大庭亀夫の具体的生活 1


朝、目がさめると、そおおおおーとベッドの、すやすやと眠っているモニと反対側にずりずりと移動して、シーツから抜け出て、しゅたっと床に降り立ちます。
そおおおーと、引き出しを開けて下着をつまみだして素早く音もなく履く。
このとき、間違って裏返しに穿くのがわしの数少ない特技のひとつだとゆわれているが、ここでは関係がない。
クロゼットに音もなく飛び込んでTシャツを着ます。
5枚10ドルで買った「I♡ NY」のこともあるが、プーケ島で買った「変人命」と漢字で大書されたTシャツのこともある。
「I’m Too Sexy To Be A Right Handed」と胸にでっかくプリントされたかっちょいい薔薇色のTシャツはわしの気に入りである。
膝までのパンツをはけば今日の亀夫の出来上がり。

ホールを斜めに移動して自分のヲタク部屋に入って完全防音の分厚いクソドアを閉めると両方とも30インチスクリーンにつながっている自分でつくったCoi7PCとMacBookProのスウィッチをいれる。
初めにアップルのかっこいい「ぽおおーん」という音がして、ちょっと遅れて、PCの「ぴっ」ちゅう間抜けな音がします。
このあいだまで使っていた15インチのMacBookProは、交換した三台目サムソンのクソ500G7200回転HDDが熱を出しすぎるのと、キーボード一面にぶっかけた赤ワインのせいで光センサーがぶち壊れたのを皮切りに、マイクロフォン、タッチパッド、おっことしたのでDVDドライブ、というふうにだんだんぐしゃぐしゃになってきたのでCoi7/17インチMacBookProに移行中だが、まだときどき15インチを使う。
iTunesの音楽を部屋の後ろにあるステレオに(AirPort Express Baseを使って)とばします。

ブログにも何度も書くように、中東と近東、アフリカやスペイン語圏の音楽が多いが、いまちょうどそうであるようにクラブミュージックが大音響でかかっていることもあります。
ツイッタの友達のシブイパフォーマー「切り取った耳」が聞いたら床にばったり倒れ伏して動かなくなりそうなKeishaやt.A.T.uも聴く。(観念のレベルをどんどん高めてゆきつつあるカッチョイイ「切り取った耳」への嫌がらせみたいことを言うと、HungoverとかNe Zhaleyとか結構オモロイねんで)
能楽の「井筒」が壁を揺らせる音でかかっていることもあれば、わしが最大に尊敬するマリア・カラスの高音が窓をカーテンを震わせていることもある。

壁には年中変わっている絵がいくつも掛かっている。
ロンドンやニューヨーク、サンフランシスコの知り合いの画廊主が集めてくれたものもあれば、モニが描いたアフリカ人風の絵もある。
叔父が会社が倒産して首をくくった社長が使っていたのを譲り受けてきた両袖机の上には、W.H.Audenのしわしわの顔がこっちを向いてまじめくさった顔をつくっている。

この頃はまた日本語をやっていることが多くなった。
午前中はたいてい日本語の本を読んだり資料を整理したりして過ごします。
もっともPCのほうには日本語でないフォーラムの窓が開いているし、ひどいときにはスカイプでガキンチョのときからのバカ友達と話しながら日本語ブログを書いている。

12時くらいになるとモニが目を覚ますので、台所に行って朝食をつくる。
広尾山には週に二回手伝いのひとがくるが、来ていても朝ご飯はわしがつくります。
モニは(ブログではなーんとなく曖昧にしていたが)英語圏での生活が長いので欧州式の朝食というわけにはいかない。
珈琲とフレンチトーストかトーストにポーチドエッグか目玉焼き。ベーコンにトマトかきのこの炒めたのをつける。
出来上がると、ベッドにもっていきます。
むかし、結婚する前に、朝ご飯をつくったら受けたのでそのまま習慣になった。

モニが朝食を食べているあいだベッドの横の椅子に腰掛けて話をすることもあれば、ひとりで本を読みたそうにしているときはさっさと引き揚げることもある。(モニは、わしと一緒にいると自分が笑い死にするのではないかとときどき真剣に心配になるよーだ)

午後はたいていモニとふたりで出かけます。
通りに出てタクシーをとめて、銀座や浅草、たいてい東京の東側に行く。
そーゆーところが、わしの異文化理解における甚だしくダメなところだが、食事や飲み物をとるのは、普通の店に行けばよいのに、外国人ばかりのクラブのようなところのほうが多いようだ。
普通の店は、鮨や日本料理にでかけても同じ決まった店ばかりでわれながら退嬰的だと思います。

東京はおいしいものを食べるにはひとり2万円くらいはどうしてもかかってロンドン並だが、でもたとえばプレゼンテーションが素晴らしいので、あっさりしすぎかなあああ、と思う事が多くても矢張り料理は一流でしょう。
そんなら普通の店で食べればいいじゃん、ときみはいうかもしれないが、日本のレストランのサービスは畏まりすぎてくたびれる。

モニとわしがときどき出かけるイタリア料理店のように「このスープうめかっただ」というと、おっちゃんがニカッと笑って、「次の皿はもっとうまいぞ」と言うかっこいいサービスのレストランもあるが、一般に気楽に話をしてくれるのはカウンターの向こうで料理る日本料理屋のほうが多いようです。

散歩したり、一ブロック進むのに優に30分はかかるモニの買い物につきあったり、神社でおみくじを引いて遊んだり、運がよければ通りで前に楽器のケースを開けて演奏しているひとびとの前でふたりで踊ったりしながら、夜になると、また広尾山に帰ってくる。
夜中になってまだ遊びに行くこともあれば、そのまま家でふたりでのんびりしていることもある。

モニもわしも、この世界にはただ遊びに来ただけなので日本にいるときも、やることは同じでただ遊んでいるだけです。
ふたりで出かけて踊ったり、食べたり、気持ちの良いそよ風のなかを散歩したり、知らないひとたちと会って笑い転げたり、しんみりしたり、ふたりで向かいあってお互いの言葉や身体を探求したり、そういうことは熱心だが他のことは何もしない。
一日の終わりにモニのこの世のものではないような良い匂いがする身体に顔をくっつけてぐーすかぴーになるまで、ずっとずっと遊んでおしまいなのね。
それで都合が悪いと思ったこともない。

ときどきはモニもわしも蜃気楼のようなものであって、死を待つまでもなく、冬の晴れた午後に、信号が変わった交差点を渡っている途中で、ふたりともからだが光のなかに透きとおっていって、ふっと空気のなかにかききえてしまうのではないかと妄想することがありますが、まあ、それならそれでいいや、とふたりで話し合ったりしています。

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7 Responses to 大庭亀夫の具体的生活 1

  1. ヒロシどの、

    >何しろ天国に行ったら朝から晩まで神様を崇めていなければならないそうだから。

    えっ、そーなのか?酒池肉林で悪い事しほーだいのお咎め無しじゃなかったのか?
    一応、崇めているふりだけでもいいの?

    >えっ、東京の東側? 

    だって西側は、田舎くさくてつまらんもん(一部青山除く)
    東側のほうがぜんぜんシブイやん。
    ついでにゆーと神保町も秋葉原も葛飾も葛西も大好きだぞ。

    >鎌倉のほうばかりと思っていた。そんじゃ今度東京行くときは余は鎌倉とか逗子とか横浜にしよ。

    砂浜でワイン飲んで4月とかの深夜の長者ヶ崎や材木座で素裸で泳ぐと気持ちいいど。
    波が夜光虫にふちどられて綺麗でもある。

  2. ガメさん。僕はt.A.T.u好きなのですよ。特にトレバーホーンと組む前のロシア語で歌ってるアルバムが。t.A.T.uが日本に来た時、歌番組に出るというので珍しくテレビの前で待ってたら、楽屋に籠って出てきませんでした。2ndアルバムでがっかりしたけど、Ne Zhaleyはいいですね。ロシア語で歌う方が断然いいです。Keishaは興味無し、です。

  3. あっ、「キリトッタミミ」だ。へんなところで会うね(^^)

    >僕はt.A.T.u好きなのですよ。特にトレバーホーンと組む前のロシア語で歌ってるアルバムが。

    トレバーホーンは才能ない。ヴォーカルのふたりをはじめ、t.A.T.uは全体が田舎興行師じみたマネジメントのせいでいったんつぶされてしまったが、仰せの通りロシア語でしかもロシア人達向け(シンプルな音)の音の作り方でやるときは、音楽自体に「伸び」があってかっこいい。

    わしは最近の曲ではNe Zhaleyと (Yulya Volkovaの自慰行為を延々と映し出したせいで放送禁止になったプロモーションビデオも含めて)prostye dvizhenyaが好きかのい。
    いちばん好きなのはキリトッタミミが言っているCDと日本版にだけはいっていた葉巻の煙が出てくる歌(ロシア語のオベンキョーに使った曲なのにそれしか歌詞の内容おぼえてない)だけど。

    いま喧嘩してバンドやってないけど、またきっと一緒にやるでしょう。そのときに期待してます。

    そーゆえば、ミドリカワモトヒコ(?)だっけ、ベースのひと、おじーちゃんでしょうけど、ああいうひと、あるいはああいう感じのひとと一緒にやってみるのはどうですか? このあいだのギグのビデオを観ていて、ええんちゃうかなーと思いました。

    >Keishaは興味無し、です。

    そりゃそーでしょ(^^;)
    興味あったら、わし困るし。

  4. むむ?ミドリカワモトヒコ???ひょっとして、「山姥」でベース弾いてる下松勝人のこと言ってます?

  5. moon_flight(るな) says:

    葛西!なんだか意外なんですが!息子が小さい頃、地下鉄博物館とかレクレーション公園とか葛西臨海公園によくお出かけしました。

    • るな殿、

      >葛西!なんだか意外なんですが!

      葛西の狭い裏路地の、インド人の子供たちが遊ぶ歓声がするようなところや突然インドのものを売っている店があったりするところが好きなんです。
      散歩するには楽しいと思うけど。

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