Yes They Can

たまたま、ということなのかも知れないが、わっしはアフリカ人たちと相性が良い。

子供の時からずっとであって、逆にアフリカ人たちに嫌な思いをさせられたことは一度もない。前にも書いたがガキンチョのときにパリで、ひとりで地下鉄に乗る羽目になって途方に暮れているときも、わっしの下手なフランス語に耳を傾けて助けてくれたのはアフリカからの移民のひとたちだけであった。(パリの地下鉄は、その頃はまだ謎のような乗車方法だったのす)

やっぱり子供の頃、夏のワシントンDCで、用事のあるかーちゃんが妹だけを連れて出かけた後、わっしはひとりでよくアパートの近くの定食屋に昼ご飯を食べに行った。

アフリカン・アメリカンのおばちゃんが、わっしの国の常識からしたらぶっくらこくような乱暴な言葉で、「いったい、何食うの? あーん?」と言う。

わっしは当時からチョー生意気なガキだったので、「そんなにすぐに決まらないよ。わしはなんでも、ゆっくりやるのが好きなんだから、二三分したら戻ってきてよ」と言う。

おばちゃん(と言っても、いま考えてみると20歳くらいのねーちゃんだったわけだが)は、「けっ、この気取りまくった発音のクソガキが、えらそーに」という感じで、冷笑を浮かべると、くるっとまわって去ってゆきます。

戻ってくると、わっしは止せばいいのに、「ステーキパイ」はねーのか、と訊かずもがななことを言う。「なによ、それ?」と顔を顰めて言うおばちゃんに得意になって説明するわっし。

おばちゃんは「イギリス人ってのは、言葉が変なだけかと思ったら、食べ物もくだらないものを食べるんだな」と言う。わっしは、そのまま引き下がるのは米英戦争でもう一回負けるような気がするので、「じゃ、ステーキサンドでいいからさ。飲み物はアイスコーヒーにしてね」と言います。ひっひっひ。知らないだろ、アイスコーヒー。

アメリカは田舎だからな。トーキョーじゃ、ふつーの飲み物なんだぞ。むふふ。

平静を装って去ってゆくおばちゃんのカッチョイイ歩き方を眺めながら、独りごちるわっし。

おばちゃん、ただでさえコーヒーフレバーのお湯みたいなコーヒーに氷を山ほどいれて戻ってきました。出す前にちょと飲んでみたらしく「イギリス人って、なんだって、こんな不味いものを飲むのかね」と言う。

「ロンドンのは、もっと濃くてうまいんだよ」と言うわっし。

イギリス(当時)には、こんなもの、ねーけどな。

その日から、わっしは「アイスコーヒーガキ」という名称をもらって毎日、その通りをずぅーとずぅーとずずぅーと歩いていったところにある、汚いがむちゃくちゃうまい定食屋で昼飯を食っておった。あんまり治安の良い通りではないので、かーちゃんには、内緒。

変なにーちゃんのふたり連れに絡まれたときは、おばちゃんが、ぶっとんでやってきて、

「この坊主は、わたしの弟なんだから。手を出したら、ただじゃおかないよ」と言ってくれるのでありました。

わっしが、アフリカ人をはっきり自分に近しいひとたちとして感じだしたのは、その定食屋のねーちゃんくらいからであるような気がする。

アフリカ人は情が細やかで、親切である。男の子たちは「友達」として誠実である。いったん「友人」である、となると肉親兄弟のようである。女の子たちは、なんちゅうか、「フェミニン」であって、とても女らしい優しい気持ちをあふれるほど持っている。

わっしは滅多に汗をかかないが、くそ暑い夏の日、アフリカ人の女の子と並んでニューヨークを歩いていたら、女の子がハンカチを差し出したので驚いた。

連合王国のわが同種族の女の子が、そんなことをするのは想像するのも難しいので、おおげさに言うと、わっしはのけぞったな。

それだけでなく、一緒にいるあいだじゅう、女の子がわっしのことだけに注意を集中していて、わっしのことだけを見ていて、わっし以外のことはまったく考えていないのが、手に取るようにわかるのです。

わっしは、そういう訳で、つい最近まで自分が結婚するとしたら、ふつーに行ってアフリカ人の女の子だよな、と思っておった。こういう言い方をすると人種で相手を考えているようで気持ち悪いが、そーではなくて、なんとなく「お嫁さん」というものの自然なイメージがアフリカ系の女の子だったのす。

うまく言えないが、わっしはそーゆー結婚前の習慣にひきづられて自分がまるでアフリカ人であるかのように、ものを見てしまうことがある。

有名なひとでは、たとえば合衆国の大統領になったトーマス・ジェファーソンが考え方やものの感じ方がまったくアフリカ人そのものだったそうですが、わっしの場合は、ひどいときには鏡を見てそこにアングロサクソン然、としたにーちゃんが映っているのを不思議な気持ちで考えることもあったのです。

だからオバマが大統領になったときも、単純に喜んだ。

このひとは「黒人大統領」というよりも、合衆国の典型的な選良としてのアイデンティティのほうが遙かに強い、ということが頭ではわかっていても、やっぱり見た目です。

肌が褐色の人間が大統領という「民主的な手続きで選ばれる独裁的指導者」に選ばれたことを自分の国のことのようにうれしいと思った。

あれが「首相」のようなものなら、また違うニュアンスがあるのですが、大統領というのは要するに合衆国という国の独裁的な権力者にして全軍の最高司令官なので、これはたとえば日本のニュースで紹介しているような感じとは話がちょっと違うのです。

わっしはオバマのスタッフの人選を見ていて「ま、失敗だのい」と考えてます。

国家としての新しいビジネスモデルを見いださねばならないと解決しないところに合衆国は来ているのに、それとは反対の「古いサーカス」の面々ばかり並べてしまっている。

あのメンバーで経済を立て直すのは、まず無理でしょう。初めの二年間は少なくとも大失敗に終わると思う。

それから、どのくらい考えを変えて臨めるのか、予想も出来ませんが、普通に考えて、出足の失敗は大きく響きそうです。

世界はまた合衆国の「ベスト・アンド・ブライテスト」のバカ頭につきあわされるわけだ。

外交的にも、いまのスタッフの顔ぶれから予想される外交方針から考えられるのは、古い国権主義国家の政治地図による均衡の維持であって、国権国家のバランスなんて、そんなものは、もうどこにもなくなりつつあるのに、なんだか古くさい教科書を読んで勉強した頭の固い秀才の答案のようなことになりそうです。日本の人にいちばん関係がある東アジア・太平洋政策に至っては簡単に言うとオーストラリアのラッドとオバマ政権の組み合わせで中国政府の覇権は確立されたも同然、と思う。

ついに中国は念願の世界にたどりついた。

日本が、政治的にこれほど追い詰められつつあるのは50年代以降、初めてです。

長期政策として日本に残された道はインドに採算を度外視して肩入れするしかないでしょうが、どーも、インド投資に付きものの「めんどくささ」が祟って、それどころか日本はインドから撤退気味です。いまは日本という国は中国に媚びを売って生き延びようとしている。なんとか中国に取り入って仲良くしようとして必死なところだと思います。そうしているうちに日本はロシアに期待する方向に追い込まれていくのかもしれませんが、そうなるとなんだか近衛首相がいつか歩いた道みたいである。

わっしは日本のひとの何にでも「親日」「反日」とレッテルを貼りたがる癖をばかばかしいと思っています。アホみたい。たとえば昭和天皇は「親英」か「反英」かと言ったら(といって、そんな偏執狂みたいなことを考えるアホが、(いくらアホの宝庫として高名であるとはいえ)連合王国にいるとは思えないが)親英君主だったに決まってます。でも、だからといって英国人が「昭和天皇は英国にとって良いひとであった」と思うのは難しい。設問自体にどこか下卑て見当外れなところがある。そういうレッテルを手にたくさん持っているひとが住んでいる国には、わっしなら、あんまり住みたくありません。

しかし、ヒラリー・クリントンというひとは、よく知られているように非常にはっきりして明確な「プロ中国」の政治家で、このひとが国務長官になって日本の「国益」が大幅に損なわれない、と考える人はこの世界に存在しないでしょう。

中国という国がアメリカの経済再建に協力することを条件に手に入れてゆくものの大きさは多分歴史上不可逆的なものにまでなるはずで、中国にとっては実はオバマ政権の成立こそが世界覇権確立のスタートになると思います。

アフリカ人のオバマが合衆国の大統領になったことは、合衆国一国の出来事であることをこえて世界の希望の象徴である、とわっしは感じますが、主に自分の仕事を通して政権の顔ぶれとそこから予想される施策を考えると、選良が知恵を絞ってつくりあげた巧緻な不況が十年余も続いていく姿が見えるようです。

カビの生えた国権主義的考えに囚われて、ついに国民主義世界というものにとどめをさしかねない外交政策を打ち出す合衆国の姿が見えるようである。

画面に映っているのは確かに魅力のあるアフリカ人の指導者だが、その唇から出てくる政策は、失望を誘うばかりの「秀才政治家」の浅知恵にしか聞こえない。

デュカキス以来、アイビーリーグ出身者たちの「甘い夢」がついに実現した形ですが、

わっしは、あのロクデナシのシューサイたちにおもちゃにされる世界に、あんまり良い未来があるように思えません。

フクザツ。

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