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ブラウンアイランド、という。
草地がいつも枯れた色で、茶色に見えるので名前が付いたというが、ここ数年は雨が多いので、緑に覆われていてグリーンアイランドになってしまっている。
天気がいい日には、ボートを寄せていって、ディンギーを下ろして、浜辺に上陸する。
ピクニックに向いている島です。

オークランドという町の第一の特徴はハウラキガルフとセットになっていることで、他の港湾都市と較べても海の比重がとてもおおきい。
ちょうどカフェで歩いてとおりすぎる人達を観察して遊ぶように、波間に揺れているブルーペンギンや、ゆっくりボートを進めていれば、寄ってきて、並走して、挨拶までしてゆくイルカたち、あるいは雄大な黒い身体を、いつ見ても、どうすればああいうことが出来るのか不思議な、ひどくゆっくりであるのに、びっくりするほど高くジャンプするオルカたち、あるいは神秘的な呼吸音を響かせながら近づいてくるクジラの姿、海にはさまざまな住人がいて、あきるということがない。

日本は、あまりボーティングが盛んでない国なので、イメージがつかみにくければ、別荘が海の上に浮かんでいるのだと考えれば、いちばん印象として近いのかもしれません。
ボートにもキッチンがあって、ホールウェイがあって、バスルームもあれば、ラウンジもある。
別荘とは異なるのは、よく英語でも「穴の開いたバケツ」と言う。
維持にかかるオカネがバカみたいな金額になることで、4億円のボートなら、年4000万円、というように毎年ボートの価格の1割が財布から出ていってしまう。
オカネの理屈から言うと、最もアホな使いかたで、だから、ヨットやボートの持ち主達は、特にオカネモチが集まるマリーナでは、カネモチはケチと決まっていることを反映して「こんなにカネがかかるのは辛抱たまらん」と言って嘆きあっている。
近くのバースに船の神様が見たら嫉妬しそうなほど優美なヨットを持っている仲が良いじーちゃんは、「浪費家のうちのカミさんよりカネがかかる」と述べていて、40歳若い、チョー美人の奥さんと結婚して、そういうことが嫌いなニュージーランド人たちに年中陰で悪口を言われていることを熟知している口調で、笑わせられたりした。

海に出ていかない人が陸側から見る海は、実際には観念的な存在で、現実を見ているわけではない。
いわば文学的な表現を眺めているだけで、あたりまえだが、海の美しさは、よく考えてみると、言語が喚起したつくりものに似ている。

安物のカヤックで、浜辺から5,6キロのところに出るのでもいいから漕ぎ出てみれば、もう(多分、視点が低くて水面に近いせいで)実感されるが、海は容赦のない場所で、自然というものの残酷さを実感するには最適の場所であるとおもう。

ハウラキガルフは真鯛が簡単に釣れるので知られているが、鯛を釣りあげると、餌にくいついて釣り針にひっかけられてあがいている鯛の後ろ半分が他の魚に食いちぎられていたりする。
無惨、というか、初めのうちは生命世界の剥き出しの残酷さにげんなりします。

ただもう生きていくことに必死で、他にはなにもないのが海で、しかも気まぐれで、例えば、凪いで、まったく穏やかな波もない夜に、理由もなくおおきなうねりがやってきたりする。
ボートが転覆するような巨大さで、突然ボートから振り落とされそうになるこちらは「不条理」という古めかしい言葉をおもいだす。

一方では、南半球では正しく真上の空を横切って、空を区画している、水に溶けたミルクが煙っているような天の川を眺めながら、モニとふたりで甲板に寝転がって、ああ、ここは惑星なんだ。きみとぼくは宇宙に住んでいるんだ、と、アホな感動に耽る夜がある。
誰もが考える、星って、こんなにたくさんあるんだ、という流れ落ちる滝のような、すさまじい数の星を眺めて、目がまわるような気持ちになる。

人間は、どんなに努力しても、何にもなれはしない。
波打ち際に打ち寄せて虚しく生命を終わる夜光虫のひとつひとつと、一個の人間とは、笑ってしまうほど等価なのだと発見する。

考えてみれば皮肉なことで、オークランドという町は、海の文明の側からみれば陸の文明などは、全体が単なる意匠でしかないことを証明するために繁栄しているようなもので、この組み合わせを考えたのが神様なら、神は人間には想像がつかないほどコンジョまがりなのであると思う。

人間は現生人類がアフリカの小さな村を出て世界中に歩いて散っていった5万年前からいままでの大半を、この地球上の生物の1%以下の勢力として暮らしてきたが、この数世紀で、99%にまで膨れあがった。
いまでは地球は瀕死で、もうすぐ惑星として死に絶えるだろうことは誰でも知っている。
人間がそのことを深く考えないのは、「いままでにいちども地球が惑星として死に絶えたことがない」という冗談風な理由によっている。
人間の言語自体が経験をもたないことなので、言語表現、すなわち思考の死角のなかに、すっぽりと危機感そのものが落ち込んでしまっている。

オーストラリアからオカネモチたちがぞろぞろとニュージーランドに越してくるのは、話してみると、「海がまだ生きているゆいいつの国」だからだった。
「グレートバリアリーフなんて、死の海になってしまってるのさ」と言う。
常時40隻を超える観光ボートが錨を下ろしていて、そのアンカーが珊瑚を殺して、珊瑚を生態系の中心にしている生物がみな死に絶えてしまった。

日本ではあまり話題にならないことだが、英語世界では長く非難されているように、日本の、効率を追究するあまり根こそぎに魚をとってしまう漁法は海を水で覆われた砂漠に変えて、干からびた海は広がって、ブラジル人と話していたら、日本の漁船団はブラジルの目と鼻の先で根こそぎ魚をとりつくすのだと言って、ものすごい怒りようだった。
あいつらは、泥棒だ、とまで言う。
ブラジルの漁船は、日本の大規模船団のせいで、次々に廃業に追い込まれているそうでした。

マオリ人たちと話していると、「もうすぐ日本の船団がニュージーランドの近海にも、また現れるだろう」という。
また、というのは70年代だかに日本の156隻の大船団がイカを根こそぎに取り尽くすので外交問題にまで発展したことがあって、ニュージーランド人の毎夏の強い緊張の原因になっている日本の捕鯨船団だけでなく、マグロやカツオにまで及んで、魚が絶滅するのではないかと言う。
マオリ人たちはニュージーランドの浜辺と近海の大家さんのような気持でいるので、日本の船の姿を見るだけでたまらない気持になる人が多い。

やがては韓国船や中国船も近海に現れるのは判っていて、つまりは、他の海が死に絶えてしまったので、もう南極が近い、こんなド田舎の国にまでやってくるもののようでした。

地球の温暖化の最大の原因は、クルマの排気ガスよりもなによりも「家畜を飼う」ことであるのは、よく知られている。
メタンガスによる温室効果は、数字は忘れてしまったが、クルマの排気ガスのような生活活動による気温上昇の数十倍で、数字をみると、ほんとうは牛肉を食べ続けるのは、そのまま環境に対する犯罪行為で、なぜそれが問題にならないのかといえば、アメリカもフランスもイギリスも、要するに畜産国で、そんなことを言い出してしまえば、自分たちの文明そのものをあきらめざるをえないからです。

しかし、では、どのくらいで食料資源がつきはててしまうかと言えば、早ければ2050年というような予測まであって、読んでいると、ええええーと思う。
なんだ、それは。
2050年て、おれは、もしかして、まだ生きているのではないか。

それでも「頭は心配しているが心は心配していない」状態なのが人間のバカなところで、本人もご多分にもれず「まあ、なんとかなるんだろう」の気楽さで、要するに愚かなだけだが、甲板に寝転がって、春の日差しにごろごろしながら、明日は何を食べようかなー、ハーフムーンベイに寄って、マリーナのタイレストランでビーフサラダを食べるのはどうか、と考えている。

われながら不思議な愚かさで、なるほど夜光虫と変わらない。
人間は考える葦であると述べたフランス人は、あのあとに、考える葦でも、考えなくても、本質的には同じことなんだけどね、とどうして親切心を発揮して付け加えてくれなかったのだろう。

いろいろに考えても、春は春で、知力も眠ければ感情も眠くて、ものをちゃんと考えないということは、なんて素敵なことだろうと思いながら、午寝をして過ごしています。

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One Response to

  1. 星野 泰弘 says:

    日本が明治維新で富国強兵を望んだのは、いくら小さな国の中で工夫を凝らしても、新天地を獲得した大国に踏みにじられてしまうことを、黒船来航で悟ったからだと言われている。そのようにして、小国は自らの活路を求めるためにも拡大主義に走るようになった。北朝鮮が核兵器保有に拘るのも、核を持たない小国など国家として扱われない現実があるからだ。「オーストラリアの海が絶望的なら、そこに植林して生活できるようにしよう」という考えもある。そのようにして100年後の未来のために日本は中国に植林をしたりしてきた。「オーストラリアの海が絶望的だから、ニュージーランドに逃げよう」という金持ちは、イギリスを出て、オーストラリアの自然を破壊し続けている移民の末裔の考えとして尤もらしいと思う。日本が「継続的に活用できる鯨を調査しよう」と調査捕鯨を呼び掛けても、門前払いをする欧米国はかつては、鯨を肉を捨てて脂を取るためだけに乱獲してきた。移民でも、イギリスからオーストラリアやアメリカに移民してきた頃と、現在はまったく異なる基準で査定している。

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