北極星2型

少なくとも北極星2型のほうはアメリカや日本を挑発しているのではなくて単純に量産型のミサイルに必要なテストを行っているにしかすぎないように見えます。

ツイッタで書いたとおり

で現状の北朝鮮の国力で量産できるミサイルのデザインはほとんどこれしかないというデザインに沿って、少数部品、安価、高確実性・安定性のミサイルを設計して必要な諸条件をついにクリアしてしまった。

その最終点検が5月21日の打ち上げということでしょう。

北朝鮮の北極星2型は裾野のない北朝鮮技術世界のなかで、ちょうど日本の零戦のように、ビンボな国家財政、低い工作力、歪な材料工学、…というような拾いあげられるものが少ない社会のなかで、拾えるだけのものを拾って傑作兵器をつくりあげるという快挙が生んだミサイルだと言ってもよいとおもう。

作った人は、マストドンで教えてくれた人がいて、キムジョンシクという人だそうでした。
教えてもらった名前を頼りに日本語検索をかけてみると、

なんだか、よくわからないセレブサイトみたいなサイトに記事が出ている。

http://yuumeijin-shokai.com/kimu-jon-shiku-2295

零戦の時代の日本の工業力がどのくらいお粗末なものだったかというと、高速で回転する金属をちゃんと受け止められるベアリングがもうつくれなかった。
当時、最も高いベアリング技術を持っていたのは同盟国であるナチのドイツだったが、教えてもらえなかったのでしょう、日本はベアリングの歩留まりが悪いので有名な国で、QC自体を職人芸に頼っていたので、職人たちが徴兵されてゆくと、女子学生たちが作ったエンジンがどんどん焼き付いて、使いものにならない航空エンジンが量産されることになっていった。

堀越二郎技師の最も偉いところは、日本の工業技術を見渡して、最も「使える」部分を組み合わせて零戦を作って行ったところで、いまから振り返る人は「当たり前じゃないか」と言うかもしれないが、例えば液冷式は当初から一顧だにしなかった。

自社製の金星エンジンよりも中島飛行機製の栄エンジンの採用を強く主張したことでも判るとおり、自社のエンジンラインアップに液冷がなかったからではなくて、
日本の工作技術の程度の低さを熟知していた堀越技師は構造が複雑で部品点数が多く、一個の不良部品が全体のエンジントラブルを引き起こしやすい液冷エンジンを採用するわけにはいかなかった。

ドイツ系の技術は、いまでもそうだが、技師が実現しようとする高いレベルの性能に到達するために、極めて複雑なシステムをデザインしてしまう、という欠点を持っている。
ポルシェがつくった超重戦車マウス

https://en.wikipedia.org/wiki/Panzer_VIII_Maus

を典型とするような理屈もあっているし、実現も可能ではあるが、
「ほんとにこれをつくるんでしか?」と言いたくなるような、迷宮的なシステムを実用化しようとする傾向があります。

この傾向の延長上にあるナチ・ドイツの技術的な傑作がMe262ジェット戦闘機

https://en.wikipedia.org/wiki/Messerschmitt_Me_262

とV2ミサイル

https://en.wikipedia.org/wiki/V-2_rocket

で、このふたつの兵器は、簡単に言って連合軍側の度肝をぬいた。
エンジニアたちが、ただただぶっくらこいて、ほんとにそんなものつくっちゃったのか、と言い合う体のものでした。

あるいは、三式戦闘機飛燕に搭載されたエンジン、ハ40は、最初期型メッサーシュミットBf109E型に搭載された比較的構造が簡単な千馬力級液冷式エンジンのデッドコピーだったが、当時の日本の技術では丸写しのマネッコ生産すら難しくてエンジンが止まって石のように落下する飛燕が続出した。
空冷式に較べると液冷式は遙かに戦闘機に向いていて、同じ出力のエンジンなら正面面積が20%減少して、CD値が小さい機体デザインをも可能にする結果、だいたい最低でも6%は速度が速かった。

水平速度が速い戦闘機が好きだった堀越技師は、だから、液冷式の飛行機がつくりたかったでしょうが、それでもエンジンは空冷と初めから決めていたのは、そのせいです。

その結果うまれた傑作機零戦は、なによりも手間はかかるが工作が簡単だという長所を持っていた。
「手間がかかる=生産効率が悪い」ことと「工作が簡単」なことは相反する性質ではないかと思う人がいそうだが、零戦は、相当に精度が悪い工作でも額面通りの性能が発揮できる、いわばAK47のような兵器であったことに特徴があって、ゆるい、許容度のおおきい設計は、連合軍の爆撃で徹底的に破壊された飛行場のあちこちから部品を集めてきて、整備兵たちの手で、数機の零戦が完成してしまうほど、おおらかな戦闘機だった。

いつか軍ヲタ中国系人たちと話していたら、「ガメ、知っているか?日本人たちが鼻にかけている零戦なんて、バルサの模型みたいなもので、急角度で突っ込んで引き起こそうとすると、操縦桿が利かなくなるは、空中分解を起こすわ、だし、第一操縦席の背板にすら装甲板が付いていない、性能をあげたいだけの見栄の固まりのような飛行機だった!
日本人の見栄っ張りで、現実にはたいしたことがない国民性がよく出ていると思わないか?」と述べていたが、この人達の後知恵は公平だとは言えなくて、零戦が進空した1939年の時点では世界の過半の戦闘機は防御鋼板を持っていなかった。
零戦がまるでマッチに火をつけるように被弾するたびに炎に包まれたのは、どちらかといえば洋上を飛ぶ長大な航続距離を実現するための大きな翼内タンクによるもので、戦闘機の背面が敵に露出したときに最も被弾しやすい場所にタンクが広がっていたのは、やむをえない理由によっている。
実際、映画で観るのとは異なって、「機体を引き起こして逃げる」のはタブーなので、空戦記を観てもパニクってさえいなければ浅角度ダイブか横旋回で逃げていたようです。

義理叔父の祖父なる人は、戦時中は海軍の高級将校で、零戦も馴染みがある飛行機のひとつだったようだが、義理叔父によく、
「いい飛行機だが、日本の工作精度はひどくて、離陸する零戦がよく増槽タンクと胴体のあいだから、隙間から洩れる燃料の白い線をひいていたよ」と笑っていたそうでした。

液体燃料エンジンのミサイルは、工作がたいへんで、裾野が広い工業技術力が必要なのは常識であるとおもう。

キムジョンシクという名の人なのかどうか、ちょうど戦前の日本でいえば堀越二郎にあたる北朝鮮の天才技師は、堀越二郎とおなじ天才技師のセンスで固体燃料でないと金正恩がめざす「安定して飛行するミサイルの大量生産」などは夢のまた夢であると考えたのでしょう。

ツイッタやマストドンでも北朝鮮のミサイル技術が他国の技術の寄せ集めだと述べる人が多かったが、わしは、そうおもわない。
他国の技術は、ちょうど堀越技師がそうしたように集めるだけ集めて参考にしたようにしか見えません。
北極星2型は、わし頭のなかでは零戦と相似形をなして対称をつくっている。
スペックを聴いただけで傑作とわかるというと笑われてしまうでしょうが、もともと発明という大時代なもので初めの財をなした、わしの技術心に訴えるところがある。

センスがええんでないかい?
と思わせる。

金正恩はもとより個人主義や自由主義の側からいえば敵でしかない全体主義に立つ独裁者だが、拠って立つ観点を変えれば、アメリカや日本という戦争をしたくてたまらない、好戦に狂った軍事大国の恫喝と挑発に晒された小国の、経験もない指導者であるわけで、核を捨てれば国として考えてやってもいいど、とアメリカや中国や日本が述べるたびに、ではあんたらを信じて核計画を放棄したリビアやイラクはどうなったというのか?と問い返したい気持ちでいっぱいでしょう。

わしが考えても、北朝鮮が核開発計画を放棄すれば、いまの体制はあっというまに解体されて、金正恩は、よくてウサマビンラディンと同じ運命、悪くすればベニト・ムッソリーニのように、逆さづりになって革命広場で死体が狼藉される運命にあるとしか思えない。

北朝鮮が編み出した戦争上の奇策は、つまり「これまでタブーとされた核兵器の使用を前提とすることによってビンボ国にアメリカ・中国・日本の軍事超大国と同じ戦力を獲得させる」ということで、いったん北極星2号が量産ラインに載れば、一朝時には、あたかも通常弾頭スカッドのように核弾頭の中距離ミサイルを日本に向かって撃ちまくるだろうとアメリカのアジア軍事専門家たちも予測している。

トランプの登場で、ちょっと怪しくなってしまったが、在日米軍を叩くという建前で日本に向かって核ミサイルを撃ちまくっても、アメリカはなお通常兵器で報復するだろうという、中国絡みの推量があってのことです。

以前に「日本は戦域化した」と書いたが、どうやらキムジョンシクという人であるらしい北朝鮮の天才技師が完成した素晴らしい安定度のミサイルによって、現実の開戦も近くなってしまったような気がして仕方がない。

日本が開戦に踏み切ったのは、仔細に観てゆくと、軍指導者の蒙昧に加えて、零戦が望外の性能を発揮して、殆ど無敵だったことが、案外とおおきな原因であったことが見てとれます。
「零戦があればやれる」と日本の指導者たちは開戦前・戦争中を通じて何度口にしたかしれない。

アメリカが制裁の手を強めて、日本の対外資産凍結、石油禁輸という、アメリカのほうから観れば「制裁強化」という魂のこもらない政治術語で語られる施策に踏み切ったとき、アメリカの想像力を遙かに越えて、日本の指導部は、「もうここまでだ。こうなれば機動部隊と零戦に賭けて太平洋侵攻を企図するしかない」と思い詰めていったのでした。

今日、日本語ニュースを読んでいたら岸田外相が日本の独自制裁強化として資産凍結や中国に働きかけての石油禁輸可能性について述べていた。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017052100244&g=prk

「歴史は繰り返さない」と、わしはガッコで習ったが、歴史はときどき繰り返しているように見えることはあるよね、と、そっと呟いてみるのでした。

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2 Responses to 北極星2型

  1. みなみまる says:

    またお邪魔します、みなみまるです。北朝鮮の体制が昭和20年までの日本に似ている、というのはその通りでしょう。日本海海戦、というような成功体験がないため、また世界の趨勢とはずれているため、ことさらに奇異の目で見られているのでしょう。
     飛燕の設計者である土井武夫さんは、戦後、名城大学の教授として活躍され、長命であったためにいくつかの回顧談が記録に残っています。飛燕のエンジンを空冷に換装した五式戦は優秀な戦闘機であったそうですが、重心が変わっても主翼の取り付け位置を容易に変更でき、武装も強化可能であったなど、当初からよく考えられた設計だったようです。
     そもそも、烈風や雷電が(主にエンジンのせいで)難航して最後まで零戦に依存した海軍に比べ、飛燕疾風五式戦と、少なくとも設計は優秀な後継機をいちおう実用化した陸軍の方がましであった、と坂井三郎が回顧していたと記憶しています。ま、淵源をたどれば、仏印進駐あるいは三国同盟が、大失敗だったわけですけれど、ね。

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  2. tunechan says:

    最初に断っておきますが、私は現在68歳、妻は66歳になります。一応、二人共4年制の今でいう、一流大学を卒業はしてますが、いわゆる中流ではありません。
     私は、亀さんのブログ?ツイッターを2011年以降、機会があれば、読まさせていただいて
    いろいろと、啓発されることが多いと、自分勝手に判断しています。
     正直な話、私ども夫婦は、ここ数年、がっかりすることは多くて、将来に対して、不安を持つことも多い日々を送っています。一応、一人息子がいますが、まだ、結婚はしてないようです。
     まあ、報告がないので、そう思っているだけで、実質的には、事実婚に近い状態にいるかもしれません。彼は、一人で暮らしているので、知らないだけです。
     私も妻も、あまり集団というものを信用していないのかもしれません。
     ただ、何週間か前に、NHKのBSで米国陸軍442連隊のドキュメンタリーを放送していた時に、妻が最初に気づき、私も気づいたことがありました。
     それは、戦後70年経った今でも、当時の記録がきちんとした形で残っているということです。残念なことに、私が生まれたこの国では、無条件降伏を受け入れた時点から、重要な公文書の焼却作業が始まったと歴史書で若いころ読んだ記憶があります。
     きちんと記録を残して、その内容を後日、総括して、次の世代に残すという作業は、この国の住人はどちらかというと、好きではないし、できれば、そういうことをせずに生きていくことを選ぶ人たちだと、この頃、感じることが多いですね、
     誠に残念ではあるけれど、この国では、いわゆる、民主的な討論が行われることは、これからの10年間、ないだろうし、住んでいる人たちも、自分たちのいる状況がそれほど、変化するとは、
    思わずに、安穏と日々の生活の追われて、過ごしていくような気がしてなりません。
     戦争に負けるという、国家としての存亡の事態に、天皇制を残し、一億総懺悔をして、ことを済ましてしまい、きちんとした、事実の総括をおこなわいままに経済優先で70年を過ごしてきてしまった、つけが回ってきたんだと思うことが多いですね、
     若い人が、合理的な思考方法を学んだ上で、自分で考え、自分で判断して、自分で責任を取ることを学んでいけば、あと、20年後にはそれほど、悪い世の中では、なくなるような気がしないこともないと思っています。
     ただ、そのためには、今の社会の中では、あまり、生きやすくないことも事実なので、無理をせずに生き抜いて欲しいと思う限りです。
     久しぶりに、酔った勢いでの意志表明です。ガメさん、どうもありがとうございます。

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