いま、アメリカで起きていること

dscn0837

予想通り中西部人に多い「うん、ぼくはトランプに投票したよ」という友達と、あれから、少しずつ話してみると、驚いたことにというか、やっぱりというか、トランプ本人は大嫌いだという人が多かった。

じゃ、なぜトランプにしたの?
ヒラリーが嫌いだから?
と訊ねると、もう、したり顔で綺麗事を述べて、politically correctな言い草にしがみついて、その実、自分達はもとを正せば汚いカネで別荘を買ったりするやつらにはうんざりだからだよ、という。

慌てて付け足しておくと、ここで述べる「トランプに投票した友達」というのは、トランプ支持の中核だとマスメディアが述べている「プアホワイト」というわけではなくて、思いつくままに並べれば、戦闘機のデザイナー、軍需会社の広告を扱っている広告代理店会社の社長、インターネットプロバイダの役員、というようなひとびとで、アメリカの社会のなかでは、どちらかといえば富裕な層に属するひとたちです。

話していて面白いのはトランプに投票したわりに、トランプ個人を大統領に適格だと考えている人は、ひとりもいなくて、会話のなかでも
マヌケ、頭がわるいわりに自惚れが強いおっさん、吐き気がするような顔の豚、
すごい表現で、なんのことはない、リベラルのひとびとがトランプを罵倒する言葉が、いっそ上品におもえてくる体のものでした。

ひとり、スカイプでのっけからトランプの、よく出来たお面をかぶって出て来た友達がいたが、「メラニアは、こんな顔のおっさんと、よくまあ毎日暮らせるもんだよな。こんなのがのしかかってきて、顔が目の前にアップになるんじゃたまらないから、あの底辺から自分の容姿だけを頼りにのしあがってきた女は、夜は目をつぶっているに違いない」と下品なことを述べて、大笑いしていた。

意外におもったのは、トランプが大統領になった第一の理由はマケインだろう、と述べた人が複数いたことで、遠くから眺めていて、共和党のなかではマケインにぼんやりした好意を持っていたぼくは、へえ、と考えた。

だって、あのおっさんは口先だけだろう。
なんだかもっともらしいことを言って、なにもやらないじゃないか。
ヒラリーみたいにウォール街の貯金箱が大統領候補になったようなやつがしゃしゃりでてくるのも、ああいうタカ派共和党議員が、なんにも正面切った批判をできなくて、女のくせにナマイキだと言っているとしか聞こえないタワゴトを並べてきたからさ。
わかっているかい?
オバマの、見てくれだけで、国のカネを食い尽くすような政策を正面から批判したのは、グロいエロおやじのトランプだけなんだぜ。
オバマのインチキなところだけを煮詰めたようなバーニーじゃ、なおさらダメだしね。

アメリカはひたすら多様な自由主義に向かう潮流に乗っていて、だからトランプのような桁外れのタワケを大統領に選んでも4年間の恥を忍べば、そのあとは何とかなる、という理屈も共通している。

戦争は?
と訊くと、もうそういう時代じゃない、仮に戦争を始めても、アメリカが傷付く事態にはならないだろう。
ウクライナ人たちには申し訳ないことになるかもしれない。
韓国と日本の人達も惨禍に遭う可能性がないとはいえない。
でも、彼らはわれわれの犠牲で70年以上も平和を楽しんできたわけだからね。

あ、いや、そうか朝鮮戦争があったね… でも、あれは本来は同じ民族の啀み合いだろう?
国がなくなってしまうところだったのをアメリカが救済したわけだから。

バノンがホワイトハウスのなかで権力争いに勝てば、おおきな戦争になるかもしれないが、可能性は低い。
ヒラリーのような戦争屋が大統領になった場合よりも、トランプのほうが、確率の問題として大規模な戦争になる可能性はずっと低いのは、きみも知っているはずじゃないか。

戦争の可能性を過小評価しているんじゃない?
と訊くと、しばらく考えて、バノンのNSC入りは驚いた、とだけ述べた。

これはまた異なる友達だが、Brexitとおなじで、自分達の内輪の都合での政治的な戦略投票の意図とは別に、有色人種のひとびとはえらいめにあっているよね、と言うと、それはまあ、そうだけど、と口を濁したあとで、
こっちはそれどころじゃないわけだから、というようなことをモゴモゴ言っている。

ガメは、自分の文化に誇りを持っていないのかい?
と反問する。
誇りを持っているかどうかはわからないけど、自分の文化はそれは好きだよね、と応えている。
スピットファイアのエンジンの音は遙か彼方の雲の上で鳴っていてもわかるよ、と言うと、失礼にもけたたましく笑って、ガメらしいヘンな例だな、と言ってから、
でもそれって、おれでもわかるぞ、あのエンジンはP51とおなじだからな、などと言っている。
エンジンは同じだが、ほんとうは少し違う音なんだけどね、と心の片隅でつぶやいている、ぼく。

移民なんて、いらないよ、
と、次の瞬間、あっさりと、でもきっぱりと言ったのには驚いてしまった。
移民の経済への貢献、市場に占める地位のおおきさ、アメリカ経済はほとんど次から次へと新しい世代の移民が流入してくることによって成り立っているのを熟知しているはずの人だからです。

欧州の移民まではよかったが、アジアとラテン諸国は間違いだった、という。
そりゃまた露骨に人種差別的な意見だね、と嫌な顔をすると、

ほら、きみたちはそうやって!
と語気を強める。
なにかというと人種差別だ、性差別だといって正当な意見を黙らせようとする。
問題を見ようともしないじゃないか。
きみの国だっておなじだろう?

オカネ欲しさに移民を受けいれた結果、あいつらは増長して、おれたちの共同体を壊してしまった。
きみがロンドンに戻ろうとしないのは、かつての、思いやりに満ちて、みなで共生していたロンドンがもうどこにもなくなってしまったからじゃないのかい?

リベラルなんて、口にしないだけで、どいつもこいつも人種差別意識の固まりなのは、きみもぼくも知っているじゃないか!
あいつらは公には「どんな人種も平等だ」と言うくせに、腹のなかでは、
「そう言っておかないと問題を直視しなければいけなくなるからな」と考えている。
お題目人間で、真剣に現実と対決しようと思わない人間の集まりなんだよ。
流行りの ” I don’t see color” なんて、おれには虫酸が走るだけだね。
おれには黒い人間は黒くみえるし、黄色い人間は黄色くみえるよ。
だって、それが現実なんだから。

きみ自身、ほら、いつかツイッタで、オウムのように白人リベラルの口まねをする日本人に会って驚いた、と言ってたじゃないか。
彼らは、そうだよ。
おれたちが機会を与えてやったのをいいことに、社会に入り込んできて、汚いカネの稼ぎ方をするウォール街やなんかで、politically correctであることが知性的であるとかなんとか勘違いをして、頭のいかれたオウムみたいに白人リベラルのお題目を口にすることがアメリカ人になったことだとおもっていやがる。

おれたちは社会全体が暖かい家族のようだった、おれたちの文明社会に戻したいとおもっているだけさ。

だいたい、まとめると、トランプは出鱈目で信用ができない男だが、ヒラリーを選べばアメリカはそこで綺麗事だけの国になって終わってしまう、(ここで面白いのは、オバマがまだ紛争まっさかりのイラクで演説して、「イラクの紛争は、われわれの努力で平和裡に解決した」と述べて居並ぶ海兵隊員たちを茫然とさせたことを例として引用した人がふたりいた)だから、トランプがどれほど腐った選択肢でもヒラリーよりはマシだったのだ、ということであるらしい。
トランプが二期目も大統領であると考える友達はひとりもいなかった。

いろいろに言い方を工夫しているが、人種に関しては、つまるところは「他人種なんかいらないから出て行ってもらって結構だ」ということらしくて、話していて、トランプの出鱈目さの結果、アメリカが分裂の危機に直面した場合、十中八九、他人種への攻撃に問題を転嫁するだろう、と思われた。
その場合、アフリカンアメリカンとは共存して、アジア人とメキシコ・中南米諸国人を社会から叩き出すほうに動くだろう。
こういうひとびとの本音は「自分達の社会が存続の危機にさらされているときに、他の種類の人間のことなんか構っていられるか」ということであるらしい。

南カリフォルニアはハワイと並んでトランプの排外主義の影響が最も少ない地域だが、去年のサンクスギビングに、白人とメキシコ人が多い地区にいて、トランプは話題としてタブーの趣で、まるで存在しないかのようにひとびとは振る舞っていた。
選挙の話は家族や親しい友人間だけで話しあわれて、見知らぬ人間と話題にしたり、あるいは隣のテーブルの人間に聴かれるのすら危険な話題になっていた。

ぼくにとっては「内輪」である彼ら友人たちの話し方と、去年、トランプ当選が決まった直後のオレンジカウンティで観察したこととを比較して、考えてみて、ここからの4年間が、いかにアメリカ合衆国という国にとって、危険で、重要な4年になるか、ずいぶんスリルがあるとおもう。

普段なら、アメリカで起きることには、いちいち興味をもたないほうで、訊かれても「アメリカのことなんか、外国だもん、知らん」と応えるのを常とする。
いつか日系人で「アメリカのことは自分達アメリカ人が決める。外国人であるおまえが口だしをするな」とすごむおっさんに会って笑ってしまったことがあったが、
哀れではあっても、トランプなどはnuclear football
https://en.wikipedia.org/wiki/Nuclear_football
を握っているだけでも、アメリカだけの問題とは到底言えないだろう。

友達がいみじくも口にしたように、いまやアメリカ人以外の国民であることは、その意味においては「選挙権がないアメリカ人」なので、意見くらいは言わせてもらわねば困る気がする。

前に記事に書いたスティーブバノンについて、日本語では知らないが、英語圏では、あの後、盛んに記事にされるようになった。

バノンという厄災
https://gamayauber1001.wordpress.com/2017/02/01/steve_bannon/

最近、見えないところで、盛んに得意の陰にこもった権力闘争を繰り広げているらしいが、ぼく自身は、バノンがホワイトハウスを制圧してしまわないかぎり、トランプがヒラリーに代表される「行き詰まったエスタブリッシュメントのアメリカ」を4年間で破壊して、世界の失笑を買うような国に成り下がったあとで、少しはまともな人間が大統領になって、なんとかなるのではなかろうか、と考えている。
どの国も、日本以外は、おなじことを考えてトランプ政権からは明瞭に距離を置いている。
日本はアメリカと一心同体であることを世界に表明したつもりであるのかもしれないが、残念なことには、安倍政権が飛びついて抱きついてしまったのはアメリカ社会にとっては保守にとってすら、ヒラリーが象徴する腐敗したエスタブリッシュメントを破壊するために拾い上げた「使い捨て大統領」のトランプであって、アメリカ自体ではないことを、なんだかよく判らないほど外交音痴の日本の政府以外は暗黙の了解事項として共通に認識している。

4年間、保つだろうか?
そのあいだ、アメリカも世界も、どんどんメチャクチャになっていくだろう。
しかし波乱自体は、たとえばビジネスマンや投資家にとってはチャンスの連続で、大枠が壊れなければ、経済的には常に歓迎される性格のものです。
ヒラリーのように既得権益のゲートキーパーが大統領になる場合よりは遙かにマシだという立場はありうる。
市場で敗退したのに国民の税金を注ぎ込んでベイルアウトさせるという、自ら資本主義の最も基本的なルールを枉げた所業のあとでは、なおさらウォール街には弁解の余地はない。
彼らは貪欲な経済の破壊者としての側面を肥大化させすぎている。

ここからは社会の強度試験で、それもアメリカ一国に限らず、その社会がどの程度自由主義を堅持しているか試されていくことになる。

「イギリスやアメリカが、これほど不安定な政治状況になったのは、もともと政治というものに対する理解力がなくてジェレミー・コービンやナイジェル・ファラージュ、バーニー・サンダースやドナルド・トランプのようなポピュリストの述べる安っぽくて大衆受け狙いな理想に飛びつく傾向がある第三世界からの移民が増えたせいである」という皮肉な味の論文を読みながら、では、オーストラリアやニュージーランド、日本や韓国というような国は、それぞれに想定されるケースで、どうなっていくだろう、と世界地図をみながら、ぼんやり考えているところです。

Advertisements
This entry was posted in Uncategorized. Bookmark the permalink.

コメントをここに書いてね書いてね

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s