Daily Archives: October 18, 2011

英国岬から帰ってきた

1 空からふってくるはずだった恐怖の大魔王も革命もやってこなかったので、きみは今日も横須賀線に乗って東京駅で降りる。 地獄の底のように地下の奥深くにあるプラットホームからエスカレータに乗って丸の内口に出るだろう。 きみの肩にはホームローンやカーローンや教育ローンが、ろーんろーんと囁きながら乗っていて、びっくりするほど安い所得税とびっくりするほど高い年金と保険料をひかれると20万円しかない、きみの長い労働時間から考えれば冗談じみた金額の給料のことを考えてためいきをつく。 駅のトイレに駆け込んで、ちょっと嘔いた。 昨日、新橋で飲み過ぎたからじゃない。 なんだか、この頃、ときどき嘔いてしまうのだ。 つわりじゃないんだぜ、ときみは鏡を見つめながらつぶやいてみる。 なんてくだらない冗談だろう。 ぼくは、昔から冗談が下手なんだよ。 可笑しいかどうか考えているうちに、みんなの話題が変わってチャンスを逃してしまう。 ぼくの人生の他のいろいろなことに似ている。 せめて、ダイレンアイ、なんてあればなあー。 でも、このデコじゃ。 ああ、この耳たぼでは、 小恋愛もできやしない。 また、にやにや笑いを浮かべながら見合いの席にでも座るか。 税金に年金に料金に積立金で、ピンをはねられ、さやをとられ、 はてしなく働いて、日野暮らしの頃、いつか予算編成の頃に二日間の徹夜のあとにタクシーに乗ったら、 日野までですか? そりゃあ、ありがたい。 あんた達役人は、若いのにいいご身分でうらやましい、と言いやがった。 つかれはてて、おんぼろの、風で道路を横切る布きれみたいにぼろぼろになって、 3月の町を歩き回った。 急に泣きたくなって、寒い部屋に帰ってテレビをつけたら、 ちょうど原発事故のニュースをやっていた。 それから、あのヘンなニュージーランド人から一週間毎日メールが来た。 いろいろな大使館の非常時用のいっせいメール。 隠すように東電が発表したデータのPDF。 返事をださないでいたら、そのうちに何も言ってこなくなった。 ちゃんと税金払ってるのに、電気代だって払ってるのに、今度は放射能なのか、 なんだって、この国の政府は、ぼくの足をひっぱることしかしないのだろう。 役人たちは、いったい何を考えているんだ。 …あ、役人て、ぼくのことか。 ぼくは、何も考えてやしないのさ。 もう、考えられなくなったんだ。 ただ、ときどき吐き気がするだけなんだよ。 そうして、夜、寝床にはいるときには、とてもとても泣きたくなる。 2 医科研前の銀杏並木を、きみはぶらぶらと歩いてのぼってゆく。 … Continue reading

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