オカネの値札

ニュージーランドの紙幣
http://www.nztripadvisor.com/new-zealand-currency.html
はプラスチックの窓がついているチョーへんなお札(さつ)であって、アメリカ人や日本人が初めて見ると、なんじゃこれは、ふざけてやっておるのか、と思うのがふつーであると思われる。
わしがガキンチョのときは、いまよりも遙かにカラフルで明るい彩色の紙幣で、北海に面した陰鬱でひねくれた国からニュージーランドまで2万キロの旅をしてやってくるのは毎年夏で、ニュージーランドはゆいいつの取り柄の夏は天国で、なんとなく極楽ぽいニュージーランドと明るい彩色の極楽紙幣とがマッチしていて、可笑しかったのをおぼえている。
ちゃんとおぼえていないが、その頃のお札に較べると、プラスチックの窓も小さくなったよーな気がして、それには印刷技術がやや向上したことが関係があるだろう。

ニュージーランドの紙幣で最も使われるのは多分20ドル(1200円)札で、50ドル(3000円)札は2万円札、という感じになる。
100ドル(6000円)札も存在するが、これはチョー高額紙幣とみなされるので、カシノやなんかのギャンブラー紙幣で、堅気の衆は使いません。

20ドル札は最近ではわしガキ時代の「デイリー」という麗しい呼称を捨てて「スパレット」とかいう酢を飲みすぎて口をすぼめているようなインチキな名前で呼ぶことが多い新聞や駄菓子や牛乳なんかを売っている、あちこちの角にある最も小規模な小売店で支払いに差し出すのに考えたりためらったりする必要はないが、50ドル札は、「50ドル札でもいーだろーか?」と訊いて差し出す。
治安の悪い町だと受け取るほうも緊張しておる。
まだ贋札チェッカーが普及するところまではいかないので、北朝鮮の輸出先リストには載っていないのであると思われる。
CBDに行けば、マーカーでチェックしてはいる。

New Worldというのは、ニュージーランド資本の全国展開スーパーマーケットのうち、「品物がよくて高いほう」にあたるが、ニュージーランドに住むのにいくらくらいかかるかは、各店の広告チラシを見れば想像がつく。
モニとわしの家から最も近いスーパーマーケットは「New World Remuera」という店だが、
http://www.newworld.co.nz/upper-north-island/auckland/remuera/
この右の「Open the virtual mailer」というリンクをクリックすると、「今週のチラシ」が見られてニュージーランド人が生活してゆくのにいくらくらいオカネを使っているかの一端が覗き見できるのだとゆわれている。

見てみるとバターが500グラムで3ドル50セントというから210円です。
コカコーラの2.25リットル瓶が2本で5ドル(300円)だが、このあいだキンドルの電源を買いに行ったカウントダウン(オーストラリア資本のスーパーマーケット)では、同じものが2本で3ドル(180円)だったので、負けておる、というか、店によって随分値段が違う。

食パンなどはプライベートブランドの白くてへろへろのクソ食パンは二斤で2ドル50セント(150円)くらい。逆に、重さからして手に持てばよろめくほど重い、ぎっしりした感じのVogelは二斤でたしか4ドル50セント(270円)だったと思う。

ワインのようなもので言えば、ニュージーランド人が最も好むのは9.99ドルワインであると思うが、BIN555という日本でも売っていたワインが9.99ドル(600円)です。
今見ると、このBIN555は日本での「希望小売価格」が1943円で、安売りワイン店では1300円くらいで売っているよーである。軽井沢のツルヤスーパーで1500円、広尾のナショナルスーパーでも1500円くらいで売っていたよーな気がする。

PAK’nSAVE
http://www.paknsave.co.nz/
は、New Worldと並ぶニュージーランド資本のスーパーマーケットだが、こっちはNew Worldよりも量が多くて安い。
Countdownはオーストラリア資本で、品揃えの質としてはちょうどニュージーランド資本ふたつの間くらい。
キンドル本体と周辺機器、あるいは(わしの好物の)ベジチップはこっちのほうにしか売っていないので、おいてあるものもやや異なるよーである。

日本には紀伊國屋スーパーマーケットという鎌倉で言えばほぼ人の虚栄心につけこむだけで商売しているスーパーマーケットもあるが、そこに集うオバチャリの買い物かごにグッチのバッグをいれてよく訳のわからなない肘までのレースの手袋をつけた、ブ、キ、ミなおばちゃんたちのことが思い出されても、そういうくだらない悪態をつくのをやめて、普通に通常のスーパーマーケットよりも「高級な」ものを売っているということになっているスーパーマーケットにはfarro
http://www.farrofresh.co.nz/
とnosh
http://www.noshfoodmarket.com/
があるが、noshのほうが全然よい。
farroは高級風であるだけで店員もたいした品物への興味もなしにやっているのに対してnoshはチーズ売り場の店員はチーズが大好きで知識も豊富、客が少なければ30分くらいも話して遊べるくらいのひとが揃っている。肉売り場ではハラルとニュージーランド式の屠殺の違いを詳細に話すことが出来、中国では豚の活けじめをするので、どんなふうに屠殺するかというようなことを目を爛々と輝かせて聴いておる(^^)
自然、わしはnoshが好きで、小さな人が生活に登場してからいよいよ日常の買い物というようなものにはいかなくなってしまったが、チャンスがあって買い物をさせてもらえるときには、このnoshに行く。欧州のあちこちの国の様々なチーズやお菓子、あるいはわしの好みにあわせて特別に切ってもらったステーキ肉やなんかを抱えてヘラヘラしながら帰ってくる。

オリーブオイルやディジョンマスタード、マカダミアナッツ・カシューナッツのように大量に消費するものは、「gilmours」
https://www.gilmours.co.nz/home.html
という店へ行って買う。
こっちは家を手伝ってくれる人びとが行くだけで、モニやわしはあんまり出かけないが、このあいだ、あんまり「甘い物を食べるとビョーキになる」とかで、わしが大好きなジャンクチョコレートを規制されて悲しくなってきたので、こっそりピーナッツスラブ
http://productsfromnz.com/browse_1766
30個入りパックを買ってきた。
デイリー人などは、要するにこの店に「仕入れ」に来て売っているだけなので、ふつーの店で買うより三割がところ安い。
トマトソースやサラダオイルの10リットル缶、ちゅうようなものを買うのに使います。

そうやってスーパーマーケットに買い物に行くと、ショッピングカートいっぱいにものを買って、80ドル(4800円)くらいのものだろう。
ニュージーランドの一世帯あたりの年間収入は統計の平均が30000ドル(180万円)、普通の生活実感に照らすと50000ドル(300万円)程度であると思われるが、政府の「一週間いくらあれば楽しく暮らせるとおもうか」という質問への回答で最も多かったのは「200ドル」(12000円)だった。特に注釈はなかったが、これには「家賃」は含まれている筈はなくて、代表的な「中流」住宅地のノースショア2ベッドルームのスタンドアロンハウス(但しタウンハウス)100平方メートルで週450ドル、リミュエラの4ベッドルーム賃貸で週800ドル(5万円)、2ベッドルームのアパートでも300ドルはとるから、いまでは子供がひとりいる夫婦は、週650ドル、月16万円も生活費がかかるわけである。

ニュージーランドにアメリカや日本から移住してくると、収入が半分から5分の1になるのが普通で、運の悪い人はいきなり職業がなくなる。
それを考えると、この頃はニュージーランドの生活費は高すぎるよねー、と考えます。

日本に遠征していたときのことを思い出すと、ニュージーランドと日本の金銭上の生活の違いは、まず第一に日本は「よく訳がわからないままなくなるオカネ」が多いことだった。ガイジンどもに訊いてみると、みな感想は同じで、日本の家には透明の術を習得したネズミがいて夜中に財布のなかのオカネをひいて天井裏にもっていってしまうもののよーである。
よく思い出してみると、日本では意表をつくような、思いがけないところで異様な課金があるので、たとえば銀行のATM手終料が210円なんちゅう、詐○のような金額であることを発見したときには、ぶっくらこいてしまった。
電気会社も100Vなのに60Aという、ニュージーランドなら電気ファンヒーター3つでいきなりキャパシティ満杯ちゅうような、情けない、乾電池つなげて送電してるんちゃうかというようなチョー貧弱な電気インフラのために、1万円もとる。
電気ついでに文句を言うと、デスクトップの調子が不安定なので電源を疑って測ってみたら90Vしか電圧がなかった(^^;) どーも、あの「100V」は「公称」であるよーだ。

日本で毎日オカネを使っていてイヤーな感じになるのは、だんだん「この国って必要なものほど高いんちゃうか」という気がしてくることで、パンや牛乳やバタが無茶苦茶高い。「そんなのは趣味の問題でしょーが」とゆわれるであろうと予測するが、しかも、わしはむかしむかしのある日、日本の「食パンみたいなもの」に我慢するのが嫌になって、鎌倉でゆいいつまともと思われるパンを買って毎日食べることにしたことがあったが、これが6切れで800円とかいう途方もない値段で、ついでに牛乳のほうも水っぽいのが嫌で「まともな牛乳にすんねん」と決めたら、500ミリリットルで1000円なる、ぎゃあな値段で、ハムは100グラム1000円、…と、ふつーの国なら、どこでもやれる生活が日本では特殊な生活なのかなんなのか、無茶苦茶に高くつくのが困った。

その代わり、日本人が暮らすように暮らせば、これはまた唖然とするくらい安いものもあってニューヨークなら18ドルする天ぷら蕎麦
http://www.sobaya-nyc.com/images/lunch_menu_1109.pdf (PDF注意)
が、小諸蕎麦なら460円(5ドル)味の程度も同じよーなものである。

わしはガキわしのとき義理叔父と従兄弟と3人で入った秋葉原の「六文そば」で、天ぷら蕎麦とお稲荷さんを食べて、あまりの安さにカンドーしたことがあったが、そのときに自分が「日本はぶわっか高い国だ」という現実の理由のひとつが、西洋式の暮らしをしているからなのね、と翻然と悟ったりした。

そういう事情やあるいは紅茶のいばり(意味を訊いてはいけません)のごときクソ紅茶で500円もとるかと思えば、鮨屋のこの世のものとは思えないほど、というか、そもそも緑茶なのにこんなに生臭くないのがあるのか、という粉茶がただで、あるいはあるいは免許をとるにでもなんにでも「収入印紙」という訳のわからん詐欺みたいな税金があったり、しかもそれがとんでもない高額であって、キレたわしは担当役人のおっちゃんと延々と口論したりして、不思議なことがいろいろあったが、総合的な印象は、日本はなぜかオカネの「使いで」がない国で、というのは論理的にいかにもヘンだが、実感としては、オカネがすぐなくなってしまう不思議の国で、その感覚は日本にいるあいだじゅうつきまとって離れなかった。

一個づつ考えてみると、タクシーが高いのだろう、そーゆえばレストランでは「飲み物」が常軌を逸して高いよね、と判ることはあるが、ロンドン名物「遊べるもんなら、遊んでみろ、このビンボニンめが」というカネモチしか端からわしは相手にしとらんけん、な剣呑な態度ともまた異なって、財布のなかに小悪魔が潜んでいてお札を一枚づつこっそり抜きとっているとでもいうような、よく判らないオカネのなくなりかたをした。

オカネ自体にも無論価値があるが、日本のオカネは22年に及ぶ円高なのに肝腎の日本国内では価値が低いように感じられる。たとえば散歩にでかけて、本屋に寄って、どりゃ、客があんまりいないうどんがうまい店で、のんびりうどんを食って、本でも読むか、と考えた場合、つまらん本はほぼ無条件に安くても自分が読みたい百閒先生の「御馳走帖」は文庫でも900円もする。うまいうどんが安い店も、客があまりいなくてのんびりできるうどんをだす店で安い店もあるが、うまいうどんをのんびり食おうと思うと、どうかすると鍋焼きうどんで2000円、などとゆわれることすらある。
コーヒーも同じで、金輪際足を向けたくないような体裁のコーヒーバーなら、たしか日本でも200円くらいでコーヒーが飲めたと思うが、少しでもくつろごうと思えば、600円は必要だったはずである。

嫌ないいかたをすると日本では「必要なもの」「人間らしい時間をもつためのもの」は等し並みに高かった。それも常軌を逸した値段で、たとえばオークランドの浜辺で外にもテーブルがあるコーヒー屋で、友達とふたりで、遠くの島々を眺めながら、のんびりお互いの悪口をいいあって遊ぶとき、コーヒーは(わしも含めて、なんでニュージーランドのコーヒーはこんなに高くなったんじゃ、とぶーたれているが)4ドル(240円)で、これ以上高いコーヒーは多分誰も飲みに来ないのではないかと思われる。
アルコールになると、もっと差は激しくて、いちいち論う気はしないが、ワインだけでも述べると、日本ではレストランがワインの値段を平然と小売の倍にしてしまう。
3倍にするところもたくさんある。
稀にBYOがあって、えらいでねーか、と感心すると、「コーケッジおひとり1500円いただきます」というような地獄の門番のようなことをいってすましている。

その国を成立させている思想や常識というものは時間の使い方と生活空間の作り方に最も顕著に出ると思うが、その国の国民がどの程度真剣に個人として幸福になろうと願っているかは、「オカネの使いで」に出るものなのかもしれません。
一万円には一万円の価値があるのでなければならないが、商業主義の側のさまざまな不正直や税金をとりたてる仕組みを(不可視にしようとして)工夫しすぎる政府によって、日本では(ヘンないい方だが)一万円がPCパーツ屋では一万円なのに、レストランでは4000円に目減りする、というようなことがあるよーだ。
目減りする場所が、どれもこれも「寛ぎのための場所」なので、なんだか社会の空気が猛々しくなる、ということもあるのかなあー、と考えました。

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One Response to オカネの値札

  1. ミリン says:

    ガメさん

    お久ぶりです、ミリンです。

    これから変わっていく、というより変えていかなければいけない所だと思っています。寛ぎのための空間。明らかにおかしい、というより無理だなと体が勝手に反応してしまっている状態です。私もコーヒーが好きでよく喫茶店に行きますが、キツイ。何か空気に重量感があるような、もちろん換気が悪いわけではありません。たぶん。結局、外を眺めながら家でコーヒーを飲み直したりします。

    全然関係ありませんが、先日のブログにありましたアルファの記事、大変参考になりました。車ほしいなぁと考えていた所でした。アルファ147、プジョー306、心の本命シトロエン Xantia。ハイドロは経験しておきたい。といいつつ、案外カローラに乗っていたらすいません。いずれも中古ですが。

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