ドナルド・トランプとヒラリー・クリントン

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ドナルド・トランプが共和党の候補確定になって笑ってしまった。
笑っている場合ではないが、やはりアメリカ人たちのいまの頭のなかを想像すると笑いがこみあげてくる。
事態に英語人の嫌な皮肉の琴線にふれるところがあるのだと思います。

トランプという人は、会ったことがある。
この人はニューヨークでは有名な「パーティ男」だからで、パリスヒルトンの男版というか、特に東欧人系のパーティに行くと必ずと云っていいくらい立っている。
立っているだけではなくて演説をぶちこくのが好きな人で、とんでもない意見ばかりだが、日本でいえばちょうど石原慎太郎で、デッタラメな主張に、ちゃんと喝采がわく人だった。

ここにアメリカ人たちが囁きあっている「恐怖のシナリオ」というものが存在して、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの一騎打ちの形勢になったところでクリントンがemailの一件、あるいはいまは手続きに合っていると見做されている、例えば中国政府筋からの献金が問題にされて失脚する。
「そうなるとトランプがアメリカの独裁者として君臨することになる」と、わし友たちはスカイプの向こう側でユーウツそうな顔をしている。

アメリカの民主主義には、常に不安定なところがあって、マッカーシー旋風
https://en.wikipedia.org/wiki/McCarthyism
を見れば判るが、ときどき観念や感情にひきずられて、社会がまるごと、とんでもないところまで行ってしまう。
共和制ローマ的で、激情から政治システム自体を破壊する傾向がある。

1930年代も危なかったが、アメリカにとっては幸運なことに、極東の小国で軍事力だけが肥大した、いまでいえば北朝鮮の大型版のような国だった日本が宣戦してくれたことで、健全な形で国がひとつにまとまった。
第二次世界大戦がThe Good Warと言われるようになった所以です。

エラリークインという人が書いた小説には
「そんなレーガンがカリフォルニア知事選に勝つみたいな現実味がないことが起きるわけがない」と誘拐犯の悪党が述べるところがあって、レーガンが知事選に立候補したときにカリフォルニア知事になりうるとマジメに考えた人はいなかった。
ロナルド・レーガンはカリフォルニア知事どころか、後年、アメリカの大統領になってしまうが、この人も、ドナルド・トランプと変わらない、デタラメな発言ばかりの人で、「冗談がうまいだけで大統領になった」と評された人でした。

この人がなぜ第40代大統領に選ばれたかについては、アメリカ人ならばたいていは見当がついていることがあって、第39代大統領のジミーカーターが知性的でありすぎたからでした。
アメリカ人は、よく、「アメリカはジミーカーターによって、『善い人』を大統領にしてはダメなのだ、と学んだ」という。
ジミーカーターは、すべてにおいて穏健であることを好んで、外交についても慎重を極めたが、それがアメリカ人たちの神経を踏みつけることになった。
カーターにしては大胆な「イーグルクロー作戦」でイラン人質救出に失敗すると、それまでの「弱腰外交」にフラストレーションをつのらせていたアメリカ人たちの不満が爆発します。

その結果、大統領にレーガンを選んでしまうが、あれほどただの受け狙い男に見えたロナルド・レーガンの下でアメリカは繁栄を回復する。
いまのアメリカ人たちが「どうも大統領というのは、少しくらいバカで乱暴な男のほうがいいようだ」と考えはじめた嚆矢になっていると思われる。

レーガンは、もちろん、インチキな失敗も多い人で「スターウォーズ計画」などは、いまから考えると噴飯物を通りこして、アメリカ人という人々はコンピュータソフトウエアへの理解を根本から欠いているのではないか、と疑わせるに十分な頭の悪さで、中南米に対する「レーガンドクトリン」などは、日頃の発言どおりの破落戸ぶりをみせて、レーガンの頭のなかにある幼稚な世界観をうかがわせるに十分だった。

ところがレーガンが「悪の帝国」と呼んだソビエトロシアが、「100の価値のものを加工して70の価値にする」と揶揄された社会全体の生産性の低さからくる経済停滞に加えて、KGBと軍人たちが強行したアフガニスタン出兵の出費と、なによりもゴルバチョフ自身が「国が経済的に崩壊するか、嘘で塗り固めて国民を犠牲にするかの選択、わたしには国民を救おうとする以外には選択がなかった」と後でインタビューで述べているチェルノブルの核発電所の爆発で、崩壊してしまった。
レーガンが歴代の大統領のなかでもベスト5に入る人気大統領として、いまでもアメリカ人たちに思い出されるのは、そのせいでしょう。

ある種類のリベラルの人が聞いたら激怒するだろうことを述べると、いま名前があがってるなかでバーニー・サンダースが大統領候補としては最悪の選択であると思うが、それを議論するためには、政治というものそのものについての長い議論が必要で、このブログ記事では書けはしないし、自分の日本語語彙が政治用に出来ていないので、英語であることを必要とする。
以前に述べたように英語でものを書くのはオカネをもらわないとやらないことにしているので、その点でも、ブログで何事かを述べることはないと思われる。

日本では、どういう理由からか、当然、最も心配しなければならないことについて言及がないが、日本の人が心配しなければならないのは実は、ドナルド・トランプが大統領になってもヒラリー・クリントンがなっても、日本にとっては良いことがひとつもないことで、このふたりは、安部晋三の浅薄さに辟易しながらも、戦後の同盟体制を維持するために、じっと耐えに耐えていたバラクオバマとは異なって、
「日本を甘やかす結果になって、そのせいで日本の全体主義化を許してしまった」戦後の体制を見直そうという点で一致している。
「日本は好きだが、防衛費は全額負担してもらう」とノーテンキに述べているトランプは判りやすいが、政治的に老獪なヒラリー・クリントンは、実際には(どう転ぶか判らないトランプに較べても)日本を目立たないように切り捨てる準備を行っている点で、日本の安全保障にとっては危険な存在であると思う。

「ヒラリー・クリントンの奇妙な提案」
https://gamayauber1001.wordpress.com/2010/01/24/hillary-clinton/

日本にとっては危険だが、自分に立ち返って、特にNZパスポートの保持者として述べると、この提案はヒラリー・クリントンの外交能力の凄まじいほどの切れ味を示す提案であって、オーストラリア政府やニュージーランド政府が、にやにやしながら飛びついたのは当然であるように思えます。

バラクオバマが慣例を破ってジョンキーと一緒にゴルフのラウンドをまわったことは世界中のジャーナリストを不思議がらせて、ゆいいつ彼らがたどりついた推測は「TPPの話だったのだろう」だったが現実は異なっていて、彼らが話し込んでいたのは対中国を意識した「ヒラリー・クリントンの奇妙な提案」についてだった。

日本政府が靖国神社参拝に象徴されるように国家社会主義化を隠さなくなったことは、日本人たちは英語解釈の問題にすりかえて、とぼけてしまったが自由主義諸国にとっておおきな衝撃だった。

disappointment
https://gamayauber1001.wordpress.com/2014/01/02/disappointment/

しかも、そのあとに安倍政権を再選したことで「日本はもう自由主義国の仲間ではないのだ」ということは政治に実際に関わる人間のレベルでは常識になった。

そうなるとアメリカの国家としての選択は、中国の国力がアメリカを上廻る日に向けて、少しずつ「中国との直截の和解と共存」を念頭に、少しずつ「日本外し」を考えていくほかはないのは理の当然で、自由主義を標榜しない日本になど、何の価値もない。まして、アメリカが巨大な駐留軍を日本におくことにした根源的な理由である「日本の最軍事化防止」についての証言

A strong Japan has potentially some of the tendencies which the Prime Minister mentioned. A strong Japan has the economic and social infrastructure which permits it to create a strong military machine and use this for expansionist purposes if it so desires.
The American forces on Japan are in this respect totally insignificant.
They play no role compared to the potential power Japan represents.
In fact, they create a paradox because it is our belief, and this is one of the occasions where we may be right, our defense relationship with Japan keeps Japan from pursuing aggressive policies.
If Japan builds its own military machine, which it will do if it feels forsaken by us, and if it builds nuclear weapons, as it could easily do, then I feel fears which you have expressed could become real indeed.

In fact, Mr. Prime Minister, from the point of view of the sort of theory which I used to teach in universities, it would make good sense for us to withdraw from Japan, allow Japan to re-arm, and then let Japan and China balance each other off in the Pacific.
This is not our policy. A heavily rearmed Japan could easily repeat the policies of the 1930’s.

So I really believe, Mr. Prime Minister, that with respect to Japan,
Your interests and ours are very similar. Neither of us wants to see Japan heavily re-armed. The few bases we have there are purely defensive and enable them to postpone their own rearmament. But if they nevertheless rearm heavily, I doubt that we will maintain our bases there. So we are not using Japan against you; this would be much too dangerous for both of us.

を考えれば、ヒラリークリントンの念頭にあって、仮にドナルドトランプが大統領になったとすればレクチャーを受けることになる「日本との関係」は、「忍耐の人」であったバラクオバマの時代とは、比較を絶したものになる。

ふだんならば、なんでわしがアメリカの大統領選のことを考えないといかんねん、と思うところだが、日本語のメディアを眺めていると、あまりに暢気なので、
ほんとにそんなことでええんかいな、と考えて、余計なことを書いてしまった。

なんだか「外交的な津波」のようなものが日本には迫っているのだけど。

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3 Responses to ドナルド・トランプとヒラリー・クリントン

  1. Babyfairy says:

    日本にとっては最悪でも、ヒラリー・クリントン大統領が一番穏当だろうけれど、亀さんが「バーニー・サンダースが大統領候補としては最悪の選択」という理由が知りたいです(英語でいいのでいつか教えてください)。

    私は今現在の先進国での貧富の差拡大状況を考えると、もう少し社会主義的な揺り戻しがあってもいいと思う一方で、でもそれを国単位でやろうとしても、もはや今のようなグローバライズされた世界では時代遅れではないかなと感じています。

    アイルランドでは直近の総選挙以来、ようやく次期政権ができそうです。歴史的にいがみ合ってきたFFとFGが、長い話し合いを経てケニー首相を選出し連立政権を樹立する模様。個人的には今住んでいる国だけに、こちらの方が現実問題です。その一方で、遠くで全体主義化して孤立化する日本は、まるで故郷が溶解して消えていくようで悲しいです。

  2. 下手糞勢 says:

    「日本はもう自由主義国の仲間ではないのだ」
    いい口実を与えてしまったよね
    もうこんな悪趣味なゲームには付き合いたくないけれど、翻って背を向ければ彼らは…

  3. AK says:

    なんでわしがアメリカの大統領選のことを考えないといかんねん、というガメさん流のボケに、
    こればかりは真面目に返さないといけないのは、非常に心苦しいのですが、
    アメリカ合衆国は「帝国」であり現時点での「世界秩序」であるわけですから、大統領候補の資質はどの国にも大いに影響があると思います。
    最高司令官として軍事力・諜報力を使いこなせない結果としての世界的混乱は、むしろ弱い者に対してより苛烈なものになるはずです。
    その観点で、バーニー・サンダースが大統領候補としては最悪の選択、というのは私も同意見です。

    最近、共和党リチャード・アーミテージがヒラリー・クリントン支持を表明した、ということで、
    軍産複合体はヒラリー・クリントンを操れそうだと考えていることがわかりましたね。
    勿論ヒラリー・クリントン自身も、まんざらではないでしょう。
    そして、ドナルド・トランプ自身は、ロナルド・レーガンを確実に意識していることでしょう。
    若き日のトランプがレーガンと固く握手している写真を見ながら、そう思ってしまうのです。

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