Daily Archives: February 15, 2009

手に手をとって

ミルピタス http://d.hatena.ne.jp/gameover1001/20090127/1232997258 の午後、昼食時間には郵便局にながあーい列が出来ます。 モニとわっしはフランスに荷物の箱を送り出すために並んでおった。 4つあるカウンタのうち2つが開いていて、前のひとの用事が終わるたびに 「次のひと」、「はい、次のひと」と呼んでゆく。 合衆国の郵便局は能率が良いので長い列といっても、結構はやく進んでゆきます。 ところが後ろのドアが急に大きく開くと若い女のひとが列のひとをおしのけてツカツカツカと窓口に歩いてゆく。列に重そうな段ボール箱をもって立っていたデカイおっちゃんがびっくりしてます。その窓口ではまだ用事がすんでいない女のひともいたが、おかまいなしに受付のひとに早口で話し始める。 皆が、事態に気がついてびっくりしてこの若い女のひとを見ている。 24歳くらい。地味な服を着た、多分、フィリピンのひとです。 「わたし、仕事が無くなった」と言っておる。 「さっき会社のボスに呼ばれて行ったら、もう明日から来なくて良いと言われた」 よく見ると、顔が真っ青です。 「わたし、もう、どうしたらいいかわからない。子供がふたりいるのよ。貯金だってないし、ジョンも先週クビになったばかりだし」 列に並んでいた皆が、やっとほんとうは何が起こったのか理解できた。 郵便局の女の人は、この解雇された女のひとの友人なのでしょう。 解雇されたショックで、そのまままっすぐクルマを走らせてやってきたのに違いありません。 自分の箱を送ろうとして中断されたアフリカンアメリカンの中年の女の人が、「なんとかなるわよ。明日から、さっそく会社をまわらなくちゃね」と慰めています。 皆が女の人の気が鎮まるまでじっと待っておる。 シリコンバレーではレッドウッドでも同じような光景を見かけた。 ミルピタスのレストランで隣のテーブルのひとが、「実は解雇された」と話しているのを聞いたりもした。 モニとわっしは昨日法廷弁護士の友達夫婦と遊びに出かけましたが、このひとが統括するいくつものシャーにまたがる拠点も6個から4個に減らされるそうで公的機関も民間と変わらないようです。 弁護士でもクビはクビである。 別の「職業政治家」の、気取ったおっちゃんは、「これからは貧しいひとたちもいままでのようなロールスロイスサービスは受けられない。フォードモンデオサービスで我慢してもらわねば」とわっしに言っておったが、その「貧しいひとたち」が聞いたら、いったいいつおれは「ロールスロイスサービス」を受けたのだ、と言って怒るに違いない。 いままでだってモンデオが聞いたら怒るようなサービスだったのに、これからは、死なないですんでいることに感謝しなければならないのではないか。 一日一日とたってゆくたびに職が何百何千と失われ、昨日まで店に食料品を運び込んでいたひとや、その食料を卸す会社で会計をやっていたひと、サラリーマン、運転手、ありとあらゆる階層のひとが家を失い、ゆくところがなくなって道路の脇に立ち、たとえば昨日までの経理社員が 「わたしに仕事をくださいませんか。得意なのは会計ですがなんでもやります」と書いた段ボールをもつことになる。 ネクタイを締めてスーツ姿で冷たい雨に打たれている人もいれば、ジーンズにコートのひともいる。街中のありとあらゆるところに家がない人や職を失ったひとの姿が見えるようになった。 むかしなら移民が真っ先にクビになるところですが、いまの企業は生産性の高さを保持することにしか関心がないので、職を失うのはもともと技能の高さを買われて雇用された移民の方ではなくて、漠然と就職した人間も多いもとからの連合王国人である。 たとえていうと現代の厳しい競争社会では日本に生まれたからといって経済世界では(伝統的な)日本人であることが保証されない世界になりつつあるのが理解できていないひとがいるのです。 職を失ったこういう連合王国人は、「イギリスの仕事はイギリス人に」と大きな声で叫び出します。移民してきたものには、文句を言わないが、外国からひとつのプロジェクトのために外国人労働者をつれてくるのを許していいのか、という議論である。 企業の方は「イギリスの仕事はイギリス人に」「フランスの仕事はフランス人に」なんてあまいことを言っていると自分がつぶれてしまうので民族国籍に関係なく優秀な人間を雇おうとする。 日本は製造業が強い国なので、まだそこまでいってませんが、いづれは日本国のパスポートが実質的に日本人であることを保証してはくれない時代がやはり来るでしょう。 日本の企業や政府もやがて「国民の選別」を始めるに違いない。 「きみは役に立たない」「おまえはこの世界に必要でない」と宣告された人の群れが、職業を紹介する機関や救済機関の前に並ぶときがまた来てしまった。 冷たい雨にずぶぬれになりながら、もう雨に滲んで字も読みにくくなった段ボールを掲げて立っている人の横を、若い背広のにーちゃんが早足で歩いてゆく、行き過ぎてしまってから、ふと足をとめて振り返ると、 「あきらめるなよ!」と怒ったように言う。 そのあとに小さい声で「お願いだから」と付け加えてます。 連合王国人は、そういうことを口にするのが苦手であって、言いたくても必死に我慢するが、にーちゃんは、とうとう我慢が出来なくなったのに違いない。 ひとりで放っておいてもらうのが最も好きな連合王国人たちが手に手をとって歩くときが、また来ました。ばらばらでは到底乗りきれん。 … Continue reading

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