初めての人のための海外旅行マニュアル1_陸上移動篇

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JaguarとHertzがともにフォードの子会社だった最後の年である2005年には、面白い事があった。
テキサスのダラスに用事があったわしは、ふらふらと飛び上がってふらふらと着陸したジェット機から降りると、ハーツレンタカーオフィスに歩いてはいってゆく。
ダラスフォートワース空港は、なんだか冗談のようにおおきな空港である上に、スーツケースがなかなか出てこない空港でもある。

きみが初めて海外旅行に出かけたとすると、アメリカならば、ほんとうは、それが3ヶ月程度の短い滞在ならスーツケースは持って行かないほうがよい。
キャリーオン、機内に持ち込みができる小さな、たいていはころころ引っ張って歩く車輪がついたチビスーツケース、そう、あのスチュワーデスさんたちが使っているようなスーツケースに、おおきめの肩からさげられて、しかもチビスーツケースの上にしっかりと載るコンピュータバッグの組み合わせで日本を出るのが最もよいと思われる。

理由は簡単でアメリカという国は日本に較べれば途方もなく洋服、ありとあらゆる衣類が安い国で、しかもフィリピンの人達や東アジア人がたくさんいるせいで、とてもとても小さい服も売っている。靴や下着も同じ。
しかも、そのうちに述べるに違いない理由によって、身長が165センチ以下や身長が190センチ以上のひとの服は、特別に安い価格で手に入る。
いちばん高いのは男では177センチ-180センチくらいの身長の人の服です。
女のひとなら165センチ-175センチの範囲にはいる人の服だろう。

ハーツのオフィスに行くと、予約したときに告げたきみの名前が電光掲示板に並んでいる。
ほんで、エコノミータイプのKaを予約した大庭亀夫ですが、と告げる。
これは極めて大事なことだが、もちろん、レンタカーオフィスでもきみは、「気持ちの良い微笑」を浮かべていなければいけないのね、是非おぼえておいてもらわねば困るが、品のよさそうな微笑と謙譲な態度は、旅費を3割方ほども節約してくれる。
安く旅行するときには、だから、ガールフレンドにこっぴどくふられたあとの傷心旅行であっても、きみは「nice」が微笑を浮かべていなければなりません。
金銭の神様はきびしいのだとゆわれている。

「うーんとですね。コンパクトで予約してあるんだけど、アップグレードする余地はありますか?というのは、その、つまり『エキストラコストなしで』ということになりますけどね」という。
そーするとカウンタのおばちゃんはニカッと笑って「ジャガーならあるぞ」という。
わしは欣喜雀躍、当時出たばかりのジャガー自社製V8エンジンを積んだジャグアXJの鍵をもらって、なんだかどこまでいっても空港のなかであるので有名なダラスフォートワース空港の出口めざしてジャガーを運転していったのだった。
ジャガー。一日25ドル。
よれよれのTシャツとジーンズの汚ねーにーちゃんなのに。

ニューヨークをゆいいつの例外としてアメリカを旅行するのにレンタカーを借りないのは頭から思想的に謬りがある。
たとえば地元人に「じゃ、ちょっと、この道の先でお昼ご飯たべましょうか、おいしいステーキハウスがあるんです」と言われて、ついてゆくと50キロ先である、というようなことがふつーに起きるテキサスのようなところでクルマなしで過ごすのは、自分の力ではまったく移動できないことになるし、第一セキュリティ上も危ない。

80年代にアメリカを訪れた城山三郎や司馬遼太郎というような小説家たちは、性格が慎み深いひとびとであったから露骨に口にだしては言わないが、ダラスやシカゴのような町を訪れて「もうアメリカの時代はほんとうに終わったのだ」と「実感」している。
どうしてそんな見当外れもいいところの「実感」を雑誌を通じて日本人に書き伝えることになったかというと、読めば理由は明らかで「クルマを運転しなかった」からです。

フランスに滞在して噴飯物の「フランス紀行」みたいなものを書いた日本人作家は山のようにいるが、やはりこれもクルマに乗らないひとびとであるよーです。

初めての海外旅行であったり、初心のうちは(世阿弥みたいでかっこいいな、この言い方)、特にレンタカーを必要とする。
ハワイのように日本人と中国人の観光客からぼりまくることで成り立っている観光地ではレンタカーは高いが、アメリカ本土はとても安い。
初めは大手のほうが気分的に安心かもしれないが、別にスターターキーをまわすと爆発するわけではなし、そのへんの地元のレンタカー事務所をあらかじめインターネットで探して一日20ドルくらいのレンタカーで十分である、とも言えます。

城山三郎が80年代の終わりに「これはアメリカ滅亡の象徴である」と考えたシカゴは、たとえば真冬にシカゴ美術館の近くを歩くと、零下8度、ラジオのアナウンサーが「教の体感気温は零下15度です」と述べている戸外で、アフリカンアメリカンたちが点々と舗道のコンクリートに直に寝ている。
ひとどおりもなくて、「廃墟」という名前がぴったりです。
まるで人類の未来に悲観的な映画制作者がつくったSF映画に出てくる町のよーである。
あちゃー、アメリカの経済の崩壊はこんなにすすんでいるのか、とおもう。

だがしかしだがしかし。
クルマに乗って、ほんの20分も行くと、そこに巨大なモールがあって、きみが発見するものは、ティーンエージャーたちのデートから、5歳児達の、わーい、でへへ遊戯から、買い物、食事、はてはジョギングに至るまで、そこで行われている「室内モール社会」である。
心なしかマンハッタンの汚ねー支店よりおいしく感じられるシナボンを食べてコーヒーを飲みながら、そーか、アメリカも郊外にひとびとの生活そのものが引っ越してしまったのだな、と考えてみればあたりまえのことに気がつくだろう。

これを旅行者の立場からみると、アメリカでもほかの国同様、「大都市はただ観光客からボルためだけに存在する」のです。
フランスでも連合王国でもイタリアでもスペインでもいまは同じで、クルマがない旅行者には国の実体そのものが不可視であると思う。

レンタカーは「借り方」というようなものはない。
インターネットで車種をみて、価格をみて、予約すればよいだけのことで、空港からオフィスまで必ずシャトルがある。
他のすべてのことと同様に「1ヶ月単位」ならば、価格は突然安くなります。
地域によるが1ヶ月で3万円くらいからあるであろう。

実はもっと馴れれば長期リース契約(一年以上)をして短期で解約(ペナルティないっす)する、という最近流行のクルマの借り方があるが、書類手続き、工場まで出かけたりする実際の借り方そのものもややこしいので、初めての海外旅行では、ちょっと難しいような気がする。
言葉が普通に話せる場合には、しかし、たとえば「わしはクルマでアメリカ大陸を横断するんじゃけんね」というような場合には、リース車は必ずビッカビカの新車であることもあって、初めての海外旅行であっても考慮の対象になるであろう。

日本人で初めての海外旅行である、という条件を考えると、たとえばサンフランシスコからオレンジカウンティくらいまでをクルマで移動しながら遊ぶ、というような考えがもっともよいと思われる。
気楽だから、ですね。

サンフランシスコから南に走って、一日目はサンノゼの隣にあるロスガトス
http://www.losgatosca.gov/
のような落ち着いた町に泊まってまずジェットラグを治すとして、モンタレーの手前くらいのところで二日目の夜をすごすのが良いと思う。

この続き物ではなるべくオカネを使わない旅行の方法を述べようと思うが、ひとつだけ白状すると、わしはあんまり貧乏旅行をした経験がない。
18歳くらいまではニュージーランドとイギリスのあいだの往復以外はたいていかーちゃんかとーちゃんのお供であったし、21歳になると、まだ学生だと言っても、世間一般の水準から言うともう「カネモチ」だったので、19歳と20歳の2年間にメキシコやタイランド、スペイン、ラスベガス、フランス…というようなところでビンボ旅行をしたことがあるだけです。

アメリカではマンハッタンのスラムの端っこの友達のアパートに数日いたこととテキサスのド田舎で一日18ドルのモテルに一週間いたことがあったが、考えてみると、(もっとちゃんと思い出せば他にもあったかも知れないが)、安宿に泊まった経験は、そのくらいしかない。
そーゆー乏しい経験で述べるとアメリカのモテルは快適でキッチンもちゃんとしていて、悪いところはないが、上記に控えめに述べた理由で、頭のなかで「安い宿」ということになっているのは、Emabassy Suites
http://embassysuites3.hilton.com/en/index.html
で、ひとりのときでも、わしはよくこのチェーンに泊まっていた。

駐車場も広ければ、名前の通り、どの部屋もラウンジと寝室の2室あって、スペースがいっぱいあるからです。
アメリカでは家族が旅行するときによく使うホテルである。

おおきな荷物がたくさんある場合でもクルマを駐めてチェックインしてから、玄関に(ちょうどスーパーマーケットのトローリーのように)並んでいるワゴンをひっぱってきて、自分で荷物を部屋に運ぶ。
これはチップを払う機会がないことを意味している。
ロビーにはただのコーヒーサーバーがあって、最近はスターバックスと提携して「ただスターバックスコーヒー」です。

トロピカルな森林風につくったアトリウムが「ロ」の字型に囲んだ部屋が並ぶ建物のまんなかにあって、ここに並んでいる、というか緑や池のあいだに散在しているテーブルで、シェフのおばちゃんが注文に応じてハムやチェダーチーズ、ハラペーニョやマッシュルームをいれてつくってくれるオムレツやスクランブルエッグ、アメリカ風に「サニサイドダウン」にもしてくれる目玉焼きの皿にベーコンやソーセージ、パンケーキやワッフルをトレイに載せて食べる朝食は無料である。

アメリカはもともと豊かでおおらかな国で、おおむかし、わしガキの頃、なんでも疑問をもつクサレガキであったわしが、アナハイムのEmabassy Suitesで、朝食時に鍵の提示も求めないで、部屋番号も聞かずに並んでいるひとたちに次次に朝食を提供している光景を見て「近所の人がまぎれこんでタダで食べたりしないんですか?」とホテルの人に聞いてみると、「ああ、しますよ」とこともなげに答えられたのでびっくりしてしまったことがあった。
いかにも「そのくらい、いいじゃないか」と言いたげな態度だった。
公平を期すためにいうと、その頃でもロサンジェルスにあるEmabassy Suitesは雰囲気が打って変わって、腰に拳銃をさしたガードマンがロビーを睥睨していて、朝食のときもレセプションのにーちゃんが部屋番号を訊き、鍵を確認していた。

ところで最近はtripadvisorのようなサイトを入り口にして、いくらでも格安の部屋がみるかるので流行らなくなったが、いまでも、特にラスベガスのような需要の上下が激しい町では、「レセプションで交渉する」ということが有効であることがある。
特に夜中にクルマで着いた、というようなときは、200ドルのはずの宿泊料が50ドルになる、というようなことがふつーにあるので、むかしは、おもしろがって交渉した。
「安くなる部屋、とかありますか?」と訊くと端末を叩いて、ちゃんと探してくれます。「ない」と言われてもあきめずに、やや下品だが「コーポレートレートは、ない?」と、あの手この手でくいさがっていると、ほとんどの場合、相手のアフリカンアメリカンのねーちゃんがふきだして、「あんたって、絶対あきらめないのね? ヘンな奴」と言って笑いながら、ほんとうはあるはずのない部屋を端末からとりだしてくれる。
振り返って考えると、あんまり良い趣味とは言えないが、むかしはこれがほとんど趣味で、交渉をきっかけにレセプションのねーちんと仲良くなって一緒にバーでカクテルを飲んだりした。

ゴルフ場で有名なペブルビーチがあるモンタレー
https://gamayauber1001.wordpress.com/2009/01/15/san-simeon%E3%80%80(サンシメオン)_ウイリアム・ランドルフ/
は映画映りはよくても書き割りのような安っぽい町で、行けばわかるがチョーくだらない。
その南隣の、むかしクリント・イーストウッドが市長をつとめていたので有名な
Carmelのほうがよいであろう。
よいであろう、と書いたが、Carmelは静かで上品な町だが、欧州人が意地悪なことを言おうとおもえばパチモンの欧州の町のようで、ふーん、と思ってしまうところもなくはない。
だが、そういう意地悪なことを考えるのをやめて、クルマを駐めて、あちこちの店のひとたちと話をしたりしながら、のんびり午後を過ごすには良いところです。

チョー有名なCabrillo Hwy をのおんびり走ってゆくと、チョーチョー有名な「Big Sur」に至る。
おお、わし、それ知ってるわ! 藤沢の有名なカレー屋さんですよね?
とか、ゆってはいけません。
こっちがもともとの名前なのね。

この調子でずっと書いていると長すぎるどころか本になってしまうので、もうやめて、端折るが、途中で海岸でごろごろしているアザラシや牧場の牛さんをからかいながら、
のったりのったり南に向かってSan Luis Obisto
https://gamayauber1001.wordpress.com/2009/01/15/san-simeon%E3%80%80(サンシメオン)_ウイリアム・ランドルフ/
のモテルに泊まるのがふつーの旅行習慣であると思う。
San Luis Obistoは、要するに「クルマでCabrillo Hwyを往来するひとが一泊してゆく町」だが、近くに新聞王ハーストの城があります。
ハーストは最近のひとなのに「城」はヘンだが、ほんとに城なので仕方がない。
本人は悪趣味を極めた人だったが、あまりにオカネをもっていたので欧州のすごく良いものがある。

ここからサンタバーバラに一泊してオレンジカウンティをめざそうと思うが、書いている本人が、まだカリフォルニア篇の本題(旅行の仕方だよねー、本題)に入らないうちに飽きてしまったので、カリフォルニアだけで前後編にするしかなくなってしまった。

アホなのではないか。
あるいは、あえなく削除、ということになるかもしれません。

でわ

(画像はお昼寝ちゅうのエミリオ=ロマーニャの犬さん)

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One Response to 初めての人のための海外旅行マニュアル1_陸上移動篇

  1. ヒロタン says:

    普通に凄い助かりますよ。9月から11月までテキサスからフロリダまで友人と海岸沿いに旅行する。カイトサーフインとウインドサーフと普通のサーフボードを持って移動。キャンプでも良いけどやっぱり宿泊した方が疲れないからね。フランスからスペインの地中海沿いは如何ですか?ニースあたりからアフリカとの海峡あたりまで行くつもり。あんまり安宿 っていうのも安全でないと怖いですから普通が良いですね。気が向いたらお願いします。

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