The Ghost Society

ちょっと変わった話をしようと考える。
こういう話です。

軍事オタクの人は、数字が読める人ならば、日本はアメリカに物量で負けたというが、それにしても計算があわない、と考えたひとがいるはずであるとおもう。

もう何回か書いたようにアメリカにとって主戦線はヨーロッパで、ここにはブラックドラゴンと呼びたくなるような、規律が行き届いて、他国の軍隊と較べてずば抜けて強いナチがいて、しかもヒットラーの素人軍事オタクらしい読みの甘さから二正面作戦に陥る失敗から守勢にまわったあとでも、今度はスターリンの欧州支配を避けるために、侵攻速度を速めなければならなくて、ますますおおきな国力をこちらのほうに傾けなければならなかった。

したがって太平洋戦線は海軍を主戦力として日本を圧迫しておけばいいだろうということになって、陸軍は装備も二流、師団も訓練がなされていない師団を太平洋にまわして戦うことになった。

その、万事あとまわしの第二戦線の敵国だった日本から見ても圧倒的な物資で、戦争後期になると冗談じみた数の航空機や空母の数になってゆく。
実際、数字をじっと見つめていると、ドイツ側と較べて、あんりぃー?と思うくらい数字が巨大になっている。

‘Rosie the Riveter’という。

デトロイトの工員がモデルのポスターで、B24リベレーターを作っている工場の人だが、この工場は工員が殆ど全員女の人達だった。
日本の、もうどうしようもなくなってから「女の手も借りたい」で動員された女子高校生の非熟練工とは異なって、中核は戦争の前はフォード自動車を生産していた熟練工たちです。

十代の非熟練工を動員した結果、ひどい品質低下に陥って、スペック通りの性能がまったく発揮できない兵器を量産した日本側と異なって、大量に兵士を訓練する一方で、というのは、つまり男たちを生産力から大量に戦場へ移動させても、経済成長が低下するどころか高成長に移って、特に工業生産が飛躍的に伸びていったのは、要するに、女の熟練工たちの力でした。

あわない数字の種明かしは割と簡単で、優良な「アーリア人種」の子供を量産することが役割だったドイツ人の女の国民や、もともと何も社会的な能力を期待されておらず、良い「軍国の母」であることだけが期待される役割だった大日本帝国の女のひとびとと異なって、アメリカでは生産力は当時すでに確立されていたマスプロダクションのシステムを動かす女工員たちが中心だったので、同じ人口なら単純に2倍の人的資源があったことになる。
ドイツも日本も、一面では、自分たちのジェンダー偏見によって戦争に敗れたのだといえなくもない。

日中戦争を描いた三部作「戦争と人間」には、灰山浩一という画家が出てくる。
兵卒として徴集されてノモンハンの戦場で片腕を吹き飛ばされた挙げ句戦死する。
あるいは画家をめざして大阪で働きながら学んでいた水木しげるも、一兵卒として徴兵されて、南の島で片腕を失う。

ノルマンディ上陸からVEデーまで、一貫して大活躍して、戦線から戦線へ引く手あまたで、部隊としての行軍距離が連合軍中最大だった第23特殊部隊は、その大きな軍事上の効果から冷戦終了まで存在が秘匿されていた。
世の中の人が存在を知るようになって、その対ナチ戦争で果たした役割のおおきさに驚いたのは、多分、2013年にPBSがつくって、繰り返し放送される大ヒットになったドキュメンタリ
「The Ghost Army」
http://www.imdb.com/title/tt2649274/
が初めでしょう。

イラストレーターや画家の卵、若いデザイナー志望の若者たちをアメリカ中から集めたこの部隊は、大規模な「ニセ軍隊」をつくるのが役割だった。
実物大の戦場ジオラマだ、といえば、軍事オタクのひとびとはピンと来るかもしれません。

ゴム製のM4シャーマン戦車やM3ハーフトラック、M114榴弾砲に至るまで、本物そっくりに手作りで作り上げて、ゴム風船の兵士までつくった。
いま画像をみると、ブルドーザを使って戦車が走り回る轍まで地面に描いてあって、文字通り芸術的な出来映えです。

この視覚的に本物そっくりの大部隊を作っておいて、音響車を使って、エンジン音や、
「そこのマヌケ!煙草の火を消せ!バカかおまえは」というような鬼軍曹の怒鳴り声まで流されて、ドイツ軍は、ヨーロッパ戦線の至るとこで、すっかり攪乱されてしまい、連合軍の攻勢点を誤解して、見当外れの場所に防衛力を集中してしまう。

いったい、この人は何の話をしたいのだろう?
と、クビをひねっているきみの姿が見えるようです。
実は「集団作業」の話をしている。
The Economist、 Financial Times、Newsweek..
さまざまな英語メディアが記事や論説として書いているのに日本語メディアが一貫してシカトしてきた外国人たちからの日本経済低迷の原因の指摘に日本社会の「激しい性差別」がある。
なぜ人口の、文字通り半数を占める女のひとたちを日本経済の回復力として採用しないのか?
こういう記事に対する反応は、だいたいの場合、
「日本社会ではほんとうは女のほうが優遇されている。差別されているのは男のほうです」
「外国人には日本社会特有の事情は判らないのだから黙っていてほしい」
だそうで、記事として、はなはだしく人気がないらしい。
むかし、日本にいたときに不人気の理由を訊いてみたら、
「女のひとたちは政治や経済に興味をもたないからじゃないかな」と言われて、出来すぎで、笑うのを我慢するのが大変だったのをおぼえている。

それぞれ、ぎょっとするくらい異なる「個人」が存在しなければ「集団作業」は成立しない。
個人が全体の一部であるような社会が急成長はしても成熟しないまま没落する、歴史が一貫して示してきた社会についての不思議な真実は、要するにそういうことで、そういう社会での「集団」は、企業にしろ、社会全体にしろ、軍隊でしかありえず、軍事行動じみた、右向け右の軍事行動ふうな集団行動以外はなしえない。
それを「集団行動」「集団作業」とは言わないでしょう。

研修制度という名前で奴隷労働力を輸入して、またも慰安婦訴訟と同種類の将来の日本社会全体の犯罪への集団訴訟を準備してしまったり、旧産業の都合だけででっちあげた、人月で換算できそうな非人間的な労働をあてにして「一千万人移民計画」を立てたりしているが、結局は、ひとりひとりの人間を人間として待遇できる社会と、自分個人の観点から社会を観る習慣をもった個人とが生まれなければ、どんどん人口全体が腐って、社会としての才能が損なわれてゆくだけで、やがては社会の構成員である日本のひとたちも、自分たちの社会の非人間性に気づいて、子供をつくらず、冷たい、さめた態度に終始する「一億総評論家」のようなバカバカしい畸形社会になってゆくに違いない。

見るからに「わたしに勝てるもんなら勝ってみい」のRosie the Riveterも、
待避壕からゴム製の機甲師団に爆撃や砲撃を繰り返す全体主義者たちのマヌケぶりを観てニンマリする若い芸術家の卵たちも、国全体が兵舎のような社会では生まれてこないのではないかとおもう。

ヘンな話で終始して、ごみんだけど

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One Response to The Ghost Society

  1. snowpomander says:

    いまここらへん:閑話休題とてもふつーで筆が暖かい、ガメさんお酒飲んで書いたのかな。「子供をつくらず、冷たい、さめた態度に終始する・・・畸形社会に・・・」なってるなってる。草ぼうぼうの「wwwしか書けない一億総評論」国。

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