補給線という最前線

moon

アフガニスタンで戦う海兵隊員のあいだで最も人気がある兵器といえば
Javelin
https://en.wikipedia.org/wiki/FGM-148_Javelin
でしょう。
いまちょっと日本語のページをのぞいてみると「対戦車兵器」と書いてあって、もちろん英語でもfire-and-forget anti-tank missileだと書いてあるが、些細な点といってもそういうところが翻訳というもののオモロいところで、バズーカのむかしから、アメリカ軍は対戦車兵器を対歩兵兵器として使う習慣をもっていて、なんだか「タイセンシャ」と述べた途端に戦車にしか使わない印象をもつ日本語人と、違う印象になっている。

ジャベリン、つまり投げ槍という名前がついたこの兵器は、戦車など持っていない、主な機動力がホンダのオートバイであるタリバン兵相手にどんな使われ方をしているかというと、ライフルの射程より遠いところにいる敵を殺すのに使う。
ライフルの射程よりも遙かに離れたところから、たとえばモーターを撃ってくる敵に対して使います。

世界のアヘンの90%以上がアフガニスタンで栽培されて、アフガニスタンのおしもおされもせぬ主要産業で、タリバンは、ひとつひとつのグループが麻薬シンジケートの性格を持っている。
民衆に心情的に支持されているとはいえないタリバンが、いったん制圧されたかにみえたあと、あっというまにアフガニスタンのほぼ全土を取り返してしまったのは、つまりは麻薬ディーラーとしてのカネの力で、メキシコの状況と似ていると言えなくもない。

ケシの栽培にはおおきな面積の平地が必要で、自然、タリバンの掃討に向かう海兵隊員たちは、例のOspreyで戦場の徒歩圏内に運ばれたあと、石で出来た民家/コンパウンドから民家へ、広大なケシ畑に全身を露出して歩いて移動することになる。

その海兵隊員たちをタリバンは銃器の射程ぎりぎりのところから付近に点点とある民家の石壁を穿ってつくった銃眼から、あるいは点在する並木の下に潜んで狙撃する。

2,3分射撃すると、オートバイや徒歩で、移動してしまう。
死体も、薬莢も、それどころか飲み水がはいっていたペットボトルすら残さないのは、米軍は各小隊ごとに指紋照合データベースの端末をもっていて、絶えずタリバンメンバーの指紋を収集し照会しているからです。

ものすごく高価だが、海兵隊員に人気があるJavelinが掃討作戦にあたる小隊に一個配備されることになったのは、そのためで、アウトレンジからコンパウンドごとふっとばしてしまえる。

海のようなケシ畑のなかを、常に移動している姿のみえない敵と戦いながら、民家や、民家の地下につくられた麻薬製造工場と武器弾薬貯蔵庫をひとつずつ破壊してゆくフラストレーションが高い作業が海兵隊のアフガニスタンにおける「作戦」の内容で、タリバンが戦力を急速に失いつつあるのも、逆に、支配領域は急速に回復しつつあるのも、「浸透はするけれども確保はしない」、人的被害を最小にするための、このアメリカ軍の旧ソ連軍の二の舞にならないために工夫された新しい戦略によっている。

日本での「兵士の派遣」についての議論を観ていて奇異におもうのは、想定している戦場が大時代なことで、あれでは誰がみても、やはり戦争に対する思想が滑稽なほど時代遅れの人民解放軍のみを想定しているとしか思えないのに、人民解放軍の中国が仮想敵国ならばまったく必要のない集団自衛権をしゃにむに実現しようとしている点です。

ついでに余計なことをいうと、国会で答弁に立ったりしている元軍人は、温厚な人に見えたが、上に書いたようなことは、軍人の常識として知っているはずなのに、それは黙っていて、あたかも現代の戦争が第二次世界大戦の戦争思想で戦われているような錯覚を日本の国民に与えているとおもう。

PBSがあって、戦争賛美ふうのFOXもあれば、CNNの特集がある、旧来からのネットワークも折りに触れてドキュメンタリをつくる。
アメリカならば、たいていの国民は、アフガニスタンやイラクで、どんなふうに戦闘が行われるか知っている。
視覚的に理解しているので、戦争に対して的外れでないイメージを持っている。

キーワードは「姿を現さない敵」「至る所にしかけられた地雷やIED」

https://en.wikipedia.org/wiki/Improvised_explosive_device

で、ブービートラップで手や足をふきとばされる兵士の、あまりの数の多さに辟易したアメリカ軍が、最近は、民家にはいるのに門扉を開くことはせず、支援戦車が体当たりして石塀を壊すか、プラスティック爆弾でふきとばして敷地に足を踏み入れる。

勘のいい人はすでに気がついたと思うが、戦争の形態が会戦の対極にあるような、少しずつ敵の生命をそぎ落として戦意を喪失させることに集中したものになっていくと、もっとも狙われるのは補給線で、補給兵です。
アフガニスタンでは補給部隊が襲われると、20〜25分でガトリング砲
https://en.wikipedia.org/wiki/M61_Vulcan
を装備した重武装の攻撃ヘリが支援して掃討する仕組みになっている。

それでもアフガニスタンのようにごくごく限定された地域で、言葉がわるいが国際社会への言い訳のような掃討作戦を行っているうちはよくても、完全に制圧した地域の内側の回廊をとおっていける、こういう特殊な場合から一歩でもでて、通常の浸透作戦にはいると、真っ先に狙われておおきな被害をだすのは補給部隊で、狙う側のタリバンやISIS側から考えれば、当然すぎるほど当然なことにすぎない。

たとえばアメリカ軍の標準では、日中は華氏140度(摂氏60度)を越える地表温度の両地方を行動する兵士のために、一日6リットルの水を飲むことを義務づけている。
義務づけている、と書いたが、兵士のほうでは、義務どころか6リットルでは全然足りないので、少しでもいいから増やして欲しい、と言っているようです。
二週間単位の掃討で、10人にひとり程度の兵士が熱中症になってメディックのヘリコプターで後送される。

この飲料水と弾薬だけでもたいへんな補給量で、アメリカ軍はJavelinのような、気が遠くなるような値段の、ぶわっか高い兵器を、2,3人のタリバンを殺すのに使うのを観てもわかるとおり、「湯水のようにカネを使って自国人の兵士はひとりも戦死させない」方針で戦争に臨んでいるので、現代のアメリカ軍はベトナム戦争当時に比べて比較にならないおおきさの巨大な補給部隊を持っている。

ところが、アメリカ軍に正面から立ち向かう戦力を持つ軍隊など、この世界には存在しないので、相手側は、自然、この補給部隊を攻撃することに専念することになる。

補給部隊は海兵隊の将校たちが「マリーンは軍隊の性質として、圧倒的に攻撃的」と述べるように、捜索して攻撃して殺せ、と徹底的に教え込まれる海兵隊の一線部隊とは異なって、自発的に攻撃をすることは定義上もありえないので、上に述べた理由で危険なこの任務を「防衛専門の日本軍にやらせればいいではないか」という議論は、ベトナム戦争の昔からあります。
第一次湾岸戦争では、日本が、この補給の任務を断ったので、前線ですら「同盟への裏切り」と感じる兵士が多かったとも聞いている。

いまの憲法を無視してまで進めている「戦争法案」が平和のための法案だというのは、単なる言葉の遊びで、言っている方も自分が述べていることを自分で信じるほど頭がわるいわけではない。
おおもとにあるのは第一次湾岸戦争の戦費をほとんど日本一国で支出したといいたくなるくらいのオカネを拠出したのに、クウェートの「友人諸国への感謝文」の長い国名のリストには日本が含まれてさえいなくて、呆然として、国としての最大の恥辱をうけとった政府の苦い記憶だとおもいます。

だから支援部隊に限る、というのも70年鍵をかけられて、戸口に錆び付いて、壁のいちぶになってしまったかのような重い戦争へのドアを、なんとかしてこじ開けるための方便、簡単にいえば嘘なのだろうと推測するが、仮に支援部隊に限っても、最前線と補給線の差は、担当する兵士に必要な訓練の差であるだけで、危険度においては変わらない、というよりも現状は、ほんの少し敵側に踏みいっただけで前線部隊よりも補給部隊の死傷率のほうが高いことは、特に軍事知識がなくても、直感的にわかる。

マスメディアによる現代の戦争についての、視覚的な情報の共有がない社会で戦争に関わるいかなる取り決めをすることも危険なのは、だから、言うまでもないことで、日本政府のいまのやりかたはフェアでないなあーとおもう。

国民をつねに愚かな人間の群と想定して、まるで羊飼いとシープドッグのように自分たちが連れていきたい場所へ連れていこうとする日本政府は、つまりは、ほんとうは人間である日本人を羊なみの生命の価値しかない存在に変えてしまおうとしている。
出来れば頭のなかみの耳と耳のあいだも、羊なみにしたいと熱心に試みている。

家畜のなかでも特別に頭が悪くて、何事に対しても過剰に反応するだけの羊たちになぞらえて、英語人は落ち着いた思考力をもたずに煽動にばかり乗る、そのくせ臆病な国民をよく「羊の群」と、羊さんたちが聞いたら怒り狂いそうな表現をするが、その羊に人間を変換してしまって、羊人間に複雑な現代世界のシステムのなかで勝ち抜かせようとしている、不思議な政府であるという気がします。

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