盛夏


夏は庭で食事をすることが多い。
モニは小さい方のダイニングルーム(ニュージーランドでは少し大きな家であれば、ふだん使うダイニングルームと「正式な」晩餐に使うダイニングルームがふたつあるのがふつーです)のすぐ外にある、ブーゲンビリアの花の棚の下で食事をするのが好きである。
煉瓦を敷いた上に、去年買ったチークの8人掛けのテーブルと椅子が置いてあります。
知っている人は「あたりまえじゃん」というであろうが、チークは戸外のテーブルには最も良い。風雨に晒されても長い間もつ上に途中の色の変化が美しいので、何も塗装しない素のままのチーク材で出来たテーブルと椅子はよく庭用の家具に使われる。

8つの椅子のうち普段は2脚だけが外に出ていて、6脚はガレージのなかにある。
怠惰なわしは「肘掛けのない椅子」というものが嫌いなので、家具屋に言って椅子を作るときにもともとのデザインにはない肘掛けをつけてもらった。
長いテーブルの両端にモニとふたりで腰掛けて、のんびり朝飯と昼飯がひっついた限りなく午飯に近い朝食を食べる。

ベーコンとポーチドエッグとトーストが2枚と焼いたトマトと焼いたキノコ、それにときどきは芋とアスパラガスが付く。
お腹が空いているときには、それにポークソーセージが二本つく。
結婚したばかりのときはコーヒーだったが、もともとの趣味がじじむさいわしのせいで、また紅茶に戻ってしまった。
ちゃんとコージーがかかったポットで、マジメに淹れた紅茶です。

いまの季節はセミが鳴いている。
日本ではしたり顔のひとびとが(おそるべきことには、わしにまで)「ガイジンにはセミはうるさいだけだ」と言っていたが、わしはそんなことはねーよ。
アブラゼミのような騒音は嫌であるが、オークランドのセミの、日本の絶叫型のセミに較べると格段に音量の小さい、やさしい鳴き声はわしは嫌いではない。
(もっとも、日本の文化を学習した影響もあることは認めるが)

ニュージーランド人はパンの食べ残しとかは芝生の上にぶん投げておくが、それはそうすると鳥が庭に集まってくるからである。
テュイやツグミ、キングフィッシャー、その他もろもろの鳥が三々五々集まってくる。
カラスがいないのは当たり前としても、オークランドにはマグパイもおらん。
鳥さんたちのなかでも友好的な諸君しかいないので、人間と鳥さんとの関係も頗る円滑です。

晴れている日には、朝食のときにシャンパンを開けることもあるが、そういうときにはたいてい庭の芝生を歩いて下りて行って、真ん中の広々したところに寝転がって、モニとふたりでたくさん話をする。
ガメ、やってやって、あれ、やって、とせがまれてバク転や前転をしたりする。
モニがきゃあきゃあゆって喜びます。
どうも、妹がにらんだとおり、モニはわしに角兵衛獅子をさせるために結婚したもののようである。

ラミュエラの坂を下りて、クルマで5分くらい行くと、砂浜、たとえばコヒマラマの浜辺がある。人気(ひとけ)のない平日には、遠くに見えるランギトトを眺めながら、のんびり泳げます。コヒマラマ
ttp://www.flickr.com/photos/starbuck/4135795014/
や隣のミッションベイ 
http://www.missionbay.co.nz/default.asp?s1=Home 
は泳ぐひと専用だが、そのまた隣のオカフベイに行けばカヤックもボート遊びもやれる。

わしはカヤックが好きである。
気楽でのんびりした乗り物なところがいいと思う。
海の上の自転車、とゆえばいいか。
のーんびりパドリングしながら波が寄せてくる方向にむかうと、あっというまに意外な遠くまで行ってしまう。
むかし、モニと初めてカヤックででかけたときに、わざと横転して遭難したふりをして夜まで口を利いてもらえなかったのを思い出す(^^)

カヤックで遠出ができないニュージーランド人なんて、多分いないと思う。
夏のネルソンで、あの深い美しい入り江をカヤックで巡りながら、そこここの岩にへばりついているミュール貝をナイフではがして食べる。
うめーです。
ハッチに冷やした白ワインをいれてゆくと良いと思う。

イルカたちに出会うと、ちゃんとカヤックが揺れないように距離をとって一緒に遊んでくれます。帰るときには、礼儀正しく別れを告げてから帰ってゆく。
イルカは人間より賢いので自分達の仲間だと知っている人間から攻撃されることがあっても自分達からは友情しか返すまいと決めているからです。

素足で浜辺を歩くのは楽しい。
波が足を洗ってゆくくすぐったいような感じや、ときどき予測を越えて大きな波がくるときの意外さが良い、と思う。
大きな空があって、遠くまで広がっている静かな海があると、世界なんてどうだっていいや、という気になります。

帰りにはテラスのあるパブでスタウトを半パイント飲んで帰る。
日灼けしたひとびとが、テラスのてすりにもたれて大きな声で笑っているが、騒音の嫌いなわしでも、そういう笑い声だけは気にならないのは不思議な気がします。
マケドニアのおばちゃんが作っているバクラバを買って帰ることもある。

遠くにある競馬場から風に乗って聞こえてくる歓声やトゥリーハウスの窓から叫んでいる子供たちの声、テニスコートでボールを打ち合う音、セミの声、…そういうもので、オークランドの夏は出来ている。

木陰の芝生の上に座って、草クリケットを眺めながらクルマのブートにいつも入っているピクニック鞄から出したワインをのんびり飲みます。
初めて買ったチーズを切りながらその新参者のチーズに難癖をつけたり賞めたりする。
モニもわしもチーズが好きなので、チーズ屋に行くと、延々と延々とチーズの品定めをしているので、いつもチーズ屋のおばちゃんに笑われてしまう。
一時間くらい話していることあるからな。
買うチーズよりも、だいたい試食するチーズのほうが量が多いとゆわれているし。

ほんの少し風が動くと、草の強い匂いがする。
太陽の匂い。

なんだか日本で喧嘩した(なにしろ暑すぎたからな)太陽の母上とオークランドで和解しているようなヘンな気分です。

画像は古い洗濯物干し場の上でカッコをつけてポーズをつくっているキングフィッシャー。
気取り屋だが、ひとなつこくて、誰かが写真を撮り出すといつまでもいつまでもさまざまなポーズをとっておる(^^)

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2 Responses to 盛夏

  1. Nym Phaea says:

    お庭にキングフィッシャーが遊びにくるなんて、なんて贅沢なんでしょう。こちらなど、年に数回出会えればラッキーですのに。ガメさんの描かれる日常はいつも美しい。身体に詩の言葉が身に付いていらっしゃるからですね、きっと。そちらのキングフィッシャーさんはこちらで見かけるのよりも、強そうです。

    • Nym Phaeaさん、

      >年に数回出会えればラッキー

      カワセミ、ですのい。いま調べたらやはり同じ鳥の仲間なよーだ。「山の家」では、よく見かけました。日本のは、ちょっと小さい感じがする。

      >そちらのキングフィッシャーさんはこちらで見かけるのよりも、強そうです。

      でかくて、えばっているが、弱いねん
      でもひとなつこくて、わしが庭で本を読んでいると、そばにきて、自分のほうを見てほしそーな様子で、じぃっと、わしを観察しています。
      あんまりうるさいので、そっちを見てやると、ポーズをとって、かっこつけておる(^^)

      へんなやつ。

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