リアルキーウィー


1億三千万人の日本は人口が減少しだしてたいへんだそうだが、人口が420万人のニュージーランド人は人口が増えすぎたといってぶーたれておる。
300万人ぐらいがちょうどええやんか。
こんなに人口が増えると水道代が有料になるのではないか。
学校建設の金は誰が払うねん。
病院におれの税金つかうんじゃねーぞ。
まことに喧しい。

日本語で書いているのだから日本を基準にしていうとニュージーランドの国土の面積は日本の7割くらい。多分、日本列島から九州を沈没させたくらいの大きさと思う。
たしかめてないから九州もっと大きいかもしれないけど。
これも確認はしてないから曖昧計算だが平野は多分日本よりずっと多いでしょう。
広いからな、たとえば、カンタベリー平野。
サミットヒルに立ってクライストチャーチを眺めると、広大な平野にチョポンとクライストチャーチの巨大人口当国第二位30万人を誇る市街があります。

オークランドのほうは市街化が可能な土地が世界1大きな都市として有名である。
人口は130万人だが、関東平野にあたる土地の半分も使ってなくてすかすか。
ときどき頑張って40階建ての高層アパートメントをぶち建てるといきなり管理会社が倒産したりするので、CBDとゆえどなかなか埋まりません。
街のどまんなかに広大な空き地があったりする。

スイスのビジネススクールが毎年発表している「生活の質が高い街ベスト50」では、今年(2010)は3位だった。といっても3位の街はもうひとつあって3位の片割れはバンクーバー。
このバンクーバーという街はむかしはオークランドと物理的にそっくりなので有名な街で、わしはバンクーバーにいるのに酔っ払った頭でオークランドにいると思い込んで自分の泊まっている坂の上のホテルが忽然と消えたのでパニクった人を知っている。
そーゆーSF的な体験が出来るくらいそっくりだったと言います。
1位はストックホルムだかなんだか北欧の街で2位はチューリヒ。

ニュージーランドには「あの国旗のユニオンジャックが気に入らん」という根強い勢力があって隙さえあれば国旗のデザインを変えようという運動を起こす。
去年もやったのね。
いろいろなデザインのものが候補になったが、そのなかでなかなか人気があって決選投票に残ったものに「ゴム草履」が旗のまんなかにでっかく描いてある、というのがありました。
わしもこれに投票した。
だって、これいいやん。
たとえ将来どっかの国と大険悪になって戦争になりかけてもビーチサンダルの国旗とかでは気合いがはいらなくてまじめに突撃できないであろう。
だから平和になって、よい、という常と変わらぬわしの深遠な叡知の賜物です。
国民の慎重なる検討の結果、まだいまの国旗でいいや、っちゅうことになってしまって残念だったが。

わしはオークランドの大宏壮な自分の家にいるときは、街にでかけるのも素足です。
どこでもぺたぺた素足で行く。
背中に陶潜のかっちょいい詩句「冨貴非吾願 帝郷不可期」と書いたTシャツを着て下はやわらかそーな生地のショーツ、なあーんとなく面白そうな顔をして素足でぺたぺたぺたぺたすたぺたすたと歩いている肉体的に巨大な若い衆をきみはラミュエラロードに目撃するであろう。
それ、わしです。
たいていの場合、横には気が遠くなるように綺麗な人が歩いておるであろう。
モニという人です。
すげー美人なんだぞ。
これをいうとモニさんはたいへん怒るが、小さな町で人があつまってきて拝まれたことまであるからな。

なかには「素足お断り」という辛気くさいレストランもあるのでそういうところにでかけるときにはやむをえずクルマに装備してあるフリップフロップ(ゴム草履のことね)をはいてゆく。
わしの夏の盛装ですの。
舗道に出ているテーブルで、そーゆー格好で前菜から始まって最後のデザートまで4時間ほどをかけて静々と食べるのがオークランド式の正餐である。
念のためにゆっておくと舗道にテーブルも出さんような因業な高級レストランでこれはやれぬ。
まず注文をなかなか取りに来ないと思うね。
日本人式に「ちょっと、すみませええええーん」とか半分裏返ったコッパズカシイ声でウエイタを呼び止めて無理矢理給仕してもらっても、もしかすると彼はきみの頭の上に前菜が盛りつけしてある皿をおいていくかもしれません。
ものには常識というものがある。
そういうレストランにテニス帽にベスト、見るも恥ずかしい格子縞シャツの登山用みたいなでかいポケットがついたパンツとかで行ってはいけません。
ひどいやつになると、ご丁寧に、うーんと、ああいうのなんて言うんだ、ウエストバッグかな、を腰に巻いているバカまでいる。
それで給仕してもらおうというのが根本から魂胆が間違っておる。
おおやだ。書いているだけで恥ずかしい。

で、わしはバヨネーズソースのスコッチフィレステーキやらマジメにつくってあるマッシドポテトやらなんやらですっかりお腹いっぱいになって、ご機嫌も麗しくなって、モニの脇の椅子にお行儀悪く素足をのっけて乾いたさらさらした風が通ってゆく爽快な夏の夜を愉しんでおる。
馴染みのレストランなら仕事がはねたウエイタのにーちゃんやねーちゃんがテーブルに加わることもあります。
散歩の通りがかりにモニとわしを発見して近所のおっちゃんやおばちゃんが座ることもある。

「まだ右折が優先だって」
「ウソだよ。だって2002年に左折優先にしたやん」
「あれまた元に戻したんだよ」
とゆーよーな話をしているのだな、こーゆーとき。
ニュージーランド人は法律を変えるのがほとんど趣味なので、毎年いろいろな法律をころころ変える。
いつのまにか移民に英語のテストをかますことにしているし、所得税率が二本立てから三本立てになっている。
ついでにいうと今年はもうちょっとで固定資産税がかかることになりそうだったが、この法律をつくると自分の家にも税金がかかることを発見した政治家たちによって急遽否決されたりした。
道路で行き会った2台のくるまのうち右折が優先か左折が優先かなどは典型で、もともとは右折が優先なんです。日本と逆ね。
ニュージーランドの交通法規はすげー簡単でなんでもかんでも「右側にあるものが優先」
「右が優先」なので、それだけおぼえておけばラウンドアバウトでもなんでも通行できるようになっている。

ところが移民の諸君がわからねーんだよ、これ。
右側通行の右折、左側通行の左折が優先だと思ってしまう。
他の国がみなそうだからな。

で、まあ交通量が増えてみると左折を優先したほうがいいだろう、というので移民の衆に迎合して左折優先にしたら右折優先だと信じている旧住民とやたら交差点で衝突するようになった。
事故が一挙に増えてパニクった警察は急遽右折優先に戻すと今度は左折優先のまま運転しているやつがいて…という訳で混乱を極めてます。
で、どうなったかというと、わしもいまどっちが優先なのかわかりひん。
人に聞いてみても「左折になったんだろ」「右折に決まってるやんか」
ばらばらであって、なかには左折優先に法律が変わったことなんかないはずだ、というやつもいる。
訳わからしまへん。
判らんから右折優先で曲がっておる。
間違ってたらそのうちお巡りさんがなんとかゆいにくるであろう。

ええええー、そんなバカな、ときみはいうかもしれん。
でもね、ニュージーランドという国はテキトーな国なんです。
わしのように几帳面なニュージーランド人は例外中の例外だとゆわれている。
だから殆ど思いつきでいろいろやってみるのね。
むかし郵政省が金くってしょうがなかったときには文字通り一夜にしてこれを民営化した。
国会審議もなにもしません。
ボルジャーというどう見ても知性に欠ける首相のおっさんが「やめた」とゆっていきなりやめた。
金ないもん。面倒みきれん。
5000人だかいた郵政役人を一挙にクビにしよった。
お陰で郵便は大混乱、になるかと思っていたが、全然混乱しませんでした。
郵便物は次の日もふつーに届いた。
むかしは殺風景だった郵便局のなかが文房具やなんかの商品で溢れかえるようになって郵便局なんだか店屋さんなんだか判らなくなっただけです。
人口が500、とかいう町の住民が郵便局に行くのにクルマでいかなければならなくなってぶーたれたようだが、それもすぐ慣れたようだ。

年金もいまの日本とそっくりな年金制度があったが、「このまま行くと20年後には払えなくなる」っちゅうんで積み立てをやめました。
いまは税金から年金を払う。
額などは月に800ドル(5万円)で微々たるものだが、一戸建て食事付きのレストホーム(日本語では老人ホーム、かいの。すげー露骨な名前だな、日本語のほうは)がタダなので、別にこれで食えるからいーだろう、ということになっておる。
レストホーム、全部同じデザインの家だったりして、嫌だけどな。
まるで合衆国の建て売りのように下品である。
こんな下品な家に住めるかバカヤロウ積み立てた年金をかやせと言ってじーさんやばーさんが暴れたが、ニュージーランドのじーさんやばーさんは「アジア人の移民をみんな追い返しちまえ」とかゆったりして普段の素行が悪いので、瞬時に粛清されました。

ニュージーランド航空が経営困難に陥ったときもニュージーランドにとっては航空は命綱でもあり伝統でもあるので「税金で助けてくれ」と泣きついたが、国営化が党是の労働党に「あまったれるんじゃねーよ、ぼけ」とゆわれた。
政府が周旋してシンガポール航空に売り飛ばしました。
「それはいくらなんでも拙いだろう」というひともいたが、政府の答えは「また国がもうかったら買い戻すから、これでいーのだ」であった。
実際、数年後にシンガポール航空から買い戻した。
どうも売り飛ばしたときに、そういう約束になっていたもののようである。

小国にはみんなで電話ポールとかを使って法律や制度をころころ変える愉しみの他に旅行先の愉しみというものもあります。
たとえば、きみが合衆国に行ったとする。
JFKに着いて前もって予約しておいたリムジンに乗り込みます。
「チェルシーのXX」とゆって乗り込むと、運転手は、なにがなし嬉しそうな顔をして「お客さん、どっから来なすった、イギリス人の言葉だが」という。
わしが、ニュージーランド、というと、意外そうな顔をして、へえ、そんな国があるのか、と呟きながら、いったいどんな所にある国か知らないが、あんたの英語の発音、しびれるねえ、とかゆいます。
だいたい欧州にあると思うようだ。
えーと、たしかオランダの南だよね? という人が結構おおいな。
ばかやろー、あれはカナダの一部だという人もいます。
なんかQで始まる州だぜたしか。

オモロイ。

ニュージーランド人と結婚した他国民の人びとは、あまりにテキトーなので将来が心配になるよーだ。
失業して、来月の家賃が払えなさそうなのに「ノーウォーリィーズ」とかちゆって、カウチに座ってビール飲みながらテレビを観てデハハハハと笑っていたりするからです。
わしのダチはこれで折角結婚したイタリア人の美人嫁さんに追い出された。
赤ん坊が出来たので家事ばかり熱中してやっていて就職活動をしなかったので、愛想をつかされたのね。
この嫁さんは、旦那を追い出した余勢を駆ってコーヒー屋を開いて繁盛してます。
旦那をおっぽりだすまではハニカミ屋さんの人であって、英語があんまりうまくないのを気に病んで他人前にも出ない人であったが、ひとりになって何もしないわけに行かないので大決心を固めて店を始めた。
離婚というものが人間の運を切り開く好例ですね。
きみも旦那が嫌いな場合には、さっさと別れちまうほうがよい。
次はもっと若い方が夜が楽しいとゆわれておる。
(一緒に花火をして遊ぶのに旦那が肉体的に若くて元気なほうがやり甲斐がある、という意味です)

アトランタオリンピックの水泳決勝で、カメラが選手の緊張した顔を追いかけておる。
必死に水面の一点を見つめて集中力を高める選手。
歯をくいしばって緊張に耐えている横顔。
クビをまわして自分をリラックスさせようとしているひと。
各国の選手の緊張を次々に映し出している最後にモロにカメラのほうを向いてひとりだけヘラヘラしているにーちゃんがいる。
なんだか握りしめていた拳をカメラに向かってパッと開くと手のひらには「ハーイ、マム!」と書いてあった。
おまけに目ん玉の絵付き(^^)

緊張して臨むべき神聖な五輪に、のけぞるようなおちゃらけかたですが、このひと、ニュージーランド人なの。
顰蹙を買ったかというと母国では大受けしました。
ガキわしも、大笑いした。
金メダルをとってしまったが、念のために言うと最下位でも大受けは同じだったでしょう。
そーゆー国なんだもん。
どの競技か忘れたが同じアトランタオリンピックでコーチ以下酒場で泥酔して次の日の競技に出られなかったチームもあったからな。
これは流石に金返せとゆわれたが。

ニュージーランドは思いついたときに興味がもてることを一生懸命やればそれで食える国なんです。
70歳で突然F1レーサーを志しても、誰も笑わないであろう。
英語が出来る人も出来ない人も、褐色の肌の人も黄色い肌の人もブルカを被っている人もRの音がデカイ人もいろいろな人がいっぱいいて、それぞれ出来る事を探して自分の居場所を見つけて暮らしている。
考えてみればポジティブな考え方をする人間でなければよりよい生活を求めてこんな所までやってきたりするわけないので、どのひともやたら希望に溢れているのでもあります。
顰め面をすることにいいことなんか何にもないと皆がおもっておる。
威張りくさる人間はいちばんの鼻つまみ者です。
やってみてダメなら、また考えればええやんか、と口を揃えて言う。
人間の社会は個人の生活を楽にするためだけにあることをみなが理解していて、そもそもその「みな」は、そういう社会をつくるために、ここまで遙々やってきた。
小さい新しい国というのは、まっさらなカンバスのようなものなので、みなが一緒に描いている絵のように毎日どんどん変わってゆきます。
年をとってからかつての「新」移民のおっちゃんは自分達が描いたニュージーランドという絵を眺めて、あっ、あそこの隅っこのあれは、おれが描いたんだし、と独りごちるであろう。
横には文化も人種も違うこの国で知り合った奥さんが立っていて、そっと手をおっさんの肩にまわしているかもしれぬ。

マジメ人間には悪夢のような国だというが、ニュージーランド、ええだよ、のんびりで。
人生に肩が凝りそうな努力なんか要らないのが誰にでも判る国です。
テキトーでいいのさ。

きみも来ればいいのに。

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6 Responses to リアルキーウィー

  1. Nym Phaea says:

    とっても行きたくなりました。以前からお山の方にはトレッキングとかで行ってみたかったのですが。ガメさんのような心優しいヒトを育んだその土地を見てみたいと思います。それにしてもこのブログもうすぐ読めなくなると思うととても残念です。もっと早く出会いたかったです。英語のブログのアドレス残していって下さいね。

    • Nym Phaea 殿、

      >以前からお山の方にはトレッキングとかで行ってみたかった

      トランピングとゆって何日も山を歩くのが国民的習慣なんだす。いまはガイド付きで荷物を積んだクルマが行き先ざきで待っていてくれる楽勝なのもあります。

      >それにしてもこのブログもうすぐ読めなくなると思うととても残念です。

      やめると日本語忘れるの確実なのでケチなのでやめられひん。

      >英語のブログのアドレス残していって下さいね。

      英語ブログはヘンなひとの集まりなのでおすすめできません。

      • Nym Phaea says:

        過去のブログ読み終えました。
        たくさん共感しました。
        たくさん勉強になりました。
        笑ったり泣いたり考えさせられたり忙しい時間でした。
        日本を去られてからも
        私には持ち得ない視座から見える世界、そして日本のことを
        時々語っていただけたらありがたいです。

      • Nym Phaea さん、

        >過去のブログ読み終えました。

        書いた本人も達成したことがない偉業を成し遂げたのはたしかNymさんで5人目、と思う。

        だいさんきゅ。

  2. nenagara says:

    >やってみてダメなら、また考えればええやんか、と口を揃えて言う。
    「まぁええやん」とか「しゃーない」とか「よういわんわ」とか「かまへんかまへん」とかが似合いそう。大阪の人は特に肌が合うのではないでしょうか。

    >ニュージーランド、ええだよ、のんびりで。
    上の写真の雲や、前に載ってた夜明けの海なんかの本物を現地でぼーっと眺めたり、ぶらぶらクライスト・チャーチを歩いたりしている自分をイメージしながら、ストリートビューをかちかちやってるだけで、結構幸せな気分になれます。
    NZってのは、僕が思うところの「ふつーのくらし」を送ることが当たり前の国なんだろうなと思ってみたり。

    ガメサンのブログは本当に好きなんですが、ガメさんの文章やコメントのやりとりを読んでると、会社なんか辞めてぴゃーーーと飛びたくなることが度々ありまして、何と言うかちょっと困ってしまうのです。

    • nenagara殿、

      >大阪の人は特に肌が合うのではないでしょうか。

      オークランド、大阪と姉妹都市だし(^^)

      >ストリートビューをかちかちやってるだけで、結構幸せな気分になれます。

      わし、あのクルマ見ると飛び出していって手えふることにしてますねん。
      写ってへんやろか。

      >会社なんか辞めてぴゃーーーと飛びたくなることが度々ありまして、何と言うかちょっと困ってしまうのです。

      辞めればええんちゃう? 人生投げるのは楽しいぞおお。吾妻ひでお先生の「失踪日記」を読んで人生について考察されるがよい

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