Daily Archives: October 4, 2009

銀座、真珠

長野県に長居をしてしまった。 わっしは怠け者の王様なので、もっとこの森の中でさぼっていたいが、月曜日にフランスとロシアからショーバイのひとが訪ねてくるので、東京に戻らないわけにはいかむ。 自分の郎党のものならば成田からぷるぷるぷるとおちゃらけたヘリコプターで来るなりNEXと新幹線でびゅっとやってくるなりしてもらえばよいが今回は両方とも郎党どころか初対面のひとなので、ぷるぷるしてきてね、というわけにはゆかないのです。 難儀である。 モニは広尾の家にまっすぐ戻ろうというが、わっしはめんどくせーので日比谷のホテルに泊まっちまうべ、と思ってます。 だって銀座で会うんだもん。 広尾から銀座まででかけるのは、億劫な感じがする。 東京は変化が極端に少ない街です。ロンドンやニューヨークに較べると、まるで街が静止しているようだ。わっしはもともとがチョー保守体質なので、あんまり街が変化しないという事実がたいへん好ましい。建物やなんかの街の造作に限らず、2年くらい経ってから前にやってきたときに、良いな、と思ったレストランに行ってみると、また同じウエイターのおっちゃんが、「やあー、しばらくだねえー」とゆってテーブルにやってきてくれる。たいへんな居心地のよさです。 歩いている人に表情がないのがやや不気味だが、もう慣れた。 「知っている人たち」がいるところだけ伝って歩けばいいので、そういうところでは日本人ほど親切なひとたちも珍しい。知らない人ばかりのたとえば交差点やリフトのなかみたいなところでは「他人のことなんてキョーミねーや、あんたのことなんて知るもんけ。わしもあんたの邪魔はせんからあんたもわしの邪魔はせんでくれ」モードにはいれば、こんなに居心地がよい国はない。地下鉄や山手線も同じだと思うが、ひさしく乗ってないからわからん。 子供の時は街のあちこちに据え付けられた安もんのスピーカーから流れてくるクソ音楽にひどく悩まされたが、気がついてみると、それも以前ほどひどくなくなったようだ。 ニューヨークやシンガポールに較べると道を歩いている人ものんびりしていて礼儀正しい。肩がぶつかった(とゆっても、向こうは肩でも、わっしのほうからゆうと二の腕だが..痣になるのよね)おっちゃんが、ぶすっとした顔のまま通り過ぎていったりして、「こりゃクソじじい、『どうも』くらいはゆわんか。そーゆー態度を当然だとおもっておるとケツから手え突っ込んで奥歯がたがたゆわしたるど」と考えなくはないが、ジジイの尻は臭そうなので、まだ実行してみたことはありません。 東京の街としての欠点は「街としての夜の生活が皆無」なことであると思う。 大使館のうんちゃらかんちゃらみたいなパーティはあるが、ふつーの遊び場はなあんにもない。人間の夜というのは、ボールルームや赤いカーペットが敷いてある広間へ通じる通路やおおげさな帽子をかぶった小狡そうな目をしたドアを開けてくれるおっちゃんや高い天井に木霊する低い話し声がないと成り立たないものだと思うが、東京にはそれがない。 川を見下ろせる料亭で年長の穏やかな友人たちとミシマやタニザキの話をするのも楽しいが、それだけではなんだか物足りないのです。 甘いものを売っている店も少ない。 シーズキャンディを見つけたときには、まるで砂漠でオアシスを発見したラクダのように喜んでしまった。ほぼ「あまけりゃ文句ねっす」な、わっしですら甘いものやがなくて気が狂いそうになるのだから、わっしの軽く千倍はチョコレートにうるさいモニが前回の滞在では東京を刑務所みたいなところだと思いなしていたのは思えば当然である。 (今回は広尾にも山の家にも象さんが百年間食べてもあまるくらいチョコレートが貯蔵してあります) いやいや、いかむいかむ。ポジティブ・シンキング(ニコニコしながら沈没することではありません。物事を良い方向に考えることね)でゆかねば。 きょうは安息日だしな。 街が綺麗である。人口を考えるとほぼ非現実的なくらいゴミが落ちておらん。 もっと特筆大書しなければならんのはシャッターがしまっている時間帯にいちばんのけぞるのは、グラフィテイがないこってす。素晴らしい。 落書きがない大都会なんて東京くらいのものではなかろうか。 シンガポールも落書きはないが、あそこは落書きなんてするとむち打ちの刑(マジどす)なのでスプレー缶で「恐怖大魔王参上」とかきたがるような根性のないガキにはこわくてやれないだけです。 世評とは異なって欧州の料理、特にイタリア料理は「なっとらん」と思う。フランス料理はふたりで6万円くらい(ワイン含む)も出せばおいしいものが食べられるが、モニは「日本料理みたいなフランス料理だな」という。悪い意味ではないのですが、でも、どういうか、「野生味」に欠けるようだ。 前回はモニとふたりで英語や欧州語だけが聞こえる会員制のクラブみたいなところばかり行っていたが、この頃は有楽町のガード下の焼き鳥屋や「小諸そば」みたいなところに行って遊べるようになった。 わっしはむかしから、そういう場所が好きだったが、この頃は、驚くべし、モニも喜んでそういうところへ随いてくるようになったのです。どうも、前回の滞在の終わりに有楽町の焼き鳥屋へ行ったのがよかったようだ。 洋服や靴の買い物は、モニもわしもサイズが絶対にあわんので全然いきません。 体の形も違うが、それ以前に大きさが根本的に異なるよーだ。 だから「ふたりで買い物」というと、文房具みたいなものが中心です。 東京はデザインの良い文房具の宝庫なので、イトーヤのようなところに行くといつまで経ってもあきない。旅行や留学ででかけて気がついたひとも多いでしょうが、パリやバルセロナのようなところで人気のある大手の「デザイン文房具屋」に行くと棚にあるものの半分は日本製です。 そーゆー、いわば「デザイン文具の本家」なのだから東京の文房具屋がたのしくないわけはないのす。 他には和包丁のような台所のものを買う。階段箪笥(モニとわっしはこれを蒐集しておる)を見に行く。洋服が買えなくても、出かけて楽しいところはたくさんあります。 合羽橋みたいなところもおもろいのい。 日本の店員さんは気持ちがよいひとが多いのはもちろんだが、正直でプロ意識が徹底していて気持ちがよい。 前回の滞在でモニとふたり、銀座に行ったときのことです。 昼食にシャンペンを飲み過ぎて浮かれたわっしは、モニの手をひっぱって銀座の真珠屋さんMに行った。その日は「成金ごっこ」をして遊んでいたので、その続きで下品なくらいデッカイ真珠をモニに買ってあげよう、と思いついたからです。 だんだん上に向かってあがっていってもガラスケースのなかにパッとした真珠がないので、困っていると、小柄なおっちゃんがやってきて、モニの胸元に揺れている真珠を見ながら、「当店には、奥様にお売りできる真珠はおいてない、とおもいますよ」という。 へっ? 失礼なんちゃうか、と思ったらそうではないのでした。 … Continue reading

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