Leap before you look (now you really should)

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2000年と2014年で「起業」する人にとってのいちばんの条件の違いは2000年に「起業」したかった人は銀行なりベンチャーキャピタルから起業の資金を調達しなければならなかったのに対して2014年のentonpreneurは資金の調達を必要としないことだろう。
金融能力が極端に退化した社会である日本のひとにとっては14年間で起業条件は次元が異なるほどよくなっている。

2000年に起業する人は「ビジネスモデル」を自前でもたねばならなかった。
たとえばファッションサイトをつくったとして、一日に300万のユニークユーザがサイトを訪ねるまでサイトが成長しても、当然のことながら、一円にもならない。

人がたくさん訪ねてくることをオカネに変換しなければならないが、ではどうすればいいのか、という問題があった。
最も工夫がない人はバナー広告を出して、それをクリックしてもらえばよい、と考えたし、コンテンツに自信がある編集者たちはコンテンツに課金して有料化すればいいと考えた。
案が凡庸であるだけ、あんまりたいしたオカネは稼げなかったが、なんどミーティングを開いても、結果は同じで、他の結論はでなかった。

eコマースは最も簡単で、店が仮想になっただけであるものでも結構なんとかなった。
Amazon.comは当時からバックオフィス商売をめざしていて、やや旧式なone-to-one理論に基づいていたが、それでもがむしゃらにデータベースを構築して、イーコマースの王になりつつあった。

最も成功した「ビジネスモデル」を持ったのはグーグルで、グーグルアドは利用者とグーグル双方に巨大な利益をもたらした。

だが当時はクレジットカード決済ひとつとりつけるのに苦労したはずである。
インターネット側からみると最も原始的なビジネスであるeコマースにしても、ではクロネコヤマトならクロネコヤマトとサイトのバックオフィスを連動させるとして、システムをつながなければならないが、運輸会社のシステムは歴史があるぶんだけふるいもので、ほんとうにこんなものとつなげるのか、とおもうほどの作業だったはずである。
しかも標準SQL規格のDBよりも、必要な規模ならオラクルDBしかないということになって、調べてみるとDBだけで1億円近いコストがかかる、というようなことであったに違いない。

14年間のあいだに、自力でやらなければならないことはどんどん減って、セキュリティ上最も問題がある決済システムも自分で実装する必要はなくなって銀行やクレジットカード会社のシステムにデータを投げてやればよくなった。
サイトでデータを保持する必要がなくなったので、クレジットカード情報を盗まれる可能性は、ずっと低くなった。

ひとりですべての機能を抱え込む、いわばアマゾン型のサイトから、分散された機能をインターフェースでつないでいけばよいだけになったが、2005年くらいにビジネスを始めたかった人は、まだ資金が必要だった。

いまはいらない。
簡単に言えば「おもしろければいい」ということになった。
ハードウエアの開発を必要とするビジネスアイデアでさえkickstarter
https://www.kickstarter.com
がある。
「ポテトサラダをつくる」プロジェクト
https://www.kickstarter.com/projects/324283889/potato-salad
が5万ドルを超える資金を集めたのが先々週だったか話題になっていたが、
「ラーメンをつくる」ならば10万ドルはかたいのではなかろーか (^^;

開業以来、いちども利益をあげたことがない、というよりも利益をあげるということを考えてみたことがないDavid Karpのtumblrは、スーパースターMarissa Mayerのヤフーが1200億円で買った。

異なる方向から述べると会社を成長させる段階でMBAたちが不要になった。
うまく眼に見えてこない人が多いかも知れないが、現実のビジネスではこれはたいへんおおきなことで、日本の「受験戦士」に似て定石の集積としてのビジネスしか知らないMBAたちが加わると、新しいアイデアに基づく会社の活発な創造力は大幅に減少する。
皮肉なことにオカネの臭いをかぎつけてやってきたひとびとが加わるようになるとビジネスは病んでしまうことのほうが多い。
ビジネスモデルを考えないですむことは、新しいアイデアに基づいたビジネスにとってはなによりの健康法である。

グーグルアナリティクスもあれば、なんでも無料で転がっているいまの起業環境では、オカネがまったく必要でなくて、ビンボ人もオカネモチもスタート地点ではほぼ互角のおもしろい世の中になったが、もうひとつ重要なことは、ビジネスマンたちが昔から説いてきた「人間のネットワーク」もいらなくなってしまったことである。
「ああ、これはどこそこの誰某さんに頼めばいいな」という人間のネットワークをもつことは長い間ビジネスマンの主要な能力のひとつに数えられてきたが、すぐれたアイデア(技術的なアイデアが最もよいが、たとえば、論理的に言えば、滅茶苦茶可笑しい冗談サイトでもいいわけである)だけが問題になる新しい起業環境では、そんなものは急速に不要になるだろう。

ここにおもしろいことがある。
起業環境が上で説明したように変わってきたことの一方では学校という教育システムが不可避的に個人の創造性を破壊する弊害が目立ってきた。
ところが知的側面においては初等教育から大学教育までインターネット上にどんどん無料でクラスが公開されている。
スタンフォードはたしか全講義をiTunesで公開しているはずだし、他の大学もこれにならっていくのは見えている。
なにごとにもネガティブな側面しか見られないひとたちは「しかし、それではディベートができない」「社会生活の訓練はどうなる」というに決まっているが、オンラインディベートなどによって、実際に学校がいらないことが決まれば、急速に解決されるだろう。

しかも「学校」が時代遅れ化することによって、名門校出身エリートいうようなものは、グッチの鞄のようなものに価値が変わっていく。
グッチみたいな下品なものは俺は嫌いなんだよ、というジーンズ族は、いまでもコンピュータ世界にはそういう人間がたくさんいるように、学校のような世にも退屈なシステムは自分の生活から遠ざけて、自分自身の時間をオンデマンドに使える環境のなかでクリエイティブな状態に自分の精神をおこうとするだろう。
そして、それがこれからの世界においては経済の側や社会の側から見ても最も生産的な時間の過ごし方なのはわかりきっている。

学校教育というシステムが経済環境の変化によってなくなるというよりは学校教育と経済環境の両方がむかし「IIT革命」というヘンな名前で呼ばれていたおおきなパラダイムシフトによって形状を変えつつある世界の変化のなかで否応なく姿を変え始めている。
20世紀までに人間がつみあげた諸事象へのイメージ、教育、政治、経済、その他すべての文明のイメージは、人間が道具として動物の骨を手に取った瞬間からいままでの文明の速度を20年で乗り越える速度で変わっていくのはもう眼に見えているし、たとえば「日本の大学はダメだから息子はバーヴァード大に進ませました」というような1990年代くらいから東アジアの富裕な家庭の親がとりだした「世界の英語圏化」への対策は、気の毒だが、一場の風景、歴史にはつきものの茶番におわるだろう。
社会の定石がすべて無効になってゆくと、年寄りの価値は減少して、知識は生産的な意味を失っていくことになるが、それはよいことである、とぼくはおもっている。
おもっているだけではなくて、その大きな変化に抵抗が起きるようでは、もう20年もすればもうひとつ地球が必要になると言われて、いまのいまも原油や天然ガスのためにおおぜいの人間が殺されている資源問題その他へのブレークスルーが出来る可能性はなくて、人間は滅びるしかない。
飛び越えるべき小川の向こう側に眼を凝らしている時期は過ぎて、もう跳ばなくてはならない。
W.H.オーデンが述べたように、見ていても仕方がない、対岸がどうあれ、もう、どっちみち跳ばなくてはならないのだから。

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2 Responses to Leap before you look (now you really should)

  1. Mina says:

    ワクワクと読みました。
    起業なんて大げさなものでは全くないが、私が帽子屋を始めたのは四年前、初期費用0。ビジネスプランなど書くはずもなく、ブログに写真を数枚上げてスタートしたことを、友人に売り上げの数%の手数料を渡すことでサイトを作ってもらい体裁を整えた。同時にEtsyを知り、ちょいちょいと写真と情報をアップするだけで日本以外の人が買って行く。赤字はいまのところだしてないし、海外のショップから取引依頼もきた。
    やりたいことを少しづつ広げていく位の可能性を、そこからもらってる。会社に勤める必要がなくなった。好きな時間に好きなだけ仕事ができる。夕方にはビールを飲み始められる。
    いまは、少しづつやりたいようにやってこうと思ってる。やりたくないことはやらないし、不必要に忙しくもしない。日本のショップに卸すよりも、アイルランドの花嫁が自分の結婚式のために直接探した帽子、になりたい。

  2. brainseceartdubh says:

    ー「ポテトサラダをつくる」プロジェクト

    が5万ドルを超える資金を集めたのが先々週だったか話題になっていた

    これ、息子がこの間教えてくれました。
    なんか楽しい世の中になって来たなあというのが私の感想。
    前は某オークションで売ってたことはあったけど、今はもっと可能性が広がるようになっている。なんか私も考えてみようかなあ…と考えているうちにワクワクして来ました。

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