにそう思ってる。しかも、ほんとうはヘンな発音で話しかけられたりするのが、とってもとっても嫌なのです。

特に酔っぱらって英語を話したがる日本人、なんてのはゲジゲジより会いたくない。

バカの自己満足に付き合うくらいムダな時間の過ごし方はありません。

でもタイのひとは違うんだなあ。

妹よ。

来年は、タイに行こう。

おにーちゃんひとりじゃ、なにしろお金がないからね。

ふたりでタイに行って、タイ語でタイのひとといっぱい話そう。

そんな白昼夢にふけっていたら、妹に「今度は、おにーちゃんがおごるんじゃないと一緒に昼ご飯食べないかんね」と言われて我に返りました。

もっとおにーちゃんに敬意をもたんといかんやん。

アール イー エス ピー イー シー ティ!

画像はチェンマイの寺院境内に店を出している串揚げ屋台のおばちゃん。

魚肉豚鶏などのすり身を左の奥にある油で揚げてもらえる。

たしか、ひと串2バーツ(8円)。甘いソース(アオ ワーン、と言う)と辛いソース(アオ ペッと言います)が選べます。

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One Response to はにてんてんのちから

  1. じゅん爺 says:

    「愚兄賢妹」っちゅうのは、ふうてんの寅とさくらの貧乏下町人情話がテレビで始まったときのタイトルだが、そのガイジン・リッチワールド版「フーテンの亀と賢妹」みたいに思えてきた。炎天下3時間歩いたり叔父さんに迷惑かけたり、共通点いっぱいありそうだ。スポーツ版の「長嶋一茂とその妹」もかなり面白かったが、ガイジン版はスケールでかいし、ビンボーしててもビンボーったらしくないし、読後爽やか元気出てくる。ワシ大好き!ガメさんありがとう。違うのは、寅さんは最後まで結婚できなかったとこ。映画の寅さんシリーズは、ほんと憐れで可哀そうな話ばっかりだった。

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