30歳の方向に歩く

29歳になった。
えらいこっちゃ。
去年の終わりのことだけど。
子供の時に「29歳のひと」というのは、落ち着いていて、オトナであって、静かに微笑していて、棺桶に片足つっこんでいるひとであったが、自分がその年齢になってしまった。

むかしの心理学は、年齢と才能の開花の関係をうるさく追究したりした。
学問としてやることがなくてヒマだったからでしょう。
まだ医者たちのほうは、犯罪者の頭をパカッと開けて、電極刺して、ここに電流を流すとどうなるかなあー、あっ、怒りよった、というような楽しい、…あっ、失礼しました、
人間として許されない実験をして遊んでいたころの話です。

詩や数学は、たしか、20代のまんなかにピークがくることになっていた。
絵を描く才能がもっとも息が長くて、延々延々延々と70代80代90代とピークに向かってのぼりつめてゆく。
道理で画家の友達というのは20代からボケロージンみたい、…あっ、いやいや、天真爛漫であるわけである。

今年は天気が悪いのでクリケットをあんまりやらないが、あれはベースボールと似ていて、上手になる頃には身体の反射スピードが遅くなって下手になってゆく。
スポーツとして判ってゆくにつれて成績は低下する、という悲しい宿命にあります。

自分のことを考えると、十代中盤が我ながら最もコントロールに厄介な頃であって、ボリショイサーカスのクマの躾より厳しいとゆわれておるとーちゃんとかーちゃんのサディスティックな…あっ、また間違えた、厳格な躾によって、乱暴なことをゆったりふてくされたりはしなかったが、しかし、ブードゥー教に入信してはどうか、と考えたりした。
あまりにバランスをとるのが難しいので、オベンキョーに熱中したり、週末には朝まで遊んだりしていた。

誰でも、そういうものだろうが、わしの二十代は奇妙にマジメな情熱と野放図で爆発的な放蕩の混淆であって、しかもヒマさえあれば世界中をほっつき歩いて、先ずとにもかくにも発散的で情けない欲求にしたがってねーちんたちと仲良くなり、ねーちんたちやおねーさまの手引きにより、その土地に詳しくなっていった。
そういうことは、わしだけの特徴ではなくて、英語人一般のセーシュンであると思います。

わしは株の売買というようなことは忙しそうであるし、何をみても株価にみえるようになりそうなので嫌いだが、その頃は、オンラインの株の売買で、あと一週間の生活費を稼いだりすることもよくあった。
ブラックジャック、という手もつねにあったが、賭博は金を稼ぐ方法として「つきや勝ちという戦果を拡大できない」という致命的な欠点がある。
昨日の勝利が今日の有利にならないのね。
たいていのテーブルには上限があってカネモチ相手のクラブでも一回の賭け金が5000ドルとか3000ポンドとか、そういう制限が多いと思うが、制限がないテーブルも世の中にはあって、そこでワン・シューではなくて、ただ一回の賭けに60万ドルかけてしまった人を見たことがある。
ストゥールにすら座らないで、たったままです。
ピクチュアが出て、恐れ入ったことにエースがその上に乗って90万ドルを手にすると、合計150万ドルをもって、そのひとはすたすたすたとまた行ってしまったが、考えてみれば、あれは正しい態度であって、賭博の本質を知っている、というべきなのでした。
ラスベガスでひと晩で46ミリオンダラー勝ったおっちゃんも、だらだらとやれば負けるさ、とゆっていた。
そうやって勝てるのはサー・アスピナルのようなカードカウンタだけの特権であると思う。
それも6デックシュー(ひとつのシューがトランプ6組で出来ている)が限度であると聞いている。

人間の一生には「安全」というものはない。
保障を求めるな、と、とーちゃんによく言われた。
人生に保障を求めるのは愚かなもののすることである。
収入の安定を求めて職業を選択するような人間になってはいけません。

失敗しないような人間は見込みがない。
自分にみあった課題にとりくめば初めは失敗すると決まっている。
将来を予測してはならぬ、何が起きても大丈夫なように自分をつくっておきなさい。

親というものはエラソーなもので、おもえば両親などというものは他のひとに言われればえらそーにタメグチ利いてんじゃねーよ、と思うようなことをマジメに述べることがある大変人のふたり連れだが、子供なので、おとなしく聴いていたものだった。

公平に言って、わしは有利だった。
100メートルを走るのに、「あっ、きみはここから走っていいからね」とゆわれてゴールの手前5メートルくらいのところにスタートラインを引かれたようなものです。
そういう境遇を嫌うひともいたが、わしはらくちんが好きなので、ラッキーと思って安んじて95メートルの息を詰めた疾走を省略させてもらった。

身体がおおきく強かったことも学校生活を楽にしたと思う。
空気が読めないひとの極みのようなものであったが、しかし、わしを苛めようと考える根性のあるバカタレはいなかったもののようである。

後年、酔っ払って、あちこちの国からやってきた友達と夜中の広場を歩いて横切ったりするときに、スキンヘッッズというハゲの一団に囲まれたりすることがあったが、最大に根性があるにーちゃんで、わしの腕に手をかけるくらいで、それでも、わしがひとに自分の身体をさわられるのが嫌いなのを発見して、あのバカタレ特有の殺意がこもった眼でじっとわしを見上げる程度で終わってしまった。

20代に幕をひく、というのは難しいものだと考える。
10代の後半から始まった、なあーんにも考えないで、あっちへころころろ転がり、こっちにへろへろと戻ってくる途方もなくえーかげんな物語は、心のなかではなかなか終わってくれない。

結婚というのはしかし、われながら良いアイデアであって、わしの頭ひとつでは、いまごろ、ち○ちんが腐って、あっ、おっこっちった、で終わってしまったに違いない、いちゃいちゃもんもんばかりのイチャモンの日々が、いきなりマトモになってしまった。
まず第一に、ガメ、朝ご飯つくってね、わたしベッドで食べたい。
はいはい。
ガメ、買い物にいくから荷物もちにつきあってね。
はいはい。
ガメ、ちょっと上の棚の帽子とるから、そこに四つん這いになってスツールの代わりしてね。
はいはい。
ガメ、お馬。
はいはい。

とゆって、モニのやってほしいことをやってるうちに一日あらかた過ぎてしまう。
自分でやりたいことを思い出す必要がないので、はなはだしく楽である。
第一、自分の人生が「ふたりのもの」になったので、ずっと空気が澱んでいた部屋の窓が開いた、というか、突然、魂が解放されてしまった、というか、自分の一生から閉塞的なものが一掃されてしまった。

普通の意味だけでない、わしが家の特殊な取り決めもあって、むかしは、あれほど、きゃあああー、と思っていた「30歳になる日」が、どーでもいいや、テキトーでいいやテキトーで、になりつつある最大の理由であるよーです。

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8 Responses to 30歳の方向に歩く

  1. odakin says:

    『人間の一生には「安全」というものはない。保障を求めるな』
    『失敗しないような人間は見込みがない』
    『将来を予測してはならぬ、何が起きても大丈夫なように自分をつくっておきなさい』
    至玉の言葉ですね。素晴らしい御両親。

    (下世話な好奇心だが「わしが家の特殊な取り決め」知りたいお。)

    • よいおとーさんのオダキンどの、

      >至玉の言葉ですね。素晴らしい御両親。

      自分達は楽勝な人生の向こう側に辿り着いたからって、好きなことゆってんじゃねーよ、
      と思いますが、親などはコドモなのでやむをえない。
      成熟したオトナである息子のほうで我慢してやるしかなかるべし、と思って耐えていたのですな。

      >下世話な好奇心だが「わしが家の特殊な取り決め」知りたいお

      わしも、nosyさんなので、知りたい。
      でも内緒。
      ケチなのよ。

      化け猫博士が「ケツの穴の小さいやつ」とゆっていたそうだが(^^)
      そんな神様相手にさんざんオカマの相手をしてしまった結果オムツがいりそうな「ケツの穴」になんかなりたくないもんね。

      聖職者て、教会のなかで、そんなことやってたのか。
      お下品だわ、と思います。

  2. Akira says:

    うちのモニさんも来週29歳になります。同い歳ですね(^^;
    今から誕生日の出費の心配をしてます。

    >人間の一生には「安全」というものはない
    唸りますな。。 早速今朝の入院患者さんの御家族に話すときに脳裏を横切ったので使わせて貰いましたm(__)m

    >英語人一般のセーシュンであると思います。
    これを読んで『成る程。。』と思い出しました。学生時代に南米に行った折、単身バックパック下げて縦横無尽に旅行してそうな欧米人は、そりゃあもう軽装でね、心も軽そうであった。

    >身体がおおきく
    何センチあるのですか? 2mくらい??(^^) 以前エールフランスでパリから成田に帰って来た際、エコノミ席の3列シート窓側がニュージーランドの男性で、そおりゃあ〜もう大きなガタイを笑いながら「へし折って」入り込んでました。何か緊急脱出ポッドに入るみたいで気の毒になり、たぶんオシッコ我慢してるだろな〜と思い、うちのモニさんが気遣ってました。

    日本人も大きくなったと言われてるけど、一説に欧米人が日本人さして「BigMac世代」って言っていて、牛に与えた成長ホルモンで日本人がデカクなってるって、、ホルモンはアミノ酸で分解後なので関係ある訳も無いからアホ臭い話なんだけど、急激にデカクなった日本人をアメリカ人が何とか理由付けしたくて考えた小話が笑えます。まあデカイといったって骨格や筋肉は相変わらずで胴が伸びてるだけなんだけどね(^^;
    都内の某大学ダグビー部ではデカクなる為に「ビッグマック食えばでかくなるゾ!」って練習合間に食ってたらしいです(アホくさ)しっかしラグビーは相変わらず弱い。

    >そこに四つん這いになって
    目の前に現れた時は一筋の光を発する天使でも(今も天使は天使なんですが。。汗)、現在は火炎が飛んで来て黒こげに成っちゃうことが有るのは仕方の無いことですね。。。

    遅ればせながらガメさんの誕生日に乾杯!

    • AKIRAさん、

      >今から誕生日の出費の心配をしてます。

      ちゃんと会うのだな。よかった。

      >欧米人は、そりゃあもう軽装でね、心も軽そうであった。

      あれらは皆白痴なので気をつけたほうがよいのだとゆわれている。(わしのような知的で分別があって温和なオトナの青年は例外なのね)

      >何センチあるのですか? 2mくらい??

      ずっっっと、186センチだとかおもっていたが2mだった(^^) 1フッとの定義を間違っておったよーだ。
      フランス人の陰謀と思います。

      >牛に与えた成長ホルモンで日本人がデカクなってる

      真正アホですのい。

      >急激にデカクなった日本人をアメリカ人が何とか理由付けしたくて

      いま見てみただけでは見つからなかったが、1998年だかのオクスフォード大学のレポートがあるはずです。
      日本の人は栄養状態がよければ、東アジア人のなかでは最も背が高くなる遺伝子的可能性がある、とかちゅうやつね。

      戦前の日系ハワイ人についての論文もあるはずでごんす。

      >しっかしラグビーは相変わらず弱い。

      学閥抗争のせいだと、わが大親友のjosicoはんがゆっておった。

      >遅ればせながらガメさんの誕生日に乾杯!

      12月だったんですけど(^^)
      さんきゅ。

      モニさんによろしく、とモニさんがゆっておる(^^)

  3. Akira says:

    こんちわ〜 今日はカミさんの誕生日でござる。

    >ちゃんと会うのだな。よかった。

    貴君は「ひょえーーー ダメじゃん?!」と思うだろうが、内のモニさんは日本に今居るんじゃヨ。。。
    諸事情あり、現在策を労しているところなのです。
    今日は妻にCharles Aznavourの「She」でも唄ってしんぜようと思っちょります(^^) ガメさんはモニさんに捧げるならどういう歌が好きどすか?

  4. Akiraさま、

    >こんちわ〜 今日はカミさんの誕生日でござる。

    誕生日、おめでとうございます。
    モニさんからも、おめでとうと伝えてください、ということでした。

    >貴君は「ひょえーーー ダメじゃん?!」と思うだろうが、内のモニさんは日本に今居るんじゃヨ。。。

    ダメダメダメじゃん。

    >ガメさんはモニさんに捧げるならどういう歌が好きどすか?

    El corazon (^^)

  5. Akira says:

    >ほんちゃん「トルコライス」
    いつも美味そうな朝ご飯フォトをアリガトウ(^^)
    以前、ガメさんのカメラは「パッ」と撮れるものを、と書いてあったけど、日本て最近、一眼レフをチッコクすんのに心血注いでるみたいですhttp://www.nikon-image.com/products/camera/acil/body/nikon1_j1/
    利休曰く小さい者を愛でる文化か、、
    その内「卓上原発」もできるんじゃろかー

    >2mだった(^^)
    余談だが、孔子って2m以上背があったらしいね。達観できる要因なのかな?

    >El corazon (^^)
    こりゃあ〜またBésame muchoな濃厚ワインですね〜(@@)
    やっぱり会社とお家がスペインにあるからに関わらずスペイン語に惹かれるの? 内の奥さんもスペイン語とフランス語が特に好きみたいです。

    >モニさんからも、おめでとう
     Merci beaucoup! 御体お大事に!

    • Akiraどの、

      >その内「卓上原発」もできるんじゃろかー

      一家に一台、卓上原発! 台風・停電こわくない!
      てのひらに太陽を、ってポピュリストジジイがつくった歌は、やっぱりポータブル核融合炉の歌だったんですのい。

      きっとそーだと、おもっていた。

      >余談だが、孔子って2m以上背があったらしいね

      ありゃっ?わしが股間をなでてくると学問ができるよーになるとゆわれて欺された湯島の聖堂の孔子さまは実寸かな?
      あの大きさのへんなヒゲ生やしたおっさんが、ぬっ、とでてきたら、そりゃみんないきなり行儀よくなりますのい。

      >こりゃあ〜またBésame muchoな濃厚ワインですね〜

      1回ブログ記事のなかで日本語に訳してみたら、
      歌詞が「ぴんから兄弟」の「女の操」と瓜二つだった(^^;)
      スペイン人て、ド演歌の世界を生きてるんですのお。

      >やっぱり会社とお家がスペインにあるからに関わらずスペイン語に惹かれるの?

      いやスペイン語おぼえようと思って会社の機能をスペインに…あっ…

      スペイン語にひかれるのは、スペインは食べ物と飲み物がうまくて安くて地中海沿岸が欧州一綺麗だから、ですのい。

      >内の奥さんもスペイン語とフランス語が特に好きみたいです。

      モニさんが好きなのはフランス語だけですじゃ(^^)
      残りは、ほぼ言語扱いしてないよーな気がする。

コメントをここに書いてね書いてね

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