北へ

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モニさんのcitizenshipを取りに行って来た。
簡単に言えば、モニさんのニュージーランドパスポートを取りに行った。

モニさんは、朝、すごく緊張していたが、面接官はチョーいい人で、まずモニさんをリラックスさせようとして、自分もフランスに行ったことがあること、素晴らしい経験であったこと、自分がフランス人に対して大きな敬意を抱いていることを、しつこいくらい述べていた。

部屋を出るときに、「じゃあ、モニがパスポートをもらえる確率はかなり高いのですね?」というと、そのひとは、
「もし、モニさんがパスポートをとれなかったら、わたしはダイビックリであると思う」と言った。

(われわれは、夜遅くまで語りあったものだった)
(いま、このときの世界で、住むのにいちばん良い国はどこだろう)

(髪を赤く染めて、ふくらはぎの裏側一面にでっかいタトゥーをいれて、それでも、誰もふり返らない国がいいよね)
(ぼくは、ハンバーガーがおいしい国じゃないと嫌だな)
(オーストラリア!)

日本語だと、「内務省」だと思うが、待合室にいると、いろいろな人がいる。
東欧人とロシア人が目立って多い。
もうメッチャクチャ緊張して、ロシアのパスポートを握りしめてる女の人がいたので、リラックスさせようとして、ロシア語で話しかけてみる。
こんなに、待たせられるのは、たまらないよね。
その人は英語で答える。

ええ、ほんとうに!
でも、このくらいはなんでもない。
わたしの国においでなさい。
わたしの国の役所の非能率はひどくて、こういうことをするのに、まる一日かかります。

「よりよい生活」を求めて、この狭い事務所スペースにつめかけたひとびと。
自分にも幸福になる権利があるのだ、と信じているひとびと。

もう涙ぐんでいる、わしを見て、笑っているモニ。
ガメはヘンなやつだな。
あなたは、いったいどうやって、この苛酷な世界を生きてきたのか?

でもさ。
わしは、いつだって、幸福になろうとして全力をつくす人々が好きである。
人間が自分自身を幸せにしようとする努力は素晴らしいと思わないか?

もちろんですよ、
と面接官が答えている。
わたしたちは、ニュージーランドをこの世界の希望にしようとして頑張っている。
こんな小さい国では無理かもしれないけど、ひとりでも多くの人を助けようとしている。
あなたがたのような欧州人カップルには判らないことかもしれないが、この新世界は、自分の国の政府のせいで自分の生活の設計ができないひとびとで溢れている。
ひとりでも多く、そういう人々を(ニュージーランドパスポートを渡すことによって)助けられれば、と考えている。

家に帰って、芝の上にラウンジャーを出して、フランス人たちが届けてくれたワインを飲みながら、ニュージーランドという国の勇敢さについて、モニと話した。

青空に、積雲。
なんという美しい空。

(わたしどもの息子が、あなたに御迷惑をおかけして)

まだ、あの日本人の老夫婦の夢を視る。
あのひとたちは誰なのか。

言葉から考えると明治の人である。
それはそーであるとして、誰のことを言っているのか。
「わたしどもの息子」とは誰か。

(畳は沈む)
(畳は沈む)

沈黙よりも、さらに静かな場所へ。

考えてもみたまえ。
この極北に、ぼくは日本語という乗り物で辿り着いた。

それが、どれほど興奮すべき経験か、当の日本人であるきみには判るまい。

でも、ぼくは言語の極北に立っているのさ。

友人たちよ、
そのことの意味を考えよ

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