カンパニー

週末、みなで馬に乗りに行った「南部農場」でBに会った。

Bはタウロンガに住んでいる。わっしの家の「一家の友達」です。

ニュージーランドではウエリントンにほんとうの家があるが、最近はタウロンガのほうが気に入っているようだ。

かーちゃんや妹と馬に乗りに行く時には、自分のプロペラ鈍足ヒコーキをぷるぷるぷるぶーん、と飛ばして北からやってくる。

Bは、愉快なひとです。

短く刈った髪が女のわりに隆々とした筋肉がついている身体によく合っている。

モニやわしの一家が着いたときにはもうコテージの部屋の仕度まで調えていて、わしらを出迎えてくれました。

どっちが客だか全然わからん(^^)

くるまよせにやってくると、「ハーイ!」という。

肩に手をまわして「日本はどうだった、ガメ?」と訊きます。

Bは自分でも日本の「サムライ文化」と「鍼灸」が好きだが、ひとり息子が日本の大ファンなのである。アニメのキャラクタや新幹線、シャープの両方から開くドア、みーんな好きで、

なにか日本のニュースがあると、

「日本人って、すげー頭がえーんでない?」とふざけたような

口調でいうのが癖である。

馬の遠乗りが終わってから、わしらは、母屋でラムやなんかのご馳走でワインを飲んだ。

Bが日本の話しを聞きたくてしようがないので、モニとわっしとでかわるがわる日本の印象を話しました。

モニは日本の「暗い色の森」や「美しい田んぼ」、「雪に蔽われた森の美しさ」が印象に残ったようだ。

相倉や菅原の合掌造り、富山の散歩道、長野の森のなかをつづく道、そーゆーものが素晴らしかったことを眼を輝かせて話しておった。

わっしのほうは、どーしてそーなったのかわからんが、ブログを通して出会った portulacaさんやantonianさん、kochasaengさん、じゅん爺やそーゆーいろいろなひとたちの話をした。

いつもは日本のことが話題に上るのはかーちゃんシスターと義理叔父がいるときだけなので、ちょっと新鮮な感じがしました。

Bも、かーちゃんやモニや妹と同じで「他の国のことは、よーわからん」というスタンスの点では同じだが、興味があるのでいろいろ質問します。

曾野綾子の話になったときには、みなぶっくらこいてしまいましたが、でもまあ、そーうーこともあるか、という感じでした。

ニュージーランドでは(わしはあたりまえだと思うが)売春婦が強姦被害にあっても、誰も売春婦の側に落ち度があったのではないか、というひとはいない。

ニュージーランドでは売春は非合法だが刑罰は撤廃されておる。

刑罰があると、売春婦がたとえばマフィアに強姦被害や暴行にあったときに泣き寝入りせざるを得ないからです。

売春婦が商売に使っていた部屋で強姦されたケースがあって、そのときに女性人権擁護団体の女の議員たちが売春の「非犯罪化」を法案として成立させた。

わっしは、それを後で知って、とてもよいことだと思った。

少しニュージーランドパスポートを誇らしく思いました。

クライストチャーチでもマンチェスター通りのようなところでは売春婦たちが屯しているが、その脇を警官たちが歩いてゆきます。

売春を取り締まりに来たのではない。売春婦を襲ったり食い物にする人間を警戒しているのです。

わっしは、こーゆーことの背景には、ニュージーランド人特有の強い「仲間意識」があると思う。

まずはじめにはもともとが連合王国人の見えない伝統である「男と女は仲間同士じゃん」という考えがある。違っているが仲間というか友人であって、互いに助けあわねばならん、と言う気持ちが強くある。大陸欧州人やアメリカ人の「レディファースト」などとは根本から違う思想があるのです。

ロシア人たちなどはそれを「イギリス人の男が弱い証拠」だとゆって笑ったりしますが、ま、ほんとーにそーなのかもしれないからしょうがない。

とにかく、わしらは、なんでもパートナーに相談する。

そこが連合王国人やニュージーランド人のバカっぽいところでしょうが、たとえば自分の秘書のねーちゃんを押し倒しちって秘書に「奥さんと別れないと仕事で支障があらうようにしてやる」とゆわれたとすると、まっさきにこの男が相談にゆくのは奥さんであると思われる。

奥さんだけが(結局離婚にしたいと思ったとしても)、たいていの場合、最も助けてくれる「仲間」としてそばにいてくれるであろうからです。

そーゆー文化的な下地があるところにもってきてニュージーランドはちっこい国なので、強烈なばかりの「仲間意識」が完成した。

売春婦も、やはり同じニュージーランド人であって、同族である、という意識がある。

わしにも(ブログ記事にも書いたが)売春を業とする友達がありますが、ふだん昼飯を一緒に食べていたりしても、わしがこの友人の客である、とか、一緒に商売をしているのではないか、とか考える友人はおらん。

そーゆー社会なので「売春」という商売を憎むひとでさえもなりわいとして寝室にいるときには性的に無防備であるに決まっている売春婦を強姦する人間に対しては、その相手の弱みにつけこむ卑劣さを売春を嫌うのとは別の次元で何千倍も激しく憎む。

それはあたりまえのことであって、別にニュージーランドや連合王国が特殊なのではなくて、わっしはどちらかといえば日本の社会のほうが特殊なのだと感じます。

それからわしはBに「自殺率の高さ」の話もした。

Bは子供のように息を呑んで聞いていたが、そのうち眼に涙を浮かべて、「なんて、ひどい」とゆったきり、涙をぬぐってはため息をついておった。

ところで、わっしのほうは(要するにそれでこのBと会ったときの話しを書いているもののようだが)Bに向かって日本の話しをしているあいだに、強姦被害に対する無惨な反応と自殺の動機との向こうには、同じものが背景としてあるのだという奇妙な感じをもった。

「異なること」理由にいじめにいじめぬいて同級生を死におもむかせる高校生たちや、失敗した経営者を自殺に追いつめてゆく力と、強姦の被害者を被害にあったことを契機として追いつめてゆく社会のありかたとには、共通したところがある。

単純すぎる、とゆって笑われてしまうだろうが、わっしは日本のひとの社会には「仲間意識」があんまりないのではないか、と疑いました。

わっしはむかし日本に長く住んでいる外国人たちの経験談を集めたガリ版刷り、みたいな本をもらったことがあったが、臨月のお腹を抱えて体調を急にくずして駅の階段で倒れたのに誰にも助けてもらえなかったことを怖がってニューヨークに帰ってしまった主婦(このひとは旦那さんが日本人だったが離婚することになってしまった)。

道路に倒れたまま動けなくなって十分ほども放置されていたフランス人の女のひと。

(このひとは、最後にやっと日本人の若い男のひとが自分のほうに向かってあるいてくるので「ああ、やっと助かった」と思ったら、この日本人は彼女の身体を「またいで」歩き去ったそうである)。

あるいはリンゼイ・アン・ホーカーの事件にしても、わっしが見た限りでは「実は警察が隠しているビデオにはリンゼイさんがリフトのなかで市橋容疑者とキスをしている写真があってリンゼイ・アン・ホーカーの側に落ち度がある」と仄めかした週刊誌や、「ホーカーがもっとやんわり(性交を)断っていれば事件は起こらなかった」と書いた渡辺淳一という日本では圧倒的に支持されている作家がいたりするのであって、どーゆえばよいか、みなが、「他人もひょっとしたら自分と同じ人間なのではないか」とはちらとも考えないもののよーです。

そうやって考えてゆくと、日本ではよく見られるレストランや店での客の「チョーエラソー」な態度や、敬語によって分断された社会のありかたにも、すべて同じ背景がありそうです。

日本滞在が終わったのを契機に、そのことをちょっとづつ考えてみたい、と思った。

英語では「仲間」のことを「カンパニー」という。

風の音が聞こえる夜、ひとりで部屋にいるひとは、こういう寂しい夜にこそ「カンパニー」がいるのい、と思うであろう。

そう思っているときに、ビールをぶらさげて、「おーい、元気?」とゆって友達がやってくる。

ひさしぶりだのい。

日本はどうだった?

まあ、一杯やんべ。

Bは、次の日の朝、またヒコーキを操縦して帰っていったが、お互いをハグする腕に心なしか力がこもってしまうようでした。

のみならず、ホッペへのキスのおまけまでついた。

モニとわっしは、Bの飛行機が見えなくなるまでずっと手をふってました。

日本のひとたちの孤独が、わしらに影響したのかもしれません。

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