Rising Sun

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コーデル・ハルのノートを眺めていると、戦争に至る人物群のなかで、ひと際、日本人全体への嫌悪に満ちていたのが判る。
この「国連の父」という祝辞のなかで死んだ人がグルーの報告や来栖・東郷の述べる事をまったく信用しなかったことは日本の真珠湾攻撃に直截むすびついた。
ハルの念頭にある日本人は「嘘つきで攻撃性が強い倫理がゼロの民族」で、その日本人全体への印象は終戦後も変わらなかったが、見ていて印象に残るのは、ハルの日本人観は、例えばキッシンジャーに受け継がれて、いまのアメリカの、外交上の「基本民族観」のようなものになっていることです。

朴槿恵の対日強硬方針は日本の人にショックを与えたが、そこで訝しんでいた人は朴槿恵が日本の陸軍士官学校の卒業生だった朴正煕の娘であることを忘れているので、問わず語らず、韓国の人にとっては「朴槿恵は日本贔屓なのではないか?」という疑いはつきまとって離れない疑問だった。
日本の苛酷な支配の下で、娘を軍隊付きの売春婦にするために連れ去られ、路傍で「態度が悪い」という理由にもならない理由によって殴られ続けた韓国の人にとって「公式の場で日本に対して宥和的な態度を示すこと」はタブーであって、光復節、日本の圧政からの解放を国家のアイデンティティとする韓国にとっては「公式には日本になれなれしくしないこと」が国是であるのは当然のことです。
「日本贔屓なのではないか」という国民の疑いは、だから、朴槿恵にとっては、常に政治家としてのアキレス腱だった。

あるいはアメリカ駐日大使として太平洋戦争前に戦争を回避するための様々な建言を行ったジョセフ・グルーへの英語世界での現在における評価は「口の巧い日本人に言いくるめられたおひとよし」にしかすぎない。グルーが誰の目にも「日本贔屓」であったことは、皮肉なことに、やはり日本贔屓の傾向があったフランクリン・ルーズベルト大統領を対日強硬策へ押しやることになった。

二日間、日本語を離れて、クライストチャーチへ出かけた。
友達と会って久闊を叙して、やっと始まった市街の復興で、いくつも出来た、旧来よりも遙かに審美的にも味覚的にも新しい、コンテンポラリーヨーロピアン料理を中心としたレストランで、ランチとディナーと、一緒に食事をして、楽しい時を過ごした。
未来の焦点であるナイジェリアの人々は、どう過ごしているか、今度、broodsが帰国公演をやるみたい、コロンボストリートにオーストレイジアでいっちゃんおおきいウィスキーショップが出来たから行ってご覧よ。
最もおおきな契約を担っているのはイタリアの会社で、そのせいで、街にはイタリア人がたくさん溢れている。
おかげでイタリア料理の質が向上してるんだ。

クライストチャーチは、地震から6年、ようやく復興のピッチが早くなって、CBDの半分はまだ廃墟で瓦礫の山のままだが、それでもあちこちに将来を見越したチェーンホテルが開業したりして、もう5年もすると、「新しいクライストチャーチ」が完成しそうだった。
フラストレーションで、それまではついぞ聞いたことがないクラクションの音をよく聞いたりして、苛立ちが隠せなかったひとびとも、穏やかな顔つきになって、チョーのんびりで有名なカンタベリー人に回帰しつつある。

町の南を縁取るポートヒルに登ると、満天の星空で、やっぱりオークランドよりも星の数が多いよね、とバカなことを考える。
そういえばリトルトンに住む友達にも長いこと会っていないが、今回は無理だな、次のときに訪問しよう。

モニとふたりで、叢に仰向けに寝転がって、星を見る。
シューティングスターが空を横切って、こんなに町に近い場所なのに流れ星が見えるなんてクライストチャーチはやっぱり田舎だと述べて、ふたりで笑い合う。

口にはださないことにしたが、こんなに楽しい生活をデザインしてくれて、ありがとうモニさん、と考える。
ところが、モニさんのほうは、急に上体を起こして、
「ガメ、ほんとうにありがとう」と言うので、すっかり驚いてしまった。

Uberで空港に行こうとしたら、「呼べるクルマが一台もありません」という表示が出てびっくりする。
タクシーを呼んで、uberが来ないのはどういうことなんだろう、と聞くと、朗らかな女の運転手の人が、「ああ、uberが町にやってきてから2ヶ月しか経ってないんですよ。わたしはuberもタクシーも使わなくて、普段はバスしか使わないからどんな様子か知らなかったけど」と言う。
「自分のクルマも運転しないんですか?」と驚いて訊く。
「運転は仕事だけ」と答えて笑っている。
最近はクライストチャーチでさえ、公共交通機関を使う人が増えた。
時代が変われば社会も変わる、と歌うように述べている。

メモリアルアベニューはオーバーブリッジを架けるための大工事ちゅうで、空港のアイコンであるスタンドの上のスピットファイアーが工事の音をうるさがっているように見える。

オークランドに着いて、uberでナイジェリア人の運転手と大笑いしながら帰ると、すっかり楽しくなって、日本語の世界を覗いてみようと考える。

初めに目にはいったのが

で、相変わらずというか、日本語世界で2日や3日インターネットから離れていると、いつも、例外なしに「言い訳ができなくなって逃亡中」ということにされている。
日本語は、こうやって眺めていると、小心で吝嗇な都知事や、首相や、リベラルや右翼や、ありとあらゆる事象を対象に悪罵がとびかい、中傷が蔓延し、誹謗を固定ツイートにしている人間のクズを絵に描いたような人までいる。
ひとに訊くと、このぼくへの中傷を固定ツイートにしている人は「民進党の顧問グループの委員も務めるリベラルの代表」だそうで、お里が知れる、というか、日本のリベラルなどは、その程度なのだろう、と推測がつく。

阿鼻叫喚、という言葉を思い出す。
生き地獄、ともいうのではなかろーか。

ドイツ人はナチの時代、思想の熱に狂ったが、日本人のあれは民族性だよ、その証拠にまたぞろ国家主義者の内閣を支持して靖国神社に参拝するということまでしているでしょう?
彼らは民族として他者を攻撃することしか考えていない、と述べた人がいる。
オーストラリアの内閣にいたことがある老人です。
政治家という非人間性に陥りやすい職業を持った人のなかでは尊敬している人なので、この人の、その言葉を日本について考えるたびに思い出す。
「日本人が変わるなどということは考えられない。見ていてごらん、彼らは必ずまたやるから」

最近はぼくも、諦めが先に立つようになって、悪い言葉で言えば「どうでもいいや」と考えるようになってきた。

Don’t let them get under your skin.
と英語なら言う。
表現として日本語には訳せないのではないだろうか。
ともかく、そういうことで、この6年間、ニセガイジンだの反日ガイジンだのと、「右」からも「左」からも盛大に誹謗中傷を浴び続けてきたが、考えてみると、いまの日本の人たちの、到底受けいれられない攻撃性だけで出来上がっているような文明から笑顔とともに受けいれられていたとしたら、そちらのほうがよほど問題で、自分の人格を疑わなければならなくなってしまう。

わしは知らん、と呟きながら、またコーデル・ハルの、日本人への嫌悪に滲んだ発言の記録へと戻るのでした。

ため息が出るけど

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4 Responses to Rising Sun

  1. Babyfairy says:

    I always wanted to escape from Japan, and this was one of reasons why I wanted to do so. Of course, one may never escape from oneself, even though I am happy where I am now. Your entry reminded me of that, and I have to sigh.

  2. Mi Ogawa says:

    物凄く同意すぎて胸が痛いです。国外からはそう見えますか。日本で生まれ育ったわたしもまったく同じことを思います。日本以外の文化圏を知らずとも、全面的に深く深く同意します。苦い絶望とともにそれがある。
    そのくせ、自己認識が「おとなしい」「おひとよし」「繊細」。どんな鏡を見ているのか知りませんが、この自己認識のゆがみ具合が不可思議でなりません。

  3. もここ says:

    きっついこと書きはりますなあ、あんさん。
    でもそう思うのは、まさしくその通りであることの裏返し。
    それなのに(それだから?)、昨今の日本では自画自賛本やテレビ番組であふれています。
    本当に他者の目で自己を客観的に見ることができない。
    オーストラリアの元政治家の方が言う「彼らは必ずまたやるから」というのは、恐らくその通りでしょう。
    私も常に思っていることです。ある種の苦々しさと絶望と共に。

  4. Mikio Oishi says:

    ガメさん、お久しぶりです。ブルネイ在の mikionz です。私が信奉するスウェーデンボルグのことがツイッターで書かれていて、反応したかったですが、なぜか私のアカウントがブロックされています。解除していただければ嬉しいです。@mikionz です。

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