遠い隣人

小さい人、が現れてからモニやわしが自分で料理する機会はほとんどなくなってしまったが、わしはもともと料理は好きである。
厨房とは別にちっこいキッチンをつくってもらって、簡単に食べたいときはモニとわしのものだけを、ほほいほいとつくって食べる。
サンドイッチがおおいが、「年をとってきたらアジアのものを食べろ」という新しい健康上の格言に順ってアジア料理もつくります。

焼き豚は中国式の蜂蜜をぬったものよりも日本式の酒と醤油とニンニクと生姜のたれにつけたもののほうが「シブイ」ので好きだが、これは簡単につくれる食べ物なので、常備してある、というか、いつも冷蔵庫に用意してある。

作り方は簡単を極めている。
必要なものは

豚のフィレ1本(400gくらい)

醤油
生姜
にんにく

好みで八角、肉桂
唐辛子 はちみつ

1 小さめのジップロックに
醤油:酒=1:1
ねぎ・生姜・にんにく(ねぎはいれなくてもいいと思う)
(にんにくはクローブ(房?)で1−3個、つぶしていれる)
(生姜は適当に切っていれる)
(ねぎは青ネギが余っていればいれる)
とまるのままの豚フィレをいれる

ジップロックを使うと、たれが少なくてすむので、わしみたくケチな人は嬉しいのです。豚フィレ1本をつけこむのにコップの半分のたれですむ。

1を冷蔵庫のなかでほうっぽらかしにして、そのときによって1−3日ほっぽらかしにしておけばよいと思われる。
わし自身は、もっとほうっぽらかしにしていてもヘーキだが、どのくらい放っておいて大丈夫か日数をかぞえてみたことがないからわからん(^^;)

2 食べたくなったらとりだして、豚肉の上に少したれを塗って(あるいはかけて)からクッキングペーパーにくるんで、ちゃんと熱くしたオブンで20分焼く、ほんで、20分したら取り出して今度はクッキングペーパーを開いて10分焼く。

それだけで出来上がりでがす。

うまいんだよお。
わしが好きな数が少ない中華料理のひとつだが、中国人の友達が来たときに老酒のつまみにこれをだしたら、「これ、うまいけど和式だよね」とゆっていたので、中国には、こういう甘くない焼き豚はないのかもしれません。
日本式の煮豚も作ってみたことがあるが、わしはちゃんとローストしたこの日本式焼き豚のほうが好きなよーである。

ニュージーランドには生の「日本麺」と表に書いてある、やたらうまいラーメンの麺があるが、日本ならもっといろいろな麺があるはずで、自分の好きな麺を買ってきて、スープのほうは、めんどくさければチキンストックと醤油だけでも最低限の味のものは出来てしまう。やってみればわかるが、ラーメンなどは能書きが多いだけで、たいして難しくない食べ物だと思う。
(そういうと怒るひとがいっぱいいるのは知っているが)

ラーメンのようにスープに浸かった麺と焼き豚を食べるときには、中国式、あるいはベトナム式に麺のポールとは別皿にしたほうがおいしいよーである。
野菜のようなものはスープにのっけたほうがうまいが、焼き豚や、これもわしがときどきつくるレモングラスをすったソースをかけた鶏の唐揚げみたいものは、別皿のほうがうまい。
普通にただ食べてもおいしいので、というか、わしはだいたいそーするが、焼き豚を切ってマスタードで食べます。
日本のひとなら和辛子だろうが、試してみると良いが、西洋のいろいろなマスタードでもちゃんとあうものはあう。あわないのは全然あわない。
人間と同じです。

わしが住んでいるRemuera
http://en.wikipedia.org/wiki/Remuera
というところは、大きな家がおおい。
ハウィックという中国のひとがたくさん住んでいるところも大きな家が多いが、向こうは部屋数がおおい家が大半であるのに対して、こちらはひとつづつの部屋がでかい、という違いがあるよーです。
リミュエラロードをピークに海に向かって全体がだらだらだらとゆるーい斜面になっておる。
遠くにランギトト
http://en.wikipedia.org/wiki/Rangitoto_Island
がみえます。

おおきな家が多いので、Pファクトリーがいつのまにか出来ていたりする(^^;)
「P」というのはMetamphetamineで、言わずと知れた覚醒剤のことです。
静かな貸家で、でもよく見るといろいろな人間が出入りしている、というようなのは怪しい。
わしが前に住んでいたパーネルの家の近所の首相の家のすぐ近所でも摘発されたことがあるくらいで、高級住宅地をねらって借りるもののよーである。

売春宿ができてしまうこともある。
夜中にドアをノックする音がするので、出てみると、「12番はここですか?」という。
「いえ、この家は22番です」
そーゆー会話が起きるようになると、ははあ、さては12番地に売春宿が出来たな、と考える。

ニュージーランドでは売春はdecriminalizedされている。
日本語では「合法化」と訳されるが、ほんとうは「違法なんだけど罰則はない」という意味です。
売春を違法だということにしておくと、そこにつけこんでやくざが売春婦を支配しはじめる。強制売春をさせられても、強姦されても泣き寝入りになってしまうので、フェミニスト団体が猛烈に運動してdecriminalizationを達成した。

ところが今度はそこにつけこんで高級住宅知のどまんなかに「高級」売春宿をつくるひとびとが現れた。
オカネを出したりもらったりするひとにとっては「高級」でも、ベッドの上でやってることは同じで、たまらないので、近隣のひとは署名を集めて立ち退かせるように努力します。
いままでのところでは、すべて退去させられたもののよーである。

Pファクトリーに警察が踏み込んで大物がお縄になり、「高級」娼婦たちがいなくなって、やれやれと思っていると、今度は、若い衆が公称5人とかで借りる家があらわれる。「公称」なのはオークランドの条例では一軒の貸し家には5人までしか住んではいけないことになっているからで、だいたい名義が5人なだけで、若い衆で大きな貸し家(週8万円くらい)を借りる、なんちゅうのはだいたい8人くらいで引っ越してきます。
ほんで朝から晩までパーティをやる。
若いということは大気との親和性が高いということでもあるので、おのずから屋内ではなく戸外で、持ち前のでかい声で嬌声をあげる。
通りでラグビーボールを投げて遊ぶアホまでいる。

オークランドでは夜中の12時まで騒音をだしてパーティをやってもいいことになっているが、こーゆーバカタレなひとびとは、なにしろ、「高級住宅地のプールサイドで朝までバカ騒ぎ」というCSIマイアミやなんかで見覚えて夢に見た生活をしにやってくるので、たいてい朝まで騒いでおる。

オークランドで最も多い苦情は「パーティの騒音」で、だいたい問題パーティの発起は上記のような理由によっている。
ニュージーランド人は、我慢強いというか気が長いというか、もしかするとトロいのか、1ヶ月くらいは、じぃっと我慢する。
それから、おもむろにガレージを開けて、クルマを家の前で洗車する。
お目当ての近所の人間が散歩する時間を狙ってやる。
「あっ、ガメ、ひさしぶりだね」という。
「ひさしぶりですのい」
天気の話をする。
新しく出来たレストランの話をする。
ところで、この4軒むこうに新しいひとたちがはいってきたのを知ってますか?
なかなか元気がいいひとたちであると思う。
言いたいことは、とうの昔から知れているので、わしは単簡に
「うるせーやつらだよね、あいつら」と言います。
おっちゃんは、重々しくうなづいて、
なにごとかがなされねばならないときがきたようだと思う、という(^^)

最悪の場合はneighborhood watchをつくって、警察やカウンシルと協調して排除する。たいていは、その前にカウンシルがやってきて大家と話をつけて出ていってもらう。
ニュージーランドには「問題借家人」のデータベースがあって、これに登録されると家が借りられなくなる。
大家に退去を求められて、そこでもめると、このデータベースに登録されてしまうので、たいてい、ここでおとなしく出てゆくよーである。

焼き豚と、売春宿と、うるさい借家人の三題噺ではなにが狂言回しかわからないが、実は、中国系人というのが共通している。

売春宿はニュージーランドでは主に中国人たちの商売で、オネストベースというが、人間の良心に期待したシステムがやたら多いニュージーランドは、中国系人からみると「ただのマヌケな国」なので、良心と法律の中間の渓谷を全力で疾走して稼ぎまくるもののよーである(^^)

あるいは、儲かると、今度は高級住宅地のセクションの端に家が建っているところを狙って家を買う。
それをふたつに分割して通りやドライブウエイに近い側を貸屋にする。
そうやってつくった貸屋は通常よりも高めなので、だいたいやや理由があるひとびとがはいる確率が高くなります。
念のために書いておくと、法律で許されるからと言って自分の家の敷地を分割して分譲してしまうのは非常識ないし不品行とみなされる。
合法だから、やってもいいのだ、というのは英語世界では成り立たない理屈です。

ニュージーランド人では中国人の評判が猛烈な勢いで悪くなりつつある。
ダミーの会社をつくって農場を買い占めるというような行為がばれたり、過酷な売春婦支配が明るみにでたり、移民申告の不正直がばれて国外追放になる人の数がダントツで一位だったりすることが積み重なって、わしガキの頃は、決してエスニックグループについて述べなかった社会全体が、ちゅうちょせずに「中国人たち」と名指しで非難するようになった。

前にもブログに書いたが、わしにはRという中国系ニュージーランド人のむかしからの友達がいるが、このひとは両親の方針で中国語は話せない。
英語が母語のひとです。
「だいたい2000年くらいまでは、おれはただのキーウィ・ブロークだったんだけどさ」という。
「この頃じゃ、チューゴクジンだぜ。チューゴクジン」
このあいだクライストチャーチのパブにひとりででかけたらさ、入り口から、友達が待っているはずの奥のテーブルまで、ずううっっっと、バーに立っている奴らやテーブルの奴らがおれのほうをじいぃぃーと見てるのさ」
心のなかで、このくそチンクが、と言っているのが聞こえるようだった、という。
唇をかみしめている。

あるいは中国系人を誘って中華料理のレストランに行くと、そのひとは広東語が母語であるのに断固として英語でしか話さない。
あるいはあるいは、隣に香港人の家族が越してきた(旦那さんがイギリス人の)Sさんは、香港の出身だが、いっさい隣近所のつきあいはしない。
中国式のつきあいになったら、わたしの人生は終わってしまう、と明然と言い切る。

香港人は上海人と口を利こうとせず、上海人は四川人と福建人をバカにしきっている。
中国系のひとたちの共通した悩みは中国人であること、あるいは中国系であることに誇りがもてないことであるよーで、「人種差別なんて、するほうの問題なんだからかほうっときゃいいじゃん」とゆったら、抱きつかれて、「ガメ、ありがとう! パケハがガメみたいなやつばっかりだったら、どんなにかよかっただろう!」と大泣きされて、しまった、わしは、問題の深刻さがちょっともわかってへんやん、と思ったこともあった。

ニュージーランドはオーストラリアやアメリカと違って、人種絡み、宗教がらみの悪口でもおおっぴらに言うという国柄です。
「思った事はなにをゆってもいい」
世界でただひとつの英語国だとも言える。

だから「おれは中国人は嫌いだ」と中国人に面と向かっていうひともいれば、
言われた方も、それが見た目は「中国人」でも中国系ニュージーランド人ならば、「そういう中国人をひとからげにして悪口を言うのは人種差別で許されないことだ」と言い返す。
義理叔父なども、アジア人の不作法を嫌って、なあ、アジア人てのは、どうしてああ礼儀知らずなんだ?というJに「うるさいなあ。そんなに嫌ならクライストチャーチ空港のアライバルに「ホワイトオンリーニュージーランド」って横断幕はっておけよ」とゆって、まだぶつぶつゆっているJのグラスにビールを注いでやったりしている(^^)

むかしは「アジア人」で十把一絡げだったのが、「中国人」と一国指定になったのは、「人種差別じゃないんだぜ」という点の強調のつもりなのだとは思う。

400万人という小さな孤島の国が、どうやって中国という巨大な存在と、呑み込まれずにつきあっていくか、ニュージーランドはゆっくり、でも着実に迫ってくる問題と取り組みはじめたところだと思います。

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One Response to 遠い隣人

  1. 「日本に残ると決めた人のための金銭講座」を読みました。こちらの記事のなり振り構わない新移民の姿は、あの国には今や何億もの「さいしょのいちおく」が生むものを知る人がいるせいだよなあと思い、なんだか切なくなりました。

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