戦争と貧困

トランプ政権のシリア空軍基地ミサイル攻撃への国際社会の評価は、おおむね好評で、英語世界での論評を見ると「トランプが大統領就任以来くだした唯一の正しい決断だ」というようなのが多くあります。
すさまじい怒りで近寄れないほどだと伝えられるプーチンと、「よく見ておけよ」と言わんばかりに目の前で示威行動を見せ付けられて、「いったい、なんなんだ、このおっさんは」と思って呆れたに違いない習近平を除いては、「このあとの戦略はどうするか、頭をはっきりさせるべきだ」という条件は付いていても、
「アメリカは、ずっと前からやらなければならなかったことを、ようやく実行に移した」が一般的な反応だった。

東アジアには微妙な気持ちにならざるをえない国がふたつあった。
韓国と日本で、案の定というか、シリアへのミサイル攻撃が、出来うるならば自分のほうから宣戦布告したくないトランプ政権の北朝鮮を開戦に追い込むための布石だったことが明らかになってくると、この二国が「国際正義」のために戦火に巻き込まれるのは、ほぼ確実になってしまった。
問題は「戦争になるか、ならないか」から「いつ、どんな形で戦争になるか」に、あれよあれよというまに移行してしまって、いつもは、「なあに、なんにも起きませんよ」で、原発が爆発しても「ダイジョブ、ダイジョブ」で涼しい顔をしている日本の人達も、今度ばかりは「圧迫」とすべきところを「牽制」と言い換えたりして、なんとか事態の深刻さを伝えまいと頑張っている日本のマスメディアの行間を読み取って「ひょっとして、ものすごく拙いことになってるんじゃない?」と悟っているように見えました。

西側諸国の勝手な都合で自国が地上戦の戦場になって、辛酸をなめつくして、戦後も、なにしろ米軍が将校たちに妻帯赴任を許さないほどの危険な最前線扱いで、民主制度を育てる余裕すらない貧乏くじで、ベトナム戦争でアメリカに押しつけられた平和憲法を、まさに、その「あんたが押しつけたんじゃないか」を盾に出兵をつっぱねるナマイキでずるっこい政府をもっていた日本人の代わりにベトナムに出兵して、以前に書いたような、この世の地獄をなめつくすことになった韓国は、またしても国際政治の巻き添えという気の毒な面があるとしても、日本のほうは国民が圧倒的に支持する首相が手をあげて「戦争やらせてください」と世界中を説得して歩いたのだから、どこの国も、それを前提に国際政治の構図を考え直すのはあたりまえで、みずから望んだ状況が現実になっているにすぎない。

憲法九条の終わりに
https://gamayauber1001.wordpress.com/2014/04/14/wherepeaceends/

アメリカはアサシン計画で、金正恩と取り巻きを個別に殺す計画を周囲に、わざと洩らしていて、現在十数カ所の動的に動く標的を同時に襲撃して殺害する能力を持つと言われる暗殺空軍力を動員して金正恩を殺すかもしれないと述べているが、これはどちらかといえば、心理戦の一環で、金正恩を暴発させるための心理的圧迫である可能性のほうが高いと考えられています。

金正恩と取り巻きをいっせいに殺害してしまうと北朝鮮政府そのものがregimeとしてつぶれてしまうからで、そうなると北朝鮮からの大量の難民流入と統一朝鮮が形成されてアメリカ圏と直截国境を接する事態を最も恐れている中国が黙っているわけはないので、今度は、それからこれへとおもいがけず展開して、米中全面戦争になる危険がでてきてしまう。

日本では「軍事通」の人達が、よく鼻で嗤う人民解放軍の実力は、アメリカ軍はよく知っていて、通常兵器と戦術核くらいの戦争に持ち込めても初めの2年で中国政府が手をあげてくれればよし、それを過ぎると、アメリカ軍の全面敗北はほぼ自明なので、「世界最強のアメリカ軍事力」の看板をおろさなければならなくなって、これまでアメリカ支配の原動力になっていた最強国幻想の元手を失ってしまう。

だから、ゆいいつ考えられる作戦は、機動艦隊の一部を割いて、空母を基幹とする攻撃部隊をつくって、巡航ミサイルと空爆で拠点を破壊するという伝統的なもので、北朝鮮も無論、戦略こそが教養とみなされる国柄なので、そのくらいは十分理解していて、今回、オーストラリアに向かっていたカール・ビンソンがシンガポールで踵(きびす)を返して朝鮮半島へ向かったことの意味は新聞記者たちの十倍くらいも承知している。

北朝鮮は、パトリオットで撃墜できない中距離ミサイルを射出できる移動発射台をすでに大量に持っていて、アメリカ軍がこれをすべて破壊するのは無理なので、アメリカに直截反撃したくても出来ない北朝鮮が狙うのは日本で、北朝鮮軍の三本柱、
核ミサイル、特殊工作部隊、サイバーテロ部隊の総力を挙げて在日米軍の拠点を狙うと考えられている。

年長友の賢者哲人どんが、軍事のようなやくざなものに興味をもたないで育った学者らしく、「核弾頭の小型化に成功していなければ飛行機に搭載してやってくるのではないか」と述べていたが、その心配はなくて、簡単にいえば水平もしくは放物線を描いて日本に向かう飛行体は、命中率が3割そこそこだとはいっても、途中のイージス艦と、そこで打ち洩らしたぶんはPAC3で撃墜される可能性が高いので、二の手を繰り出すオカネがない北朝鮮としては、リスクが高すぎて手がだせない。

ナチのV2を思い出せばイメージとして判りやすいが、いったん成層圏に出て、目標の直上から超音速で落下してくるミサイルだけが問題で、当然、最もおおきな関心は、このミサイルに核弾頭がつまれているかどうかにしぼられています。

「もう出来ているようだ」という情報機関側の情報と「出来ていたら、いつものように見せびらかすはずなので、まだ出来ていないのではないか」という専門家たちとに主に意見が分かれていて、どうやら、小型核弾頭の完成まで、あと一歩というところにあるらしい、というのが、実態にいちばん近いものであるらしい。

オンラインでも例のジョージタウン大学系のシンクタンクCSISを初め、膨大な、と呼びたくなるほどの論考が公開されているので、みんなもヒマがあるときに読んで推理にふけるのも切迫した東アジア危機の現状への理解を深めるのに良いのではないかと考えます。

ダイジョブ、戦争が起きるかも知れないなんて、頭おかしいんじゃないの?、何も起きるわけがない、というのは、実は一国が滅亡するときには必ず社会が陥る病気の症状のようなもので、もっと適切な例があるでしょうが、ぼくが少しはマジメに読んだことがある歴史の範囲ではかつての貿易帝国カルタゴの末路に、社会の考え方、経緯ともに、いまの日本は似ている。

気持ちは判らなくはないが、いまごろになって「安倍のやろー、ゆるさねー」をしている人がたくさん出て来たが、感心はできなくて、他人事のように「日本は滅びるしかない」と述べて仏頂面をしていられる時期は過ぎてしまった。

日本の戦後史を読んでいて、最も印象的なのは民族を挙げて戦争と貧困だけは二重にも三重にも排除しようという国家的と呼びたくなるほどの集中力で、他のことはどうでもいい、他国に嘲られても構わないから、戦争とビンボだけは日本から遠ざけなければならないという国民的な意志は日本の戦後を貫く特徴でした。
腫れ物に触るように憲法の話が半ばタブーであったり、もうとっくの昔にオカネモチになっているのに、社会ごと狂ったように働き続けていたのは、それが要するに戦争でボロ負けに負けて、例えば麹町に住んでいた内田百閒の「灰燼記」に細大が記録されている石器時代の生活に戻って、愛する人たちを失い、飢えて、昨日までの貞淑な妻たちが勝者相手に春を鬻いで、ようやっと生き延びた記憶に基づいているのは、たいした想像力なしでも気が付くことであると思います。

それが、他国の経済社会実験で、なんだか浮かれた頭で、とっくの昔にうまくいかないことが証明されていた 「トリクル・ダウン」というようなことを述べだした頃からおかしくなって、新産業を育てて、人口をゆるやかでも増加させるという地味な経済成長/維持の基底条件をつくる努力は、めんどくさかったのでしょう、見向きもしないで、机上の通貨政策と市場操作で経済を浮揚させようという、いまから振り返るとアホみたいなケーハクを極めた政策にはしって、景気がよくなるどころか、戦後つみあげた冨そのものを失ってしまった。

神のいない経済社会_ゾンビ経済篇
https://gamayauber1001.wordpress.com/2016/01/07/isgoddead/

11回の日本訪問のうち、日本にいる最後の年になった2010年にはすでに、BBCのドキュメンタリで称賛されたほどだった「貧富の差が少ない日本社会」は死にかけていて、そこここに徴候が出始めていたのをおぼえています。

貧しさの跫音
https://gamayauber1001.wordpress.com/2010/08/22/takasaka/

日本の息の根をとめる役回りに巡り合わせたのは安倍晋三政権で、この戦時中の東条内閣の商務大臣で日本でいまもつづく国家社会主義経済の骨組みをデザインして、戦後はCIAのスパイと首相を兼業していた祖父を生涯の偉人として尊敬していると述べる、なんだか「そんなこと口走っても首相になれる国なのかあー」と驚かされてしまうひとは、実態(新しい産業)のない経済を蘇らせようと焦って、日本がもうひとつ宝物のように大事にしていた平和を売りにだすことにした。

もっとも、あんまりうまくいっているとは言えなくて、例えば潜水艦を買ってもらいたい一心で、日本の国民の個人資産へのアクセス権を投資会社に与えるという驚天動地の待遇をオーストラリアに与えたのに、ただどりされてしまったというか、
オーストラリア側は、その後、潜水艦を買う約束は「サインしてないじゃん」の一点張りで反古にして、なんのことはない、一方的に、オーストラリアの投資会社を入り口にして、我も我もと乗り込んできた英語圏の投資世界の無慈悲な投資会社に国民の虎の子を進上するだけで終わってしまったりしている。
あちこちで、こっちに30兆円、あんたには40兆円と、一方で借金をしまくってこさえたオカネをばらまいて、もらった外国政府がキョトンとしてしまうほど、もらえるものはもらっておくが、でもなんで?と言わないばかりの反応なのにも構わず、いまでもオカネを盛大にばらまき続けている。
裏では、ウラジミール・プーチンに「安倍は30兆円寄越すといったくせに、まだ払ってないじゃないか」と凄まれるというような、あんまり笑えない喜劇も起こっているようでした。
Phony Warを思い出せば判るように、戦争は方向が決まったからといって、すぐに起きるというものではなくて、「いつ」は、戦争が終わってからでないと判らない理由で決定される。
北朝鮮は実はもうあと少しで小型核弾頭を量産するところにいて、それが量産されるまで、と念じているかもしれないし、多分、金正恩が開戦後の止め男として期待しているはずの中国になにを言っても梨の礫で当惑しているのかもしれない。

いまの状況では、今夜かもしれなければ、4年後かもしれなくて、はっきり判っているのは、朝鮮半島をめぐる戦争が(トランプあるいは金正恩が突然失脚もしくは死亡するのでもなければ)避けられなくなって、 日本が、このあいだも述べた「戦域」に入ってしまったことで、70年間の長いあいだ日本人が影すらみることがなかった、戦争と貧困が日本の生活に戻ってきたという事実だけです。

英語ではconsequenceという。
やったことには結果が伴って、さっき言及した年長友達の哲人どんの言葉をここに引用しておくと

で、「現実は非論理を手厳しく現金化する」は言い得て妙で、いい気になって日本の人が言い合っていた詭弁も奇妙なロジックも、現実の第3艦隊攻撃部隊の前には、砂上の楼閣そのままの姿で風のなかの砂ほこりに返って姿がかき消えてしまう。

時期はわからなくても、こういうことは方向が決定してしまうと出来ることはなにもなくて、日本語でなにを書いても意味がないので、この記事くらいを最後に、この手の記事は姿を消すでしょうけど、残念で、まだ日本に住んでいる友達もいて、考えていると、いくら前回書いたようにバノンの失脚で東アジアが本格戦争に巻き込まれる危険が去ったとは言っても、ほんとうには心が晴れない気がしてきます。

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ver.6 https://leftlane.xyz もあるよ
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One Response to 戦争と貧困

  1. teahupoo says:

    いつもありがとう。ガメさんの記事は時にはゲンコでゴン、とぶん殴られたような衝撃があったりもするけれどいつもまあるい地球を想起させてくれてありがたい。そしてなお有難いことにこのブログのそこここやツイラーのつぶやきで知らせてくれていた悪い状況へとこの国は、その周りの国々と友にどう見ても一目散に邁進しちまっているのでありましょう。
    かくなる上は自分も竹槍を持ってハチマキしめてたすき掛けしてモンペ履いて祖国のために〜、じゃなくって、この国の終わりというものを内側でひっそりと佇んで眺めるとしましょうね。
    それでも僕の運が、極め付けに運が良くて色々起った後にもまだ命が残っていたとしたら、塹壕から這い出して来た真っ黒く煤けた顔でそこいらの原っぱにみかん箱でもひっくり返したテーブルに焼け跡から掘り起こした缶詰を肴に一杯やろうじゃないかね。そのための酒はここに隠しておくとしよう。

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