ニュージーランド八景(その1)

el_faro

ノースショアという。
オークランド市街の北側に広がる住宅地で、1994年だったかにオーバニーモールを中心としたおおきな規模の開発が行われたことで、その前からあるタカプナやワイラウも開けて、最近はとても人気がある。
むかしは新開地らしくサービスがひどくて、まだこのモールができたばかりのころ、かーちゃんが妹をつれて買い物に行くというので、チャアアーンスと心のなかでつぶやいて、わしは、じゃあ、遠慮してここにいますから買い物が終わったら、また会いましょう、と述べて、後ろ姿を見送ってから、ダッシュでマクドナルドに行って、フィレオフィッシュを注文した。
普段は、コーラやマクドナルドを、かーちゃんが蛇蝎のように嫌っていたのを知っていたからです。

ところがフィレオフィッシュ一個つくるのに、どうしたらそうなるのか、20分もかかった。
当然、ばれました。
かーちゃんは笑っていたが、わしは息子として体面を失ったので、おのれマクド、と考えたりした。

開発が進む前は、真っ白な、欧州系ばかりの地域で、そのあとで韓国の人たちが集住しはじめて、いまは留学生やなんかを含めると10万人以上住んでいるとかで、自然、韓国料理屋でおいしい店がたくさんあります。
オークランドのエスニック料理店のよいところは、出身国の店をそのまま出したようなオーセンティックな店が多いことで、衛生基準だけがニュージーランドスタンダードで、マンハッタンと同じで(と言ってもNYCのは割とええかげんだが)、頻繁に行われる衛生検査の結果を店の見える所に貼り出さなければいけないことになっている。
韓国料理屋はたいていAだが、わしが好きなアフリカ人のフライドチキン屋はEになったり、やる気がでて突然Aになったり、またEに転落したりで、観ていてなかなかオモロい。

Eは「食べて病気になっても店やカウンシルに責任を求められない」
「1ヶ月以内に改善されない場合は店を閉鎖しなければならない」とかなんとかで、あのフライドチキン屋の主人は、多分、一気に土俵際に追い込まれるタイプの人生の快感が忘れられないのだとおもわれる。

スンドゥブヂゲ(豆腐チゲ)を頼むと、まず4〜8皿の小皿料理が出てくる。
キムチ、は必ずある。
もやしの「おひたし」みたいなのがあって、牛肉のすじ煮、こんにゃくの、どうしてるんだかよくわからない料理、さつま芋の甘露煮、カクテキ…というようなものが出てきて、全部タダで、お代わりも自由です。

観察していると、ダメなら言えばいいのだよ文化の中国の人たちは、どんどんお代わりを頼んで、どうかすると5回くらいお代わりを頼む人がいる。
そうすると韓国料理屋がわは、少しずつ少ない量をお代わりで出す。
だんだん、限りなくゼロに近づいていくので、観ていて、なんとなく昔、数学の教室で教わった微分の定義をおもいだす。

スープが到着すると韓国の人はだいたいにおいて一緒についてくるご飯をスープにいきなりいれてしまうようにみえる。
中国のひとたちはときどき思い出したようにご飯をスープにつけている。
日本の人は、スープとご飯を交互に食べている。
わしも同じだが欧州系人はご飯を食べない人も多くて、わしなどは、毎度毎度「ご飯はいりません」と述べるのを忘れて後悔する。
スープと一緒にやってきたご飯を観て、ぐわああああ、と考える。
また断るの忘れたやん。

東京では「高くて不味い」印象だった韓国料理がオークランドでは、チョーおいしい料理で、冬になると、韓国料理屋を見つけては、よくクルマを駐めて、モニとふたりで食べにはいった。
韓国の人は親切で、まるで家の客人のように客をもてなします。
英語は上手とは言えないが、韓国語を話してみると、大笑いしながら、直してくれる。
ちゃんと顔をおぼえていて、ハローが、二回目はアンニョンハセヨに変わる。
ふだんから韓国の人や韓国系人を見慣れているので、そう言っては悪いが、東京で「韓国人でていけ」をやっている人が、ひどく頭のわるいマヌケな野蛮人にみえてしまう。
慰安婦議論に至っては、韓国の人は、どうしてあんな議論を我慢して聞いているのだろうとおもう。
日本人は忘れているが戦後すぐには、ごく普通の主婦ですら米兵相手に売春せざるをえない人がたくさんいて、教育がない人間も多かった米兵たちは、売春婦の日本人たちを人間として扱わず、単なる性具とみなして「酷使」する人間も多かった。
繁栄がもどってくると、そういう日本の女の人達は沈黙して、過去を知られるのを極度に恐れたが、たいへんな数で、有楽町のおときでなくても、インタビューも残っている。
慰安婦議論を観ていると自分の母親を売春婦と罵っているような無惨な印象が起きる。

韓国人を殺せ、韓国人でていけ、慰安婦はビジネスでやっていただけだ、と述べる日本の人達は、現実には、韓国系人たちと毎日顔をあわせて、話をして、東アジアの人特有の、陽だまりのような暖かい親切や、明るい笑い声にふれている欧州系人たちに直接悪罵を聴かせているのと変わらない。

英語の解説付きで伝えられる嫌韓運動の様子と、なによりも、それが社会的に許容されていて、いつまでも続いていることが欧州系人たちにショックを与え、日本社会だけでなく、日本人自体と日本文化に対して疑いをもたせて、最近では、日本人の同僚というようなものにまで、まともな人間らしく見えるが、ほんとうの内心の姿は、どうなのだろう、というような疑念を持つ人まで出てきている。

韓国料理屋を出て、橋の反対側にある家に戻る途中で、タカプナにおりて、タカプナの、住宅地が砂浜に張り出している、不思議な高級住宅地のあるタカプナビーチをのんびり散歩する。

新しく出来たニュージーランドらしくない洗練されたバーがあって、モニとふたりでシャンパンを飲んで遊ぶ。
どうせ、いつかは帰るんだから、いまはまだ欧州ではなくて、ここでいいじゃない、ガメ、とモニさんが言う。
モニさんが言うなら、いちもにもないので、いいですよ、と述べながら、わしは、ニュージーランドの空の特徴の、でっかい積雲をみあげています。

シャンパンもおいしいし、まあ、いいか、と考える。
ヘンな国に長居することになっちゃったけど。

青空、きれいだしな。

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