わがままながまわま

メルボルンの夏。金曜日。
起きてみると、抜け渡るように美しい青空であって、窓を開けると乾いたそよ風が部屋をふきぬけてゆく。
この天国(銀座の「てんくに」ではありません)(生前善人だったひとが集団でヒマこいてる国のほうね)のような天気はオーストラリアとニュージーランドの特徴なんでごんす。

じっと空を見つめて、わしは「来ないな」とつぶやく。
「来るわけがない」

ひさしぶりにメルボルンの家にやってきてみると、ガス台はぶち壊れていて点火が出来ず、壁のスイッチが3カ所崩壊していて明かりがつかないのでガス屋と電気屋を予約してあった。
でも、夏の天気が良い天国日より。
金曜日。

こんな遊びにいくのにもってこいの日に、電気屋とかガス屋とかくるわけねーよな。
しかし、約束してもうたものはやむをえない、と考えて家でごろごろ、というか「ディアブロ2」をやりながら待っていたが、やっぱり夜まで来なかった。

….と、ゆーよーなことがオーストラリアでは年がら年中あります。
テキトーである。
そんでもって、火曜日とかに突然やってきて、わしが「金曜日に来るって、ゆーたやん」とゆっても「あっ、あの日はビョーキだし、なはは。今日、万障くりあわせて来てやったんだから、感謝しろよ」などという。
「電話すればえーやん」
「それが、友達とみんなでブランディを密造して飲んだら、これが強すぎて。気絶しちゃったもんだから…あっ…」なんちゃっておる。
オーストラリアほどサービスの質が悪くはないが、ニュージーランドも似たようなものです。
すごおおくテキトーである。
そーゆーことがダメなひとは、オーストラリアやニュージーランドに住む、とかいうのは無理であろう。
アメリカも無理です。
スペインは無理無理。
メキシコは無理無理無理。

わしは、こーゆー無理国民のひとびとよりも更に輪を掛けてえーかげんなので、住む場所がたくさんあって幸福なのだとゆわれている。
むかし、わしがスペインのパン屋のおばちゃんに「あんたみたいに、いい加減でちょーテキトーなひとは初めてみた」とゆわれているのを見て妹がカンドーしておったが、妹には内緒だが、わしはメキシコのバーのねーちゃんにも「そんなにいいかげんで生きていけるのか?」と心配してもらったことがある。
ましてオーストラリアにおいておや。

連合王国や日本のような国では「他人のことを考えて行動しなさい」
「そんなことをしたら、他のひとが困るでしょう」
「足手まといになるようなことをしてはいけません」
とゆーよーな、辛気くさい教育をうける。
そーでないと社会が回転してゆかない、と教わる。
ところがスペインのような所に行くと、カタロニアのようにマジメな国でも、
週末の夕暮れ、クルマが、ゆっくりと坂をおりてきて、「あれは駐車する場所を探しておるのだな」と思って見ていると、ふらふらふらと地下駐車場の出口にクルマを突っ込んで駐めてしまう。
交差点の、ちょうど、どまんなかにクルマを駐めていくひともいます。

それで、どうなるかというと、なにしろ地下駐車場なのでクルマが、ぶうううっと出口に向かってあがってきて、そこで知らないひとのクルマが出口をふさいでこっちを向いて駐まっているので運転しているおっちゃんはショックを受けてしまう。
そーゆーときの、スペインの人のなさけなさそーな顔は、なかなか味わいがある。
あーゆー顔というのは、文明が三千年がとこはリニアに続いていないと生まれないものだと思われる。
連合王国くらいの歴史の浅さでは、到底ああいう顔はうまれない。

降りてきて、そこいらじゅうの店を一軒一軒まわって、「駐車場の出口にクルマを駐めたひといませんかあ」とゆって歩く。
クルマの持ち主の若いおねーさまは、食べていたパエリアをテーブルにおいたまま、なにがなしイライラした様子で、クルマを動かしに来てくれる。
「あんたが駐車場を出ようとするから、わたしが食事の途中なのに、また新しい駐車場所を探してうろうろしなきゃならないじゃないの」とぶりぶり怒っておる。

おっちゃんは肩をすくめておるな。
そりゃ、あんたの問題だろ、とゆっておる。

一部始終を眺めていたわしは、うーむ、文明、おそるべし、と思って考え込んでおる。
女のひとが、あの状況でおもいきり怒るというのもすご杉だが、おっさんは、それに対して「肩をすくめて」おる。
あんたの問題だろ、というだけです。
スペインのひとというのは、ひょっとすると、文明を極めてしまったので、もう人間みたい野蛮なものはやるのがめんどくさくなってしまっているのではあるまいか。

先週は中国の擡頭、ということを考えていたら、頭は中国文明にいってしまって、自然、「公共」ということについて考えることが多かった。
中国のひとが聞いたら怒るに決まっているが、「中国人はなぜウソをつくか」ということや「中国人はなぜルールを守らないか」ということは英語世界ではたびたび話題になる。
中国語に無茶苦茶熟達したひとびとによると、このふたつは同じ問題であって、
それは中国人の「公共の範囲」が西洋人に較べて狭いからだ、というふうに説明される。
血族と疑似血族の範囲にしか公共がない、というのね。
だから、(最近、特にかまびすしい)中国人の「知り合いを行列のなかの自分がいるところに招き入れて割り込ませる」というルールを当然だと考える。
会話においても血族以外の人間と話すということは「外部との戦い」の一部であるから、ウソもほんともあるもんけ、という理屈になる。

だいたい、そーゆーふーに説明されておるよーだ。
ほんとーかどーかは、わかりません。
これから考えるところだもん。
でも本当ぽい。
仮説として一考に値する。

そーゆー、公共をコーキョー、コーキョーと考えていると、一日くらいは、あっというまにたってしまう。
考えていて、ときどき昼ご飯を食べるのを忘れたりするので、食事代の節約にもなっておるよーだ。

まだ、全然ちゃんと考えられていないが、人間のわがままには、良いところがたくさんありげでラディゲの舞踏会やもしれぬ。
アングロサクソン社会の文化は、どう考えても、ややケーハク、というか深みにかけるところがある。
ものごとを考えるときに「効率」ということがはいってきてしまっているからで、そこを見直さないと、やがては社会として機能しなくなるであろう。

たとえば国民ひとりひとりが国家や社会という「全体」の部分、あるいは部品であることが全体社会から見て都合が良い美徳である時代は、とうのむかしに終わってしまった。
お行儀のよい部品なんかでいられると、どんどん変化しなければならない、あるいは相手集団の変化にどんどん対応していかなければならない現代では、ただのオーバーヘッドである。
使う場所のない中古部品、なのね。
だから、「わがまま」にもどってきてもらったほうが、社会としても都合がよい。

この辺で、ちょっと、ゆっくり考えてみなければならないのです。

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9 Responses to わがままながまわま

  1. ぽんぴい says:

    三ヶ月くらい軍隊を経験すればいいじゃねーか

    行動力ねーな

    それ、キミの欠点だと思うよ

    • ぽんぴい殿、

      >行動力ねーな

      それ、キミの欠点だと思うよ

      十全たるわしに欠点なんかあると思っとるのか。
      ボケぽんぴいめ。
      いよいよ耄碌したとみえる。

  2. にきーた says:

    ガメさん、

    >中国人の「知り合いを行列のなかの自分がいるところに招き入れて割り込ませる」というルール

    わたしこれ、ロシア極東で経験しました。そういう習慣を知らなかったので、ものすごく居心地悪かったですが、周りの友人達(ロシア人)はいつもへっちゃらでした。懐かしく可笑しく、思い出しました。

  3. にきーたどん、

    >わたしこれ、ロシア極東で経験しました。そういう習慣を知らなかったので、ものすごく居心地悪かったですが、周りの友人達(ロシア人)はいつもへっちゃらでした

    観察していると、中国の人、すごおおおく無邪気に嬉しそうな顔して友達を行列に割り込ませてあげて、「あー、とってもよいことをしてしまった」ちゅう顔してる(^^)
    あれて中国の人にとっては「仲間のためにしてあげる善行」なのよね。
    バルセロナとかで、その場の皆に全員で怒鳴りつけられて、ぶっくらこいちまってる中国の人達の「なんのこっちゃ?」という顔を思い出します。

    習慣が異なる人達と新しいルールをつくってゆくのはたいへんと思う。

    • にきーた says:

      わたしがロシアで見たのは、ロシア人が「これ」をやってるところなのでしたよ、ガメさん。当時はロシアンルールかと思ってました。ただし、割り込ませてもらえるのは女性のみ黙認、といったかんじで、男性の場合はちょっともめたりしてました。イギリス人のボスは、やった人が男女どちらでも「これ」を見ると激怒して、注意されたロシア人の女の子達は???という顔をしてましたっけ、そういえば。

      • にきーたさま、

        >わたしがロシアで見たのは、ロシア人が「これ」をやってるところなのでしたよ、ガメさん

        そっ、そーだったのか。ロシアの人って、やっぱりアジア人だのお、あっ、いや、いまのナシ、えーとね、ロシアの人って変わってますのお。ロシア語はなすだけでも、相当変わっておるのに、他にも変わっているところがあるなんて素敵だわ。
        (なにを言ってるんでしょう)

        >イギリス人のボスは、やった人が男女どちらでも「これ」を見ると激怒して、注意されたロシア人の女の子達は???という顔をしてましたっけ

        スペインの人って(パン屋とかハモン屋で)列は成してないのに、実はちゃんとお互いの順番を憶えていて、外国人とかが割り込むと、全員で烈火のごとく怒る。阿鼻叫喚、っちゅう感じになります。オモロイす。

  4. SD says:

     このところ寝ると悪夢ばかり見ています。人生に勝る悪夢はないはずだが、やはり怖いものは怖い。

    「店員の愛想が悪い」、あれいいですね。店員に思い切りニコニコされると、こちらも同じくらいニコニコしないと落ち着かないので、レジの人が横の人とくっちゃべりながら、私が買ったものもぽーい、レシートもぽーい、とやってくれる方が却ってよい。そういうふうに、相手が「無理をしていない」ように見えることは何より宝なのであります。
     両手をへその前で組んで、深々と礼をしなくたってレジは打てる。みんながみんなおんなじやり方をとると、かえって自然なやり方が分からなくなってしまうのだな、と思って切なくなります。故国では、そういうやり方をする店がずいぶんふえた。
     もちろん、こちらでも、店によって違いはあって、まだ偉そうに分類できるほど経験がたまってはいませんが、新しい店で、英語が話せるひとが多いようなところほど、感情労働までやってる、というようなことがありそうです。さすがに、手を組んで礼、みたいなことはしませんけど。

     中国の人の話は、そういう事例をここでは目にしたことがないのですが、もしそういうことを誰かがやったとすると、ひとり割り込ませた、くらいなら私は黙ってますが、何人も入れたとなると、さすがにやめろと言うかも。ポーランドの人々は、とくに若い人は、ほうっておくと、こういう状況に接したときに50%の確率でしか文句を言わない気がする。

  5. SDどん、

    >人生に勝る悪夢はないはず

    たのしくないのか?

    >「店員の愛想が悪い」、あれいいですね

    なああーに、不機嫌ぶっこいてんだよ。
    ふられたのか?とか、わしは言うぞ。
    阿られると、そりゃ、困るが。

    >両手をへその前で組んで、深々と礼

    日本の、あれはひどいな。日本では1945年に農奴は解放されたが商奴はまだ解放されておらないよーだ。

    >新しい店で、英語が話せるひとが多いようなところ

    給料が全然ちゃうねん

    >さすがに、手を組んで礼、みたいなことはしませんけど。

    NZでは両手を腰にあてて、「はい、次!」っちゅう、あんたはナチス強制収容所の女看守か、ちゅうようなおばはんは、ようけおる。

    >ポーランドの人々は、とくに若い人は、ほうっておくと、こういう状況に接したときに50%の確率でしか文句を言わない気がする。

    それは、おもろい。
    ニュージーランド人は、黙って軽蔑します。

  6. がめさん。こんにちは。

    また来てしまいました。今日もちょっとだけつまみ読みして、続きはまた今度にしようと思います。(読み終わったら、残念すぎるからです。)
    どの記事をどういう順番で読んだかもうわからなくなっていますが、「モニさんって幸せそう」とか、「モニさんが大好きながめさんも幸せそう」とか、ああ、いいなあ。と。(あ。でも私も基本はハッピーですが。あ、そんな事、聞かれてませんね。)

    この記事で、以前、フランス人の友人が中国旅行から戻り、「中国人って、すんごい個人主義者なんだよ、知ってる?!」と つばを飛ばして言っていたのを思い出しました。
    「中国人は、後ろから来る人のためにドアを押さえないんだ!」って。
    ふむ。日本人もあんまりおさえる人、いないよ。とか、言おうかと思いましたが、それより、日本ではフランス人は、皆個人主義者と思われているよな、とか考え始めてしまい、黙りこんでしまいました。個人主義の定義とは?とか考えてしまったし。
    (でもフランス在住の中国人は、皆ちゃんとドアを押さえて待ってくれます。念のため。)

    まあ、個人主義かそうでないかはともかく、「テキトー」の方が楽しいので、それもいいですね。
    スペイン人のおっちゃんとお姉さんの話は、大笑い致しました。
    こういう事、起こりえないので、東京はちょっと退屈です。

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