SNS

kp2

WSJ(WALL STREET JOURNAL)のサイトのビデオをぼんやり眺めていたら、
ファッションモデルのあいだでSNSが流行っている、という話題について話しているビデオが流れた。

自社でファッション・モデルを選ぶのに「あのモデルは、身長はどのくらいだっけ?
すごくやせてるの? ツイッタのフォロワーは何人くらいいる?」というように話して決めるのだと言う。
game changerだ、という言葉を使っていたが、実際そのとおりであると思う。
Jourdan Dunn というモデルが
「Ahahahahahaha I just for cancelled from Dior because of my boobs! 」というツイートで自分が「胸がおおきすぎておろされた」ことをばらしてしまって業界うちでは、大騒ぎになったことがあったが、本人が誰かに叱責されたという話はなかったし、それきり、騒ぎの噂を聞かないので、ファッションモデルの業界は相変わらずsubtleで欧州的な伝統の影のなかにあるのだなあ、と思ったりした。

SNSのなかではツイッタが好きである。
寝床のなかや机に向かってるときには日本語ツイッタもよくやる。
ツイッタの最大の魅力は、他のことをやりながらいろいろな人と話ができることだと思う。
むかしは、いろいろ考えて140文字ぴったりにして書いたりしていたが、オラトリカルな反面教師たちを見るといかにもダサイので、内容はどうでもいいことにした。
このひとはオモロイな、という人がいて、その人がタイムラインに出てくると、つい話しかけてしまう。
どうやら言いたいことが出来て集中してツイートしようと思っていたらしいのに、つい話しかけて笑かしてしまって、わるいことしちゃったな、と思う。
対策として、(日本語では)フォローする人を極端に減らすことにした。
友達たちは怒るだろうと思ったが、古い友達は、ぼくがどのくらい滅茶苦茶な人間か熟知しているので、あんまり文句も言わずに@をつけて話しかけに来てくれる。
きっと、どうしてこいつはこう愛想がわるくてめんどくさいのだろう、と思っているのだろうと思う。
実際、そうなので応えようがない感じがする。

前にも書いたが同じ140文字といっても言語によっておおきく異なる。
中国語ではひとつの物語が140文字で書けてしまう。
英語では140文字は日本語で言えば50文字くらいだろうか、ちょっとまとまったことを言うと140文字になってしまうので、上のファッションモデルのツイートもそうだが動詞や判り切った単語や文字はとばすことが多い。i ♡ uというような表現はいまは日本のひとでも使うのだと聞いている。

言語によって言える内容が異なるので、社会の違いとあいまって、中国語のツイートは自然と真剣なものが多く、おおげさではなくて個人が政府に抗議するプラットフォームであり、反政府人の最も強力な武器で、取り締まりをさけるために警察が把握できない闇シムを使って投稿したりする。
中国には官製デモのほかには自然発生的に発生したデモなど存在しない(あの日本人が年中悩まされている「反日デモ」も、もちろん中国政府が台本を書き、いっさい取り仕切っている)が、Ai Weiweiが警察に逮捕されて8日間の行方不明になったときだけは別で、各所で何百人という小さな規模にしかすぎなかったが、政府が仕組んだのではない、市民の自発的なデモが起きて、世界中の中国ウォッチャーと、なにより中国政府自身をびっくりさせた。

Ai Weiwei自身も視覚芸術のひとには珍しくツイートにおもしろいものが多くて、このひとは英語と中国語の両方でツイートする(たしかアカウントは別)が、ぼくの大好きな
「No outdoor sports can be more elegant than throwing stones at autocracy; no melees can be more exciting than those in cyberspace」
のようなツイートはもともと英語でなされたものである。

https://gamayauber1001.wordpress.com/2013/02/19/荒っぽさの効用について/

ぼくは英語のツイートはスマートフォンしか使わない。
いろいろめんどくさいことが起きるので、たとえば日本語ならば日本語だけのMacBookAirとiMacしか使わなくて、ほかのコンピュータは使わない、というふうにハードウエアごと言語別にしてあるせいもあるが、英語のツイッタはもっとひどいというか、フォロワーの人は日本語に較べると桁違いにおおいが、意味のある発言はほとんどなくて冗談ばっかしで、他は「いま8番街と22ndの交差点にいるんだけど、この辺においしいフライドチキン屋ないかな?」というような使いかたなので、スマートフォンのほうが使いやすい、という事情がある。

SNSはどこの国でも警察からみると目の敵である。
英語世界では最近のデモはSNSで自然にひろがり、「やっちまおうぜ」ということになって、忽然とあらわれ、あっというまに略奪して、警察が慌てて駆けつけた頃には雨散霧消している。

「あんなものは政治行動ではない」と特にアジア系市民には評判がわるいが、マジメで保守的なアジア人たちがそう思うだけのことで、政治行動の本質はむかしから、そういうものだった。
世界の不正義のために一身をささげて、死をもおそれずに反動的抑圧的な政府の兵士に立ち向かう革命の担い手、というようなイメジは、要するに革命に勝利したほうが記録した歴史で、書かれないことのほうに真実がたくさん眠っているのは、すべての歴史と同じなのであると思う。

馴染みのある、リラックスできる友達たちの声をはなれて、まったく知らないひとのアカウントに辿り着いて、そのひとの聴き取りにくい声、を聴く遊びは、他のことと同じで、SNSにおいても、ぼくの好きな遊びである。

あるとき、ぼくは広大なツイッタの世界の片隅で、とても変な人をみかけたことがある。
この人は会社員らしかったが、なにしろ、たったひとりで食べに行くランチの食堂への道順まで、どの通りを抜けて、どこを横切って、「あっ、いまスケボーの奴がとおりすぎていった」というようなことまで書いている。
もちろんツイートの数は膨大なもので、それなのにフォローしている人の数も、フォローされている人の数も少なくて、変わった人だなあー、と思う。

今日は上司にこんなふうに怒られた。
帰りの地下鉄の駅の構内は暑かった。
アパートの前の街灯がこわれかけて嫌な音を立てて点滅しているんだよ。
このテレビドラマはここが可笑しい。
あっ、いまのはとちったんじゃないか。

ぼくはこの人をフォローすることにした。
ときどき話しかけてみると、素晴らしく知性的なひとであることがわかった。
3ヶ月くらい経ってから、なるべく誤解されない言い回しを選んで、
「どうして、そんなになんでもツイートするの?」とダイレクトメールで尋ねてみた。
もちろん、普通のひとなら「余計なお世話だ」と怒る質問です。

ところが、このひとは「eメールのアカウントはあるかい?」と言う。
ぼくが教えると、その週の終わりに、ずいぶん長いeメールが届いた。

自分と高校のときから付き合って、もう16年になるガールフレンドは、彼女が故郷の町に残って、ぼくがこの都会にいる。
充分稼げるようになって落ち着いたら一緒に結婚しようと誓いあっているが、なかなか現実に勝てない。

どんな細かいことでもツイートして、一緒にこの都会で暮らしているような気持ちになれればなあ、と思って、ツイッタを始めたのです。
ツイッタでことこまかに書いたことをもとに、週にいちどスカイプで話す。
だから、どんなに他のひとにうるさがられても、ツイートをやめるわけにはいかないんだ。

ほんとうはもっとずっと長くて、ガールフレンドがいかにやさしい人で、美しくて、楽しい人間か、自分はガールフレンドを幸せにできる人間になりたいと思うが、なかなか立派な人間になれない、天使であるとしか思えない彼女には相応しい人間ではない、という内容がびっしりと書かれたeメールだったが、要約すれば上のような趣旨で、
それがぼくの悪いくせで、読んでいるうちに 画面のヘルバティカ・フォントがだんだんに歪んで、なんだかぐにゃぐにゃになっていった。
人間が誰かを好きになったときの、あの気持ちの切なさが胸にせまって、ミイラになりそうなくらい泣いてしまった。

そのひとは、いまではわしの友達です。
付き合ってみると、素晴らしい快速な知性の持ち主で、話していると楽しい。

SNSの虚空には、(当たり前だが)さまざまな人がいて、さまざまな理由で、さまざまな言葉を低く高く述べている。

もっと頭がヘンなことをいうと、あれっ? このひとはほんとうに人間だろうか?
神か、もしかしたら悪魔なのではないか?という人に出会うこともある。
SNSは人間の言葉が最も苦手とする「伝達」を機能とする空間のなかで、
人間の魂と魂がふれあって、木霊する、21世紀人がつくったひとつの巨大な吃音であると思うのです。

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One Response to SNS

  1. Hypocrite says:

    Reblogged this on Hypocrite.

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