これから初めて逮捕される人のための初級特定秘密保護法案講座

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何を対象にしているか曖昧な漠然とした法律をつくって、必要に応じて運用を厳しくして締め上げてゆく、というのは日本政府の歴史を通じての常套手段だった。
仕事に通暁した公務員には、どこをどう締めれば対象の民間が息もできなくなるか、無碍に判断できる能力が求められる。

運用の実際は考える必要はなくて最も身近なもので言えば自動車の速度違反を考えればいい。制限時速80キロの道を、どのクルマもどのクルマも120キロで走っていて、「流れに乗って」走っていると、突然、自分だけが路脇に停止させられて、「40キロオーバーですよー。はい、これが違反切符」と罰金を書いた紙が渡される。
なんでおれだけ、と運転手はふくれるが、交通警察のほうでは「止めやすかった」「ちょうど違反者をつかまえる頃合いだった」「助手席に美人が乗っているのが不愉快だった」、いろいろな理由があるのだと思われる。

特定秘密保護法案は、まず間違いなくアメリカの要求によって出来た法案だと思う。
目的は簡単に言えば「アフガニスタンでともに戦う日への準備」で、いままでのアメリカが一方的に日本を守る約束の片務軍事同盟の双務化(アメリカ市民もしくはアメリカ軍が攻撃されたときに日本側にもアメリカを助ける義務が生じる)への布石でしょう。

キッシンジャーと周恩来の会見で、日本の政治家の「おしゃべりぶり」が話題になって、ふたりで苦笑しあっているところが出てくるのは前にも書いたが、日本の政治家、それも首相周辺の「口の軽さ」は日本の政府の伝統と呼びたいほどのもので、官房に秘密を教えるのは、役人のあいだで、なるべくならやりたくないことのひとつになっている。
「溜池」には個々の情報の重要性が判別できない役人や政治家がたくさん屯していて、見聞きしたことを「ポロッ」とマスメディアに洩らす、ということが何度もあったからです。

軍事同盟を結んで共同作戦をすすめる具体的なプロセスを考えると、関与するひとびとには日米の制服組がいて、防衛省、外務省、警視庁を初めとする省庁から派遣された担当官がいる。アメリカ側からも対応する担当官が出席する。
その上に両国の政治家たちが加わって作戦が認証・決定される。
当然、秘密保護法案にも予想出席者の「嘴」がさまざまな形で突っ込まれている。

ハニー・トラップとずいぶん騒がれた時期があって、その頃、ちょうど日本に滞在中だったので調べてみたことがあったが、ハニー・トラップで漏洩した情報にはたいしたものはないようだった。
どちらかと言えば入手ずみの、例えばイージス艦の艦内の写真を見て、「ありいー? このヘンなスリットのあるボックスはなんだ? 何に使うのか見当がつかんな、ちょっと、あのXXさんんにイージス艦の将校とイッパツやって、これが何か聞き出すように言ってくれんかなあー」と注文を出して、報告を待ち、「ああ、コンドームの自動販売機なのか、なあんだ」と納得する、というようなことが多かったようです。
軍事的なスパイ情報は大半がアメリカのご本尊内部から洩れていて、その次、といっても遙かに少ない量がオーストラリアから洩れて、日本は、そこからまた桁がひとつさがって、その次、というような程度だと思う。

中国の日本での「スパイ活動」は積極的具体的に個々の情報をとってゆくよりは、「世論操作」というほうに力がこめられていて、むかしむかし、このブログ記事でうっかりリストのことを書いて、えらい怒られたことがあったが、書くほうが悪い、もうしません(^^

しかし、ずいぶん有名な名前も混じっている「既知のスパイのひとびと」も政府側はほとんど把握しているもののよーである。

自分のお縄を自分で用意するのは、マヌケな感じがするが、アメリカ側としては、ひとつには「口が軽すぎる日本の政治家」を緊張させて黙らせる、という考えがあるでしょう。
その次には政府の公務員のなかを「セグメント化」して、自由主義社会を信奉する公務員を中枢から遠ざける働きを法案に期待している。
日本の役人たちは、ただでさえ自分達のなかで「特権クラブ」をつくるのが好きで、なかなか淫靡な形で実行されているのでもあって、「上級役人の集まり」の招待を文官にだけ出す、というようなことをいまでもやる。
野口悠紀夫のようなひとたちが政府を早くからおん出てしまうことには、多少は、こういう些細だがダメージがおおきい「文系人」のやり口に嫌気がさす、という理由があるよーです。
予測できることには「東京大学法学部出身者」だけのクラブがある。
見ていて笑ってしまうのは例えば「麻布学園・東京大学法学部出身者」だけのクラブも存在することで、それならいっそ、「とーちゃんもじーちゃんもひーじーちゃんも東京大学法学部出身者である役人だけのクラブ」もありそーだが、歴史性を重視しない日本社会では、そういうイギリス式の嫌らしさは稀薄なよーです。
ほんとうは、麻生太郎や安倍晋三の「お孫ちゃんお気楽文化」を見ていると、そんなにながいあいだ賢い人間が続く家というものが存在しないのかもしれないが。

たださえクラブをつくりたがる役人に、「危ない人と付き合って秘密をうっかりもらした場合にはタイホだかんね」という石をひとつ放り込んでやると、波紋が立つどころではなくて、「危ない同僚」や「危ないOB」に対して口実を設けて会わないことにするのは公務員の習性からして明かで、これから政府内では中核的な役割から外された自由主義的な公務員の辞職が続くでしょう。
日本の政府らしい公務員「粛清」の仕方であると思う。

「特定秘密」を共有すべき立場にある職掌のうち、警察の「公安」にあたるひとびとが悪のりしだしたのにはアメリカも、ちょっとびっくりしたに違いない。
尻馬に乗って「自由主義者壊滅法案化」にのりだした。
さすがは日本が祖国のひとびと、というか、素晴らしい勘で、「この法案は危ない」と直感したひとたちが述べる事を注意して聴いていると、「特定秘密保護」を目的とした法案そのものよりも、よく訳がわからないうちに法案の目的にくっついてきてしまった「えらそーにガタガタぬかすとタイホする」のほうに感応したようで、その危惧は当たっている。

株式相場ですらそうだが、現代は実は「情報共有の時代」で、たとえば株式相場の世界では、ほんのひとにぎりの人間にだけ情報が握られていて、残りの大多数に情報が伝わっていないと、恐慌が起こりやすいことが理解されて、企業の側も株式市場へ伝えられるだけの情報を伝える努力をすることが当たり前になっている。
政治の世界でももちろんそうで1960年代の米ソ「ホットライン」に始まって、いまではアメリカ軍は、たとえば中国が尖閣問題でここまでやれば自国の海軍はこう即応して、その後、海軍をこういう海域に展開して、しかじかの攻撃をすることになる、というところまで懇切を極めた解説を中国人民解放軍に対して行う。
人民解放軍が威勢はいいのに、なかなか日本の領土にせめてこないのは、アメリカが示した予想棋譜を何度ためつすがめつ眺めても、チェックメイトされるのは自分のほうで、到底勝ち目がなさそうにみえているからで他に理由はない。
中国政府が「わたしは平和主義者ですから」と繰り返し述べるのを聴いて、ほんとですなあ、とうなづくおめでたい人は現代世界には存在しないだろうと思われる。

だから「チョー重大な特定秘密」というのは、たいていは既に公開されている戦略上の主題というようなものではなくて、ほんとうは、日本のあちこちに核弾頭が隠してある、とか、在日本駐留軍の将軍が酔っ払って日本人を強姦してしまったが内緒にしている、とか、そーゆー「自分達にとって都合が悪い秘密」が大部分になるはずで、もっと簡単に言えば、いまでも四捨五入すると存在しない日本語ジャーナリズムにとどめのひと刺しを与える、という目的があるでしょう。
記者クラブは、いまにもまして幇間倶楽部になりさがるのが決定されてしまった。

今回の一連の事象で最も興味深いのは、ついにアメリカ合衆国が日本を、たとえば「イギリス並み」の「仲間同盟国」とみなさないと決心したことが明瞭になったことで、いまの日本に対するアメリカの「同盟国」としての態度を見ていて、ホメイニ以降のイランに対するイラクのフセイン政権に対する態度や、かつての南ベトナム政府との「同盟」を思い出さないひとはいないと思う。
同じ「自由をめざす国民同士の会盟」から、日本をいちだん格下げして、「自国の世界戦略の駒」としての同盟へ切り換える決心をしたのは明かで、しつこいようだが、これは軍事的には例のヒラリー・クリントンが行った「奇妙な提案」と密接な関係がある。
ここに来てアメリカが「日本を教育するため」に片務軍事同盟に限定していた枠を取り去って双務同盟を希望しているらしいのも、同じ理由によるのでしょう。
ついでに言えば、「駒との同盟」においては相手が自由国家であるよりは形式だけは民主制でも、実質は独裁支配国家か国家社会主義国家であるほうが都合がよいのは言うまでもない。

日章旗が星条旗と肩を並べてカイバーパスに翻るのを誇らしいと思う人もいるのかもしれないが、アホらしい、というか、いまのところ確かなのは、「特定秘密保護」という名目で、まがりなりにも70年近くつみあげてきた日本人の自由への努力が、ついに日本語インターネット人の長年の宿望もかなって、所詮はアメリカの権益を守るための、しょもない戦争を共に戦うためにパーなってしまった、ということで、やるせない、というか、日本に「自由」が全体主義を国民性の足に踏みつけられたままの虫の息にしても、存在したのは短い期間だったなあー、とタメイキが出てきますのい。

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