OMG経済

経済は心理的要素がおおきいのはほんとうで、たとえば株式市場は、「参加者全員が良いと思いそうな銘柄がどれかを予測する投票」なので、現実に株価が上昇すべき企業の株価ではなくて、株価があがるとたくさんの人が感じた企業の株が上昇する。

あるいは「景気がよくなるんじゃないかなあー」と皆が感じるようになれば、先週は1万円しか使わなかった人が今週は5万円を使うことによって「消費」が拡大する。

この程度のシステムがあれば、うちの会社のECなんて十分処理できるだろう、と考えていたオンラインショッピングサイトの持ち主が、どうも景気がよくなりそうなので、セッション数が処理できなくなるかもね、と考えてシステムを増強するので、システム業者に発注を出して、システム業者はハードウエアを買い、ソフトウエアデベロッパに発注を出す。

そうやって特に中小企業主の「confidence」があがってくればしめたもので、ここで初めて言わば絵空事の「景気」が実体経済の回復につながってゆく。

アベノミクスは、新機軸の面にスポットライトをあてて述べれば、日本の、手がつけられないほど遅れた産業思想によってダメージを受けた実体経済を心理的要素を現金で買うことによって回復しようとする試みだった。

つまり「好景気」をカネで買おうとする試みだが、それ自体は悪い考えではないとも言えて、どこの国でも年がら年中やっていることです。
ただし規模が違う。

日本銀行の営業毎旬報告

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac150420.htm/

で観ると、

(単位:千円)

資産

金地金 441,253,409
現金1 238,467,925
国債 272,062,406,277
コマーシャル・ペーパー等2 1,986,304,509
社債3 3,314,447,002
金銭の信託(信託財産株式)4 1,351,078,039
金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託)5 4,675,471,443
金銭の信託(信託財産不動産投資信託)6 212,311,033
貸付金 34,137,185,000
外国為替7 6,037,830,625
代理店勘定8 141,490,280
雑勘定 587,347,642
合計 325,185,593,189

負債および純資産

発行銀行券 89,223,901,089
当座預金 203,575,307,334
その他預金9 1,348,452,387
政府預金 1,477,931,890
売現先勘定 22,133,203,438
雑勘定10 692,009,632
引当金勘定 3,848,399,108
資本金 100,000
準備金 2,886,288,309
合計 325,185,593,189

あんまり財政のことなど判らない人でも、退屈を我慢して数字を眺めれば、
どっひゃあああー、な数字で、
実際、この2年半で、
国債買い取りは倍以上の105兆円から272兆円、
「金銭の信託」は2兆8千億円だったのが6兆円弱、
コマーシャル・ペーパーや社債ですら4兆2千億円から5兆2千億円に増えている。

こーゆーの、どっかで見たことあるなー、さて、どこだったろうか?
と思った人がいると思う。
しばらく考えて「あっ、戦時国債!」と思った人がいるだろう。

近代国家の財政は、このくらいの荒っぽいことをやっても短期的には支えられるようにデザインされていて、なぜそんなヘンなことを許容できるようになっているかというと、戦争を遂行するときにはオカネがデタラメなくらいかかるからです。
それでも勝てば賠償金や相手国の領土への権益が手に入るので、結局は利益になるように気をつけて戦争プランを実行すれば国の利益につなげていくことができた。

でも、安倍政権はなにと戦争をしているのだろう?

日本政府が大々的にアベノミクスを打ち出して、国を挙げて新しいベンチャーに乗り出すのだ、と発表したときに、最も手を打って喜んだのは、世界中(もちろん日本も含む)の投資家たちでした。
投資家といっても、ビジネスマン、という言葉から類推すれば直ぐに判るように現実の様態は「投資家」というひとことでくくるのが非現実的なほど様々で、マイクロ金融の投資家たちのように、苦しい環境に耐えて善意のトップクラスのコンサルタントたちの知恵を借りて、数学的なモデルを睨みながら、自分たちが失敗すればたくさんの貧乏人が死ぬことになるのを責任感の拠り所として、まるで困窮者が蝟集する城砦の守備隊長のような投資活動を続けている投資家もいれば、ロンドンのどまんなかの大時代な建物のてっぺんに「在宅ちゅう」を示すチョーでかい旗を翻して、見ようによっては宮殿ごと、日本の戦後民主主義が生んだ天才、赤塚不二夫先生が発明したキャラクタの「ハタ坊」だが、鎮座して、Forbesの長者番付には出ないが世界最大の巨大な不動産群からの収入に基づく大金を運営している投資家一族もいる。

ここで述べているのは、年金を運用する政府から、なけなしの年金を貯めた預金を増やしたいお年寄まで、いろいろなオカネをかき集めて、それを投資することによって自分の利益もうみだす、上から3番目くらいに荒っぽい投資家たちのことです。

それまでケイマンにオカネを停泊させて、参ったな、どっこも賭場あいてねーじゃん、これじゃカネの増やしようがねーぜ、とお茶を挽いていたところに、東の果ての、太陽が昇るところで日没をこいていた国の政府が、少しでも財政が判る人には明らかな最期の大勝負、台湾沖航空戦というか、バルジの戦いというか、クルスク戦車戦というか、を決意して、大規模な賭場を開いて、しかも賭け金が増えるのは国民が戦後の70年を通じて貯めに貯めた個人預金をあらいざらい投入して保証してくれるというので、大喜びで馳せ参じた。

戦争でもないのに、見せかけの「好景気」を演出するために、これほどの大金を賭場のテーブルにぶちまけた政府は歴史上も初めてであると思います。

黒田総裁という人は経歴をみると財政知識が豊富にあるはずの人で、自分がやっていたことの意味をしっているはずなので、考えていたことを想像すると、もちろん「日本は国債と言っても、買い付けがいくら増えても国内調達だからダイジョブ」というような思いつきにしてもクビを傾げてしまうような与太話を信じていたわけはなくて、多分、「どっちみち財政破綻に向かって歩いているのなら、乾坤一擲、金融を歴史的な規模で大緩和して、通貨の大減価を行って景気が上向く徴候が定着したところで消費税を最終的には20%内外まで上げて財政健全化を図るしかない、というようなことだったでしょう。
アベノミクスに協力する決心をする過程で、なんども安倍首相に「いいですか?消費税をあげる、という点は外せませんよ。これが最重要点なのですから」と何度も念をおしたのではないかと思います。

安倍首相の側の思惑は第一次政権の足跡を見れば、第二次政権が考えていることは、どんな人にも判るほど明瞭で、
安倍晋三という人は、もともと経済になど興味がない人で、この人の政治家としての関心は、日本をかつての、誇り高い、大義を奉じてアジアの盟主としての軍事力をもった「世界に冠たる日本」を復活させるという復古主義者で、自分の政治的使命は国民ひとりひとりが共同体のためなら生命も惜しまない「美しい国、日本」を復活させることだと固く信じている人です。

第一次政権のときは性急に「美しい国」国家主義をめざしすぎて失敗した。
裕かな名門の家のおぼっちゃまで、なに不自由なく暮らしてきた安倍晋三の想像を遙かに越えて、現実の「美しい国」の住民は「カネくれ、カネカネ、カネくれよカネ」で、他のことは考えてもらえない人たちだった。
安倍晋三という人は個人としては、選挙区の選挙民たちがいっせいに差し出す手の洗礼を受けていたといっても、首相になってずいぶん傷付いたのではないだろうか。
後藤田正晴の伝記を初めとして、 佐藤栄作、大平正芳、田中角栄ですら、日本の政治家の自伝・伝記のすべてに共通しているのは、自国の国民の、上目使いでしつこくカネを要求する卑しさへの深刻なショックで、どの人も日本人は餓鬼か、とまで思い詰めてしまう。
安倍晋三も同じ衝撃のなかで退陣したのだと思います。

教訓を胸に第二次政権をスタートした安倍晋三たちは、今度は「景気をよくする」「あんたも儲かる」ということを前面に出すことにした。
「やりたいこと」は、あくまで「美しい国」の現実化だが、その意図は秘匿して「もうかりまっせ」だけ口に出す賢さをみにつけていた。

これがどれほど日本人の本質に訴えたかは、そのあとの歴史を見れば判ることで、アベノミクスという芸能プロダクションのプロデューサーか広告代理店の「日本人なんてバカの集まりだから」が口癖の、顧客をなめきった態度で、しかしいつもキャンペーンを大成功させるカミソリ社員が考え出しそうな名前を考え出して、日本人が「弱い」ので有名な大学知識人や著名な外国人も動員することも考えたかどうか、つまりはAKB48を売り込むのと、まったく同じ手法で国民全体という職業冥利につきるマーケットを支配していった。

高度成長期の終わりからバブル経済期の最も脳天気で現実感稀薄な環境で人となって、悪くいえば先人の努力と蓄えをただ食いつぶすだけで50代というような年齢になっていた、いつもわけわかんない大庭亀夫用語で言う「無責任おじさん」たちが音頭をとって、
自民党は大勝でアベノミクス大成功の虚空に浮かぶバルーンがふくらんで、思うつぼだったが、
多分、黒田総裁たちだけは、その陰で青くなっていたのだと思います。

財政の命綱の準備金の中身は国債が(信じがたいことに)7割を越えていて、大胆さに外国人たちが目を見開いてぶっくらこいていたのが、いまでは笑いだしてしまうようになった「買いオペレーション」も前述の桁になって、財政の実質はとっくの昔に破綻していて、ただ他国では戦時にしかみられない「お国のため」の国民モラルと従順さと、自分の生活よりも政府の都合に立ってお互いに説教しあう奇妙な国民的な癖とで、かろうじて保っている。

この賭場は、世界じゅうから集ってチップを積み上げて勝ちが保証されているギャンブラーたちによれば、あと3年は開帳されて、実際の経済と乖離した株式市場だけが上りつめて、めいめいが、いまの時点でも何十億円とリスクのないリターンを受け取っているようですが、そのあとは、どんな経済になるかは想像がついても、社会はどんな社会になるのか、そこではどんな文化が起きるのか、そっちのほうに興味がある。
なにを言っても、ありとあらゆる屁理屈を発明して耳を貸さず、いつもいつも言うので耳にタコができてイボコロリでもとれなくなっていると思うが、
「なにもしないためならなんでもする」、見ようによっては愉快な国民性なので、そっちのほうは日本人全体にお任せするとして、
社会や文明は、どうなるか、面白そうだと思っています。

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