A Big Swell

金正恩が延坪島を砲撃したとき、世界中の「東アジアウォッチャー」が「あっ」と思ったはずである。
あ、と思ったのはなぜかというと、ウォッチャーであるのに「あっ」と思っていてはマヌケだが、理由があるにはあって、総書記に就任早々延坪島を砲撃するということには、
「これからは軍事恫喝路線は収拾して経済を再建してゆく」というメッセージがこめられていたからだった。

そーだったのか、とウォッチャー木村たちがぶっくらこいているころ、青瓦台では李明博たちが顔をしかめていたに違いない。
こちらはなぜ顔をしかめていたかというと、せっかくいろいろにさまざまにおためごかしを述べながら、「隣国として支援しようとしてもしきれなかった北朝鮮を一身を投げ出して、巨大な経済的出費をものともせずに、同胞を救いたい一心でついに半島統一の形で人道的統一を行う韓国」という図式をつくる準備をしてきたのに、この時点で経済路線に転換されると「中国の影響下にある北朝鮮」が固定してしまって韓国には良いことはなにもなくなってしまうからです。
それでは北朝鮮が中国傘下の子会社みたいな国になってしまう。
青瓦台は慌てて朴正煕の娘、朴槿恵に連絡をとったに違いない。
「このままでは、われわれはアメリカの影響下にとり残されてしまう」

竹島上陸はこの頃に決まったに違いないので、任期満了で次を考える必要がない李明博が、自ら竹島に上陸することで、アメリカ主導型の米日韓の安全保障の枠組みなんか、もうやってられるかよ、という韓国からアメリカへの強烈なメッセージだった。

むかし、ヒラリー・クリントンからニュージーランドへの不思議なメッセージが届いたことについて書いたが
https://gamayauber1001.wordpress.com/2010/01/24/ヒラリー・クリントンの奇妙な提案/

そっちがそういう考えなら、わしらにも考えがあるというか、韓国人は、アメリカ人たちに対して「やる気あんのかよ」と思っていたところなので、もう、なんだか防御線を後退させて、あとは遊撃的に防御するからダイジョブだとかいかにも眉唾なことを述べているアメリカに頼りきるのはやめて、アメリカ主導だけでやるのはヤンピだ、という韓国の歴史的意思表示が李明博の竹島上陸だった。

韓国の最大の悩みの種は、もともと、この「やる気が全然ないアメリカ」で、IMFを通してアメリカとの強い結びつきで経済を復興してきた韓国は、経済の復調とともに、しかし、急速に中国との直截的な関係を重視するようになってきていた。

韓国の経済の実態はサムソンそのものだという笑い話があるが、そうそう笑ってだけいてよい話ではなくて、サムソンという会社はもともと日本型の財閥型経済であり社会だった韓国そのものを根本から変えてしまった。
一方でサムソンは言わずと知れた日本の電気会社群相手に完勝した先端情報家電の会社で、英語世界では洗濯機や冷蔵庫も売っているが、ほんとうの商売はスマホやLAN対応のプラズマや液晶画面のテレビで、こういう業界の実態を知っていれば簡単にわかるが、台湾や中国本土もひとつの業界をなしていて、この経済世界を通じて韓国は「東アジア圏」をつくろうとしている。
たとえばディジアがノキアから買い取ったQt
http://en.wikipedia.org/wiki/Qt_(framework)
などを共通基盤にする、というようなかっこうでこれからますますリソースの共有化が起こっていくだろう。

中国は中国で、20年前には日本に役割を担ってもらうべ、と想定していたが、最近は台湾や韓国のほうが優秀なので、先端技術を吸収して経済のコンプリートセットをつくる相手としても都合がよくて、韓国との距離をぐっと縮めてきていた。
中国と韓国の水面下での接近はアメリカが眉根にしわを寄せるに十分なものだった。
アップルとサムソンの訴訟をめぐる(訴訟そのものではない)やりとりにも、そういう雰囲気がみてとれます。

しかし北朝鮮だけは、あんたにあげるわけにはいかないのさ、という韓国の中国に対するデモンストレーションが竹島上陸だった。
もちろん、それはアメリカと北朝鮮に対するデモンストレーションでもあった。
北朝鮮の「冷静になりなよ」という極端に冷淡なコメントは、そうした政治的利害を忠実に反映している。

中国・韓国・日本の3国には、やたらめたら感情的で、ちょっと火をつけてやれば、「ポンッ」と燃えて集団で喚き廻る頭の弱い、「歩く政治的油紙」みたいなトンマな「愛国人」「自称右翼」がいっぱいいるので有名だが、竹島ならば、このうまく使えれば便利だが、こっちの政治意図をちゃんと読んでくれないので通常は邪魔なだけの「愛国者」たちも、あさっての方角にものごとをうけとって見当違いのあばれかたをしないであろう。

ちょうどヒラリー・クリントンが「捕鯨」「対日戦争の記憶」を暗喩として、太平洋外交の基調底音として響かせながら外交を進めているのと同じように、東アジアにおいては常に「反日」「日帝支配の記憶」は安全なカードだからです。

金正恩が軍幹部とこれみよがしにつるんで、やたら軍を賞めまくって暮らしているのは、半島人であれば、誰にでも一目瞭然、経済振興路線に舵をきって、ここで軍隊にむくれられるとえらいことになるからだが、この経済路線によって、北朝鮮がまるごと懐にころがりこんでくる可能性をつかんだ中国は、金正恩に協力して、軍隊を抑える側にまわっている。
半島のことを一緒に考えて助けてくれる、わしの友達の「よん」さんも経済振興がうまくいくかどうかわからない、とわしの問い合わせのメールに答えていたが、うまくいかない場合は多少あらっぽいことが起こって、半島は韓国主導で統一されることになる。

いずれにしろ、アメリカの影響力排除に、中国・台湾・韓国・北朝鮮の地域全体が動きはじめたことで多少の紛争が起きる可能性が高くなっているよーである。
アメリカは、それによって国防策を変えることはないにしても、日本の「沖縄基地返還」からはじまって、中国が「や、やっぱりまだやる気おおありだったのね」と驚愕させられたオスプレ配備にまで国民的な反対感情を形成する日本に深く失望している。
わりと単純な感情というか、「あんた、同盟者じゃなかったの?」という、そのへんのおばちゃんたちがもちそうな感情であって、こういう感情は解決優先度がとても低いアンノイアンスに過ぎず、政策に影響するわけはなくても、長期的にはかなりの影響力をもつと考えてよい。

尖閣は竹島と別の問題で、この問題は中南海からやってきた問題だが、しかし、旧安全保障の枠組みから新しい安全保障の枠組みに地域が移行する途中で、宙ぶらりんのまま漂っている日本を政治駆け引きの場として利用するにしくはなし、とみなが考えている点では竹島と同時期に自称中国本土人のオチョーシモノたちが上陸したことに必然性がないわけではない。

ここまで書くと「日本は、どうなってるんですかあー?」と思う日本のひともいるだろうが、日本は国内における右翼の衰退以来、アジアとの「絆」を失ってしまっている。
なんだか役所の作文みたいな外交ばかりをしていて、外交的機能不全に陥っているので、この点でも「古く」なってしまっているのでしょう。
ちょうど、江華島事件
http://en.wikipedia.org/wiki/Ganghwa_Island_incident
の頃と半島や大陸との関係が逆になりつつあるような趣になってきている。

竹島や尖閣諸島への日本の政府・マスメディアの反応を眺めたかぎりでは、これが反応なら人民解放軍は「局地なら意外とやれるかな?」と考え込んでいるかも知れず、まきこまれなくてすむ紛争にまきこまれないためには、国民ごと、もう少し目を見開いてしっかり自分の国のまわりを見た方がいいがなあー、たとえば北とかも、と思わないわけにはいかないのです。

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