Daily Archives: July 4, 2010

東アジアブラザース

「日本人はさ、ほら、自転車が好きじゃない」 と、義理叔父が憧れていた赤毛の女の子が言うのであった。 1980年代のワシントンD.C. 義理叔父にとっては初めての合衆国であって、週末のある日、義理叔父はバーベキューに招かれたのであった。 「うん。好きっていうか、割と多い」 公共機関が発達していて網の目のように地下鉄があるからなんだよ、と言おうとすると、隣から赤毛の女の子のお母さんが、割り込んできた 「なんだってあなたがた日本人は毎朝大通りいっぱいに広がって自転車で通勤するの?トヨタもホンダも輸出するばっかりじゃなくて自分の国で乗らなくては! それに、みんなが制服を着ているってのもファッションとして退屈だとわたしは思います」 いえ、制服は高校生までだし、トヨタもホンダも結構はしってますよ、と話しているうちに、あこがれの赤毛のねーちゃんの母親が話しているのは北京のことだと気が付いて愕然としたそうである。 それ、日本ちゃうやん。チューゴクやん。 と言うと、赤毛かーちゃんは、ちょっとクビをかしげて考えてから、だって東京って中国でしょう?と不思議そうに訊くのだった。 言われて、義理叔父は一瞬頭のなかが、くらっ、としたそうです。 若いときから高血圧だったから、危なかったんちゃうか。 カンタベリー特有の「宇宙線なのかこれは」、の無茶苦茶強い陽射しを窓の外に眺めながら、わしは年長の友人、校長先生のJJとパブでCD、すなわち「カンタベリー・ドラフト」をちびちびとすすりながら話しておった。 日本ではビールは、「ごっくんごっくん、ぷはあー」 な飲み物だが、わしの祖国および裏祖国においては、ちびちびビンボたらしくすするものです。 タップから注ぐときも泡を立てないのね。泡を立てて出すと、ニュージーランド人は、一瞬顔をしかめてから、「金かやせ。泡のぶん」 と言うであろう。 パイントグラスにすりきりいっぱい入ったビールをそおおおおおーと口に持っていって、おっとっと、と思いながら初めのひとくちを飲むのがビールの醍醐味なので、泡があってはビールを飲むという行為の最良の部分が失われるとゆわれている。 ちっこい円形のテーブルをはさんで立ったJJとわしは、クライストチャーチのまばゆいほど美々しい夕方を見やりながら、よもやま話に興じておる。 「最近はまた日本人が多いのお」とJJ。 「あれ、中国のひとだと思うよ」 あっ、そうかね。おれはまた日本人だとばっかり思っていた。 「経済が悪いというから、それで逃げてきやがるんだと思ってたよ。でもジャポンヘッドにはたくさんいるようだが」 ジャポンヘッド、というのはエイボンヘッドという空港に近い住宅地でむかしから日本人が多いという事実を嘲って「ジャポンヘッド」という。 もともとは嘲りだがJJの世代のひと(50代)は、あんまり悪意もなくふつーに「ジャポンヘッド」とゆったりします。 「ジャポンヘッドってのは、蔑称だから教育者のあんたが使ってはならんだろう。それにエイボンヘッドのアジア人たちは、いまでは中国の人が多いと思うが」 ふむ、とJJはまだ疑わしそうにしてます。 気を取り直したように、そう言えば、ガメの叔母さんは日本人と結婚したんだったな、という。 なんだかそれで全部わしの言うことが説明がつく、とでも言いたげである。 話題を変えようとしてでしょう。 「日本人はアジア人のなかでは、いちばんマトモなほうだからな」 と言った。 誤解してはいかむ。 JJは温厚で公平な人間であって、みんなが大好きなおっさんです。 仕立ての良い三つ揃いを堂々たる体格で着こなして、鼻ひげを生やかしてえばっておるが、同情心の厚い、良い奴である。 年齢はわしより25歳くらい上だが、だからJJとわしはよくパブで一緒に酒を飲んで遊ぶ。 東アジアは遠い。 西洋から見ると、むかしから遠い遠い国々です。 ええええー、でも日本って東隣はもう合衆国じゃん、地図みなよおお、ときみは言うかもしれん。でも「西洋」という「意識」は、もともとの中心が大陸欧州にあるので、そこからの距離でしか物事を認識できないのね。 だからむかしは日本でゲームをデザインしていていまはブライトンで暮らしているjosicoは、よく聴いてみると連合王国人の使う「アジア」という言葉には中国や日本が含まれていないことに気づくであろう。 … Continue reading

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