「中国様」が来た!


北虜南倭、というが中国にとっての長年の「北虜」であったソビエト連邦は1991年に自分で、たのまれもせんのに勝手にこけてしまった。
このときの中国政府要人の欣喜雀躍は通りいっぺんのものでなかったことが、当時、北京に公務で居合わせたいろいろな人々によって記録されている。
「これでやっと中国の時代が来る」とゆって、歓喜天に至る趣であったそーだ。

北虜って、何?というひとびとのためにちょっとだけ書いておくと、中国の北の長い長い国境線から浸透してきては中国人たちを苦しめ、13世紀から14世紀にはちゃっかり支配層になって中国人を支配したりした遊牧民族のことです。
ペダンティックなひとびとは、こう言うと、「ええええー、北虜って明代に限るんだよおおおおお バッカじゃねええええー」と下品に舌を突き出して言うであろうが、学者でもないのに学者バカのバカだけ真似てはいけません。研究者でない「研究者気取り」というのはニセ医者より悪い。

中国人にとっては北には歴史を通じて強圧的で暴力的な魔神のようなものが住んでいたのであって、これが国家の方策そのものを縛り上げていた。
卑小な例を取ると、京都に出て「正しい中世」をやりたかったのにすぐ後ろに戦争と正義が三度の飯より好きでちょっと油断すると飛びかかってくる上杉謙信対策に忙殺された武田信玄みたいものであろーか。
もっとも上杉謙信というひとは「純粋戦争屋」、ゲージツのためのゲージツのごとく、センソーのためのセンソーを愛好していただけであったので、別に戦争は好きではないが、とにかく金寄越せわりゃおれのために働かんかいこのボケ、だった北方遊牧民の方が遙かに大規模で質が悪かったのはいうまでもない。

17世紀には東北からやってきた北虜もどきのひとびとが、武力のみならず知的にも漢人文化の土俵で圧勝して、しかも有名な「辮髪」を強要した。

辮髪強制って、すごいのよ。
だって江戸時代の丁髷日本人を征圧して、「おまえらみんな明日からカーリーヘアにしてこい」っちゅうのと同じだからな。
カーリーヘアでマジメな顔して「武士道」とか、やれるもんならやってみい。
切腹も髷があるから出来るのであって、ライオネル・リッチーみたいな頭してやれるもんとちゃいます。
形骸というものはたいていの場合、精神なんかよりもずっと文化にとっては重大かつ致命的なものである。

書いていると切りがないので中国人の「北虜」イメージはこのへんでやめるが、じゃ、「南倭」はなんわ?

倭、ちゅうのはチビちゅう意味です。縮み男だな。
日本人の事です。
チビがフンドシ一丁で、すごい数でダンビラふりかざして、わあああああー、と海岸から攻めてくるねん。
南無八幡大菩薩とか、八紘一宇とか、お題目はかっこええねんけど、いったん上陸すると集団で略奪するわ荒れ狂うわ強姦するわで言う事とやることが全然違うひとびとであった。
明代にも散々くるしめられたが、1930年代の「南倭」は最悪で、首都に雪崩れ込んできて、中国人とみれば区別無く一列に並べてぶち殺すわ、女と見れば子供から老人までいきりたって強姦するわ、強姦すれば必ず後で「虐殺も強姦もありませんでした」というために間違いなく殺害するわで、とんでもない目に遭った。
国家的トラウマになったが、あたりまえ、というか、近代国家でここまで蹂躙された国は他に見当たらないので、「南倭は北虜より悪質である」というイメージが出来たのもむべなるかな。

中国の歴史を読んでいて、強く感じるのは、「北虜がなくなればなあ北虜がなくなればなあ北虜さえなければなあああ」という終わりのない繰り言のようなタメイキのような基調底音である。
ところがそれがほんとになくなってしまった。
「冷戦の終わり」とは中国にとっては要するに北虜の消滅だったのです。

これで南倭もなくなっちまえば、いえーい、だが、南倭はなくなるどころか万事好調で大秦国のパチモンみたいなアメリカ合衆国の強い後押しでぶいぶいゆわしておる。
二言目には「おれは平和主義なんだからな」とゆーが、相手は両親をへらへら笑いながらぶち殺して叔母や姉を無惨に強姦してコンクリ詰めにして捨てて出所してきた当人であるし、第一容疑をちゃんと認めなかったし、おまけに肩越しにふと見ると、後ろでヌンチャクを振り回して奇声を発してこちらを威圧している図体のでかいにーちゃんはあろうことか、南倭を強姦殺人で逮捕した警官そのひとである。

中国人としては、隠忍自重臥薪嘗胆克己復礼、いろいろにゆったりごまかしたり、70年代にはいまでも日本で活躍しているひとびとを学生時代から招いては因果を含めたりしてありとあらゆる孫子の策をつくして自力の涵養に努めたのであった。

ああ、疲れた。
たとえ話は難しいな。
やめた。

中国の「尖閣体当たり物語」はもうすぐ止むでしょう。
戦場で、隠密にこっそり敵情を観察しても判らないこと、たとえば火線の配置と規模、反撃に要する時間と立体攻撃の有無やなんかを見るのに、軍隊というものはときどき「強行偵察」ということをやる。
たとえば戦車を後陣に配置した装甲車を中心とした小部隊を繰り出して敵の面前にちょっとだけ展開させてみたりします。
敵の反撃を誘いだして「あっ、反発はこーゆー感じなんだな」と把握実感する。

中国は沖縄の普天間問題を凝っと観察していた。
日本の民主党政権が防衛問題についてはびっくりするくらい素人で、しかも防衛省の玄人衆は人が悪くもそのバカッぷりをニヤニヤして見ているだけであることに驚いたに違いない。
もうひとつヒラリー国務長官の軽い恫喝でへなへなと方針を変えるあっけなさにも、へえ、と思ったもののようである。

ちょっとヘリを飛ばして自衛艦に思い切り近づけてみた。
また、へえ、と思ったでしょう。
今度はアメリカの反応を見て、です。
意外と及び腰やん。

だから今度はもうちょっと露骨に強行偵察に出てみた。
合衆国や欧州豪州に対しては相手の利益になる提案をするのと当然セット戦略です。
主張は「日本を含めた東アジアの諸問題は中国の勢力圏の問題であって、あんたらの知ったこっちゃないという事を理解しろ」ということである。
南倭の真の脅威がおまえらなんかに判ってたまるか、という気持ちがある。
この町内はわしが町内会長でないと治まらん。

「尖閣は日米安保の対象である」という声が聞こえたところで、強行偵察の目的は達せられた。
そーですか、と思ったでしょうね。
じゃ、ま、今回はこの辺でやめておこう。

タイの赤シャツ事件も考慮すると、中国の目指す「絶対国防圏」は西はメコン流域、東は日本、という事のようだ。
近い将来においての「勢力圏」は、中国にとっては意外なことに技術的に陳腐化しつつある日本の代わりに、おおきく技術的な進境を見せた台湾が産業の「先進的パートナー」として必要なので台湾を政治的にも確保する必要に中国は迫られているように見える。
政治的な戦略と矛盾しない経済関係を維持できる日本を先進パートナーにすえる場合と違って台湾をパートナーとする事は政治的な紛争を招きかねないからです。
だからいざ台湾を併合する段になっても合衆国が本格的に反発することをあきらめさせなければいけない。
その点では日本がひたすら恥を忍んで「やめてください。お願いします」と頭を下げ続けたことは、中国としてはやや舌打ちしたくなるような誤算でしょう。

だから、ちょっと碁盤のこの局面は休止するだろう。
中国という国は歴史を通じて年柄年中息つく暇もなく膨大な外交努力をやり尽くす国なので今度はアフリカや欧州を睨んで碁石を握りしめているに決まっておる。

日本の「面子まるつぶれ」、この次捕鯨に行って、シーシェパードのワトソンが面白がってフネ体当たりしてきたらどーするつもりだんねん、な尊い犠牲と引き替えに諸外国が学んだのは、「中国って、やっぱりやばいやん」という認識であった。
まだ中国様で稼がないとまずいのでそうそう口に出していうわけにはいかないが、どうも「東アジア絶対国防圏」はマジなんだな、という重大な教訓を学んだのでした。
誤解してはいけないが、それは「切迫した認識」ではない。
読売新聞には「豪州も重大関心」とか書いてあったが、ウソですよ、そんなの。コモンウエルスゲームズの百分の一も興味あるもんけ。
合衆国や連合王国やなんかの一般的な英語人に至っては、そんなニュース知らんし、たまたまワシントンポストか何かで記事を目にしたとしても「ははは、日本、だっせえええー」くらいと思う。
第一、これは推測だが、当の中国人自身がそんなにたいしたニュースだと思ってないでしょう。
しかし、東アジアの専門家たちは、この尖閣諸島を巡る「小さな出来事」を見て、そーですか、と呟きながらラップトップのスクリーンを静かに閉じたと思う。
今日は家に帰っても、考えることがいっぱいあるな。

誰よりも日本人が感じた通り、中国は、紛いようのない「全体主義国家」でしかも世界が受け入れられるはずのない巨大な「国防圏」を建設する強い意志をもっている。
将来、というよりも、とても近い将来、中国は戦前の大日本帝国とその面でのロジックは同じ「国内問題だけが見えて他国の都合は考慮しない」全体主義国家の性格を露わにして「資源」をキーワードに世界に対して挑戦してくるのが誰の眼にも明らかになった。

いままでずっと、なんとなく遠い将来のこととしてぼんやり語られていた、あの破滅的な物語のなかの「世界をくいつくす中国」が表舞台に現れる初めの前兆が、あのしょもない島を巡る一幕の出来事なのかもしれません。

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