ピザっ!


「冷えたピザが好きですねん」というとぎょっとした顔をする人がいるが、わしは好物です。
おいしいのよ。
現にいまこうやって書いているときも昨日ツイッタでだらしなくだべっておったら日本では同じものが3100円すると判明した300円のドミノスのピザを食べておる。
朝ご飯です。

ピザ、というものはわしにとってはどういう食べ物であったかというと、子供の時でいうと二ヶ月に一回くらい食べてもいいことになっている「悪い食べ物」「いけないもの」「禁断の果実」だった。
よーし、今日はプロジェクタのスクリーンを下ろして、本格的に怖い映画みるぞお、ポルターガイストでひいひい泣いてくれるわ、というような場合、妹とわしは、じっとかーちゃんの様子をうかがう。
ふたりでこそこそ相談する。
おもいきって訊いてみよう、と衆議一決すると、
たいていは妹が大使として派遣されて、
「ピザを食べてもいいですか?」と訊く。
妹が、それで一生の楽(らく)をつくっている、内面とは何のゆかりもない、わが妹ながら純真無垢な感じがする、天使のような笑顔を浮かべてもどってくると、わしも一緒に「いええええーい」
「極悪ピザ、ばんざあーい」と歓喜する。
カウチの上で跳ねます。

普段はコカコーラなど飲んだら座敷牢にいれられてしまうが、ピザを食べるときだけは飲んでもいいことになっていた。

イタリアはマジなピザがうまい国で、あたりまえだが、ドミノスとは違う食べ物です。
マルガリータ。
日本でもおいしいところがたくさんあるが、イタリアは、桁がふたつくらい違ってうまい。
都会の料理屋ではいちばん安い食べ物でもあって、テーブルとテーブルがものすごく近い、ガイドブックに載らない、でも町では有名な「おいしいピザ屋」で6ユーロ(630円)くらいと思う。
もちろんソースによるがパスタの半分くらいの値段。

わしが大好きな某村のピザ屋は、バジルもトマトも庭でとれたものを使う。
頼めばピザの上にのっけてくれる卵も裏庭で猫といつもにらみあいを続けている鶏一家のものである。
ソーセージも何もそういう調子の地元のものなので、ものすごくうまい。

イタリア人は食べ物に対する考え方が日本人とよく似ているところがある。
素材が新鮮でうまければ、それがいっちゃんいーだろー、という考えがそれで、イノシシのステーキでも仔牛でも、オリーブオイルで焼いてそれだけで食べさせたりするのが、うまい。
ピザも、同じ思想に拠っているもののようであって、だから、シンプルなマルガリータがひどくおいしいのだと思われる。

パスタは「アルデンテ」という考えがないので無茶苦茶まずいが、ピザはスペインもうまい。ツナとかタコとか訳のわからねーものが載ってるピザが特にうまいよーだ。

わしのバルセロナのアパートのすぐそばには、途方もなくうまい「スペイン式ピザ」の店があって、この店はたいへん有害である。
バルセロナにはカタロニアやスペインの他の地方のおいしい店が、これでもかこれでもかとあるのに、食べ物を考えるのがメンドクサイと、ついそこのクソうまいヘンタイピザを食べてしまう。

いつもひとが行列しているが、さばくのが速いので、そんなに待つわけではない。
食べ物のために行列するのが嫌いなわしでも、並ぶのが嫌ではありません。

便宜上、「並ぶ」と書いたが、実はスペイン人は並ばない。
なんだか、ぐじゃっ、とひとがいるだけだが、それがスペイン式の行列で、誰が誰のあとか客も店も厳密におぼえている。
観光客がそれと気づかず、先に割り込んで注文でもした日には、大顰蹙もいいところであって、店内が阿鼻叫喚の様相を呈する。
えええー、だって、そんなん店のどこにも書いてないからわかんねーじゃん、というひとがいそうな気がするが、目の前のひとびとを30秒も観察すれば頭が鶏でもわかることで、そういうことを当然と納得することを「文明」といいます。
「並んで下さい」というような張り紙は、したがって、その社会には文明が存在しないことを示している。

イタリア料理にマルガリータがあって、ピザハットにグリージイでべったべったな肉肉したピザがあるのだから、そのあいだには両者をまたぐミッシングリンクがあるのであろう、と考えるのがおとなの分別というものだが、実際、ミッシングリンクは現存していて、その店はブルックリンにある。
名前をど忘れしちったが、マンハッタンからブルックリン橋をぶらぶら歩いて行って、下りてすぐのところにある。
店の壁に、「アメリカピザ発祥の店」と麗々しく書いてある。
フランク・シナトラやマリリン・モンローがこっちをむいてニッカリ笑っている写真が飾ってあります。
えっ?おれの本に書いてある発祥と違うって?
そ。わしも他の店で、「元祖アメリカンピザ」って書いてあるの見たことあるけどね。
上野のぽんたのとんかつのようなものである、と思って、そーか、いろいろな元祖があるのだな、と納得するのが成熟して温和なオトナの態度というものであると思われる。

マンハッタンを歩いていると、どこにでもここにでもピザ屋がある。
1ドルピザのチェーンもあれば、一枚が30ドルというようなクソ高い犯罪的な値段の「高級ピザ屋」もある。
わしはマンハッタンのアパートにいるときは、BleeckerのJohn’s Pizzeria

http://www.yelp.com/biz/johns-pizzeria-new-york-4
という店まで歩いて行ってテークアウェイのピザをもって帰ってくるが、この店も豪勢な支店をだしたりして、崩壊の日が近いので、来年もどったときには違う店にいくことになるだろーか、と思う。


第一、特殊寿状況によって状況が変化したので、このブログ記事をずっと読んでくれている人にはお馴染みのビレッジのボロアパートではなくて、Upper East Sideにあるモニの大豪華高級骨董品大盛りの、ゴージャスアパートメントになってしまうかもしれぬ。
悲しいが、齢をかさねるというものは、そーゆーものであって、オカネモチになってゆくのに反比例してコーフンとスリルは去ってゆくもののようである。

フィレンツェというような町では、幸福な若いカップルを見るには、週末の夜、川を越えた下町の、いくつかある地元のひとびとに人気のあるピザ屋を覗いてみるとよい。
6ユーロのピザをあいだにはさんで、おでこがくっつきそうなほど顔を近付けあって若い、オカネのなさそーな、無茶苦茶幸せそうなカップルがたくさんいる。
トスカナのあの無茶苦茶うらやましいB.Y.O.、近所のワイン屋から空き瓶をもっていっていろいろなヴィンヤードから来ている樽から注いでもらう、若いけど素性のよいワインをもってきて、テーブルの上においてあります。
どちらのアパートに一緒に住むか、相談している。
浮いたお金を貯金しようね、と女の子がささやいている。
子供もつくれたらいいね。
幸福に暮らすのにオカネなんか、そんなにいらないよね。
健康で、毎日が楽しければ、それでいいみたい。

モニを待っているテーブルで知らん顔をして半分くらいしか判らないイタリア語を頭のなかで明滅させているわしは、なにがなし、ほろりとしてしまう。
健康に悪くても、やっぱりピザはいいな、とわけのわからないことを考えて納得するのです。

(いま見ると、他の写真を撮ったりしたらオオバカモノの暗黙の約契があったりする料理屋と違ってピザ屋などは気楽なものなので、ピザは大量に写真がある。ほんで、少しおおめに写真をのっけることにしました。
1番目の写真は「ピデ」という名前のトルコのピザ。奥のおっちゃんはピザを切っているが神速でごんす。

2番目が、前にも載っけたことがあるよーな気がするが、文中にある「わしの好きなピザ屋(イタリア某村)のきのこのピザ。
3番目のナイフとフォークにはさまれてるのがバルセロナのアパートの近くの店のツナピザ、
下がタコのピザ。

わしが愛好するジョンズのピザの箱と中身。
隣のアップルの電源や右上のボールポイントペンと較べるといかに巨大か判るであろう。
アメリカのピザは一般に欧州のものに較べるとバカでかい。

その下にずらずらずらと、7枚並んでいる一番上はバルセロナのわし近所カマンベール。
2番目はコモ湖でわしがいちばん好きなピザ屋のピザ。
このチビトマトが味が濃くて甘くて、すごおおおくおいしいんでごんす。
次はミッドタウンでときどき行くピザ店のランチピザだな、これは。
次はチェルシーのマフィアがやっている噂がある店。
あんましおいしくない。
その下の右側が焦げてるのは、わしがよく作るピザ。
下のドウは、インドのロティを使うのね。
次に二枚はカタロニア式のピザで、初めのはフィグ(日本語ど忘れ)とラム、次のがアンチョビとトマト。
小さくてうまいんでがす。
郷土料理屋に行けばあります。
最後は、わし)
(嘘です)
(あたりまえだがや)

(ツイッタで「食べ物の話書いてみれば」というひとがいたが、食べ物の記事は、このブログの右下の検索で「食物図鑑」と入力すると、ずらずらでるだよ)

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2 Responses to ピザっ!

  1. Akira says:

    ガメさん
    本当に美味そうなピザ達が並んでるねーー(TT)
    これ、取り出せたらいいのに。。。泣

    日本では値段も馬鹿みたいに高いし、「釜焼きだ」何て言って高いピザをこれまた有り難がって買う。
    「環七ラーメン現象」じゃないけど長蛇の列に並ぶのも日本人はよくやるね。あれって一つには「空腹が作り出すソース」を日本人が好んでるんじゃないかとも思う。でなきゃあんなに並ぶ意味が分からん。「ご近所に迷惑に成りますのでタバコはご遠慮下さい、大声を出さないで下さい」とまで注意書きがある。格好ワリュイの一言です。

    値段も去ることながら、保存料如何ではなく安全な素材が無くなってしまった。
    日本人は職人芸には秀でているのか毎年イタリアのピザコンクールで優勝している。バリスタも日本人女性から世界一が出たそうだ。オイラの従姉妹は東京のSALVATOREというイタリア人の店で修行した後、いま渋谷でイタリアンバールをやっていて、魚は彼の故郷の房総の鮮魚を毎朝仕入れている。開高健のOPA VILLAGEそのものなんです。
    しかし汚染しているかも知れないフィッシュを何の疑いも無く客に提供している。ガメさんと同い歳くらいの親しい従兄弟に「魚はヤバイからお前店を畳めよ」とはオイラは言えへん。。
    昼はオフィスから白蟻みたいにピザを食い散らかしに客が出てくる。確かに安くて美味しいピザなんです。

    ガメさん、ピザの生地の厚さってイタリアの地方とか、またスペインで違いがあるのかな?
    従姉妹は「2号店を鴨川に出そうと思ってるんだ〜 へへっ」
    と笑顔を見せる。切ないです。

  2. Akiraさま、

    >本当に美味そうなピザ達が並んでるねーー(TT)

    無慈悲に言い募ると、ほんとうにおいしいんですのい(^^)
    奥さんは知っているかもしれないが、スペインやイタリアでは何も書いてなくてもピザは普通
    石窯で、別にみせびらかすこともなく裏の台所でぐつーに石窯で焼いている。

    >「環七ラーメン現象」じゃないけど長蛇の列に並ぶのも日本人はよくやるね。

    いっかい「日本人もアメリカ人みたく食べ物に並ぶね」とゆったら、「ホブソンアイスクリームの開店からの新風俗と思う」といってました。70年代かららしい。

    >「ご近所に迷惑に成りますのでタバコはご遠慮下さい、大声を出さないで下さい」

    (^^) それはすごくカッコワルイですのい。

    >しかし汚染しているかも知れないフィッシュを何の疑いも無く客に提供している。

    わしが懇意のフランス料理屋のシェフは「きのこがおいしいから東京に寄れば」と書いて寄越した。
    うーむ、と思いました。

    >確かに安くて美味しいピザなんです。

    日本はイタリア料理の水準高い。
    問題は、ロボット奴隷みたいなしゃっちょこばったサービスの店があることだけで、
    それも店員をイタリアに派遣するような店は、イタリア式のサービスで気持ちいいすのい。

    >ピザの生地の厚さってイタリアの地方とか、またスペインで違いがあるのかな?

    イタリアはどこも同じと憶えているが、アメリカみたいに違いがあるのかな?
    判りません。
    今度イタリア人にあったら訊いてみます。

    スペインのピザは(特に上にのっけるものにおいて)チョーええかげんで、タコとイモとか平気。
    イタリアの人は「あれのどこがピザじゃ」とゆって怒っておる。
    だから生地とかも、すげーいいかげんです。

    バルセロナでいちばん儲かってるイタリア料理屋はピザも売り物のひとつだが、ニューヨークで生まれて育った(イタリア系)アメリカ人だし(^^;)

    スペインの’ひとって、スペイン料理以外、ほとんど興味ないようなのでもあります。

    >切ないです。

    福島事故について頭をまとめたかったので理解できる範囲の医学的な知識もアップデートしました。
    あんまり日本語のものでいろいろ言いたくありませんが、これでなんで「安全」とおもうかなあー、と考えて暗い気持ちになりました。

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