もうすぐ一年が終わる

世の中に二日酔いの朝のベジマイトトーストほどうまいものはない。
しみじみ、うめーだ。
いつものごとく台所までよろめきながら歩いて行って妹に「そんなに飲むなんてバカなんじゃない?」と冷笑されながら、じっとジャグでお湯を沸かし、トーストを焼いて寝室までもってゆかねばならないかと思ったら、妹がゆわれもせんのに焼いてベッドまでもってきてくれたのであった。
すっかり動揺してしまった。
どーしたんだ、あいつ。
ボーイフレンドに振られたのだろーか。
なんか思いつきで理屈だけもっともらしい投資をして大金をすったのだろーか。
孰れにしても妹が失敗するのはめでたいことである、と考えながら、しみじみおいしいベジマイトトーストをかみしめたのでした。
マジで、うまかった。
モニははやく起きて居間でかーちゃんと話しているよーだ。
遠くから笑い声がきこえておる。

日本と同じことで、ニュージーランド人も一年の終わりにはよくその年を
ふりかえって話をする。
「今年いちばん失敗した整形手術をうけた芸能人10人」
とか、
「今年もっともバカな失言をした有名人10人」
とかだのい。
日本と違うのはほとんどの場合、話が英語世界全体に及んでいて自国に限ることはない。
パメラ・アンダーソンもナタリー・ポートマンも、まるで自国人であるかのごとき扱いです。

クライストチャーチ人にとっての今年最大の話題は、「地震」であって、大きさでいうと「神戸大震災」や「ハイチ大地震」とちょうど同じでした。
「世界一地震に強いデザインの建物」とニュージーランドの建築家たちはことあるごとに自慢してきて、えらそーに胸をそっくりかえらせてフンフンしていたのであるが、蓋をあけてみるとフンフンがほんとだったので皆驚いた。
崩壊したのは建築家たちが地震の前から「こことここは絶対に崩壊するから補修をいそぐべきだ」と指摘していた1920年代以前の煉瓦造りの建物ばかりで、あとは崩れなかった。
フェンダルトンという町にあるかーちゃんの家も、同じ近所にあるモニとわしの「ChChの家」も地震のときに当然ひとが見に行ってくれたが、内部の壁のひび割れひとつなかった。
あれだけの大地震で人間がひとりも死ななかったのは、すごいことで、建築家のみなさんは自分達の仕事がいかに素晴らしかったかが証明されてフンフンがいよいよエビぞりになって歩いているが、しばらくは誰も文句をいわないだろう、と思います。

地面がやわらかいところに立っている家はしかし、無傷、というわけにはいかなかった。
外から見た限りでは変わりなく立っているがなかは梁がおれかかっていたり、柱がゆがんでいたり、壁に大きな亀裂が走っていたりする。
カウンシルが緊急な順に補修工事をしている。

通りも、古い、主に商店に使われている、補修の必要が指摘されていた建物は地震でつぶれてしまったのでたとえばマンチェスター通りはいまでも封鎖されている。
シドナム、というクライストチャーチでもいちばん古い商店街のひとつである街は殆どの建物が地震で危険な状態になったので営業停止命令を受けてかき入れ時のクリスマスも廃墟のようであった。

今年という年は、いままでの人生で最も忘れたい一年だった、とクライストチャーチ人はいう。
不景気、地震、政府の経済政策の失敗(政府主導のファイナンシャルハブにしようとして失敗した)があわさってやってきたので、てーへんだった。

3000回を越える余震のいくつかはおおきくて、つい昨日も大きな余震でオクスフォードテラスからみっつ向こうの通り(クライストチャーチの中心街)まで封鎖された。
崩れかけていた壁が余震でおちたりしたからでした。
スーパーマーケットもいくつかは棚の瓶がおちて割れたりしたので閉鎖されておった。

モニとわしも「今年いちねん、どんな年でしたか?」とカンタベリー友達にあちこちで訊かれたが、「日本に半年いてただもうひたすら暑かった」という以外には何もない年だった。
第一、ふりかえってみると、今年の最終遠征に限らず、いままで5年間に11回も日本にいったということそのものが、そもそも夢で、ほんとうはずっとニュージーランドや連合王国にいて、かーちゃんや妹やモニと、ウルの匂いのする生活をしていたよーな気がする。

エイクマン通りのバーで友達たちと酒をのんで遊んだ帰り道、星が雲間からたくさんのぞいている空を眺めながら「ガメとわたしはラッキーだな」という。
そーだのい、とわし。
今年いちねんで、また少しモニのことがわかるようになった。
モニにとっては、無論本人はいわないが、日本に6ヶ月も滞在することは大試練で、食べ物もあわず、日本の街も人間もなじめずで、たいへんだったのはわしにはよく判っている。
ただヘンテコなだんちゃんが、遠征の十全は全うされなくてはならんのだ、とわけのわからんことをゆーので付き合ったにすぎない。
来てみれば5月ののっけから、モニとわしにとっては暑すぎる暑熱の土地で、モニの好きな「散歩」などは、インドの火渡りの儀式のようなもので、1ブロック気分が悪くならないで歩ければいいほうだった。
涼しい天候をもとめて長野県の「山の家」も足繁く通ったが、東京よりは5℃くらいは低いものも、やっぱりあの町も暑すぎて、なんにも出来なかった。
そういう点ではがっかりだったが、ほかのことはこともなくつつがなく過ぎた。

プーなわしに代わって、わしの事務所のひとびとはバリバリ働いて、向かい風にむかってすすむヨットのように、巧妙に仕事をすすめてきた。
アグレッシブな投資を学習するためにもっか毎年倍になることをシュクダイにしているおらがガハハ資産も、今年は8月でもうシュクダイが終わってまるで夏休みの宿題が終わってから遊びにゆくかわいげのないガキのようであった。
モニは小さな展覧会で賞をとった。
遠くの町で開かれたコンピティションだったこともあって、初めはなんだかピンと来なかったようだったが、いろいろなひとからお祝いがたくさん来て、本人も嬉しくなってきたようでした。
そういえば、もうむかしからそこにいたような気がするオークランドのモニとわしの家も今年買ったのだ。
夏になるとブーゲンビリヤが咲き乱れる、カッチョイイ家です。
モニとふたりできゃあきゃあゆって走り回れるながあああーいホールもある。

そーゆーわけで、モニとわしにとっては夢であったような、なかったような、不思議な熱暑の年でしたが、いつもブログを読んでいてくれるみなさんは、どうでしたか?

josicoはんは連合王国への第一回冒険旅行から、手に汗握る脱出行のはてに首尾良く日本に帰り着き、じゅん爺のメルセデス「源五郎丸」はダイハードに走り続けた。
すべりひゆは息子のへんてこな眉毛に笑いをこらえてひくひくしつつ神と女性の抑圧された立場について考えていた。ヒロシは福音書の福音に惑溺し、SDはポーランドに留学することになった。ナスは仕事で疲れた体でぼんやり窓の外をみてる。チロはロスアンジェルスで不良に逆戻り、ブブリキはもちこはんに寄りかかりながら、あの素晴らしいパフォーマンスを今年もやっていた。
ネナガラは、円相場を見つめてため息をついていたかしら。
thingmeurlはまた月を見上げながら、いまは遠い欧州の東のはてを思っているだろうか。
世界一のアホ男、windwalkerはどうしているかなあ。
むすっとした顔でツタヤのカウンタにアダルトビデオを並べて女店員に嫌がられているだろーか。

また新しい年、新しい冒険、新しい太陽がのぼるときがやってくる。
来年こそは、誰にとっても、もっと良い年になればいいけど。

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2 Responses to もうすぐ一年が終わる

  1. Kuichi says:

    ガメさんこんにちは。お久しぶりです。

    ベジマイト、食べたことないのですが日本人にとっては好き嫌いが分かれる味だと聞き及んでいるので未だに手が出せずにいます(一瓶買ってもし食べられなかったらもったいないですから……^^;)。

    今年は色々ありましたけど、特に変化が大きい年でした。何たって来年からプー太郎です^^
    嫌でも変化せざるを得ない。

    ガメさんは本当にニュージーランドに帰ってから、棘々したものが取れたようで何よりです。
    のほほんとしていられる場所にいるのがやっぱり一番ですね。

  2. Kuichiどん、

    >何たって来年からプー太郎です^^

    わし、先輩だし。

    >ガメさんは本当にニュージーランドに帰ってから、棘々したものが取れたようで何よりです。

    わしはウニさんではないのでとげとげしたりすることはなああああい。
    どこにいても思慮が深いやさしみの影がさした成熟した温和なオトナです。
    知らなかったのか。

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