暗礁

もう両側に断崖がそそり立つ一本道に入ってしまって、クルマをゆっくりとすすめることは出来るが、Uターンして、もと来た道を引き返すということは出来なくなっている。

日本語で「遅かれ早かれ」というが、そのとおりで、断崖から遙かに下の谷底に落ちる運命は定まっていて、その転落点に向かってゆっくりと、ときどきは何を思ったのか速度を速めたりまでして進んでいる、というのがいまの日本の姿だと思います。

冷たいことをいえば、決断という決断を誤ってきたからで、この十年ほどの社会的な決断の拙さは、社会の運命にとどめをさすのに十分だった。

北朝鮮を例にすれば、もともとは日本は、そのびっくりするような北朝鮮系日本人の数の多さや、彼らが祖国に対してもつ影響力の強さひとつとっても、世界のなかでただ一国、北朝鮮と世界との調停者である資格をもっていた。

その北朝鮮の秘かな期待を裏切って、アメリカの同盟者として、北朝鮮を敵視しはじめたのは、ごく最近のことで、萌芽は、もしかすると小泉純一郎くらいのところにあるのかもしれません。

いまの、頭が信じられないくらい単純になった、言葉を変えれば知力が退化した日本の人のなかには、「そんなことはない。日本は朝鮮戦争以来、いまだにずっと北朝鮮と交戦状態にあるのを知らないのか」と述べる人が出てきそうだが、その手の人を相手にしていると話が堂々めぐりになって、なんだか小学生用の教科書のようなところで「議論」しなければならなくなるので、相手にしないことにしたい。

結局、どうなったかというと、信じがたいことに、日本はアメリカの同盟者というよりは、ひとりでいきり立つ好戦国家として、北朝鮮の核ミサイルが飛来するのを待つばかりになっていて、量産が終わって、北朝鮮が核とミサイルの実験の延長として、いわば日本人の血と生命を「アメリカに対する、より効果のある示威」として使おうとしているのは誰の目にもあきらかで、この危機がやがては終熄するにしても、狂言回しというか、舞台が次の情景へくるりと回転するためには、日本への核攻撃の許容はやむをえないことだろう、ということになっている。

アメリカの対北朝鮮外交の要諦は「アメリカの国土に核ミサイルを撃たせないこと」に尽きていて、ほかには目的がないからで、例えばトランプの政権ならば、核弾頭のミサイルが真珠湾に着弾した瞬間に政権が瓦解するのは、どんな人が考えてもあたりまえの成り行きで、自由主義同盟のなかで、巨大な経済力とアジアでは実質的にただひとつの自由主義社会だった日本が、零落して、経済上は日本が破綻しても、破綻されるよりは、かろうじてでもなんでも存続してくれたほうがよいが、なくなっても、破滅的な影響といえるほどのことは考えられなくなって、社会的にも自由主義の題目で塗り込めていた生来の全体主義が相貌をあらわして、天然全体主義と呼ぶべき不思議な社会の形態であったのが、いまは名実共に、国民も政府も遵法精神をもたない社会として、擡頭して、では中国との共同統治に近い形での東アジアの安定と、旧同盟者であって、いまは自由主義を理解できなくなった日本との同盟による東アジアの対決的な安定とのどちらを選ぶべきかということになれば、日本を捨てて中国との直接交渉による地域安定のほうがアメリカの国益に沿っていて、二強並び立たず、中国との同盟は考えられなくても、なにを血迷ったか国家社会主義的な暴走が目立つようになった日本を対等な同盟者として尊重する路線はあきらめざるをえなくなって、残されたゆいいつの日本の使い途である実質的な属国化へ、動き出したところであるとおもう。

以心伝心、という。
英語人に限らず欧州系の文明に属する人間は、むかしから何もいわずに、いわば目配せによって方向をつくっていくのが上手で、いまの移民政策はアジア人と中東人を締め出す方向で動いている。

1990年代中盤までは、移民に英語試験を課すのはタブーだとされていて、理由は簡単で、表面の理由はどうあれ、現実上の効果はアジア人移民を制限することになるからで、右翼に押しまくられて弱気な政府が「あのー、英語試験を課そうと思うんですけど」とおずおずと国民に申し出ると、次の選挙で中東・アジア系移民問題に焦点が移って、結果はあにはからんや右翼政党が躍進して、与党が大敗するということを繰り返してきた。

わしなどは、実際に例えばニュージーランドがいつからIELTSの点数を移民の足きりに利用するようになったのか知らないが、いつのまにか、移民に英語試験を課すのは常識になって、やってみると、英語試験は移民の、というかexpatのエスニックグループを調整するのに便利で、早い話が、ニュージーランドへの職業人の移民は、ここ30年で初めてアジア人の国が上位5ヶ国から消えて、アメリカやドイツの欧州系国が上位を独占することになったのが今年早々のニュースになっていた。

あるいは大学人であれば、非英語国の大学当局が、自分の大学の世界ランキングが落ちると決まって「いまの英語論文の数で決まるランキングは不当である」とよく怒っているが、英語人の「それは、ちょっとカッコワルイんじゃない?」という冷やかしの気持ちを別にして、そもそも大学をランキングしようという価値観の全体が、いまの汎英語世界化をめざす英語人の、謎の怪人ナゾーも真っ青な英語思想による世界征服計画に基づいているので、言っても詮無いというか、怒りをぶつけるピントがずれている。

以心伝心な英語人の考えていることは、「このへんで一段落つけて、ブロークンイングリッシュ運動に始まった、英語文明のグローバル化を成熟させよう」ということで、簡単にいえば「もう、これ以上、アジア人はいらーん」ということです。

根が利に慧い英語人の常で「すごおおく能力がある若い人間」や「すごおおおくオカネモチの人」は、相変わらず移民として歓待されるが、どちらもハードルが高くなって、前者についていえば、自国社会に要らないとおもえば自国の大学を出て就職しようとする学生にビザを発給しないで恬淡としていることが多くなったし、すごおおおくオカネモチでも、アメリカは未だにインベスタープログラムで、たった6000万円がところの現金を振り込めば居住ビザがおりてしまうが、他の国は、どんどん条件が厳しくなって、持参金だけでなくて、「オカネを生みだして社会に貢献する能力」を問うようになってきた。

結果として移民の希望から締め出されてしまったエスニックグループの代表は、たとえばニュージーランドとオーストラリアでは日本人で、日本人そのものをターゲットにしたわけではなくても、給与の最低水準を49000ドルにして、英語ポイントの基準を上げてみると、日本人にとっては目の前でぴしゃりと門を閉められてしまうような恰好になってしまった。

イギリスでは、もっと深刻な変化が移民のひとびとには見えにくいところで起こっていて、永住ビザを取り消しやすくなっている。
このあいだ、酔っ払って、移民への「対処」について読んでいて、あれっ?と思ったが、わしなどが、いまでもそうだろうと信じ込んでいた連合王国特有の永住ビザをもつ移民への、安心して定住できるようにという配慮は、いつのまにかどっかへ行ってしまって、どんどん、と言いたくなるようなスピードで永住権を取り消して国外へ追放できる条件をゆるめてリスト化している。「これじゃ、どっこもpermanentじゃねーじゃん」と読んでいて情けない気持ちになる。

それや、これや、ありゃあー、すごいことするなあーと思っていたら今度はBrexitで、イギリスは「ほんとうのイギリス人」のものだ派が勢いづいて、なんだか将来は、ありとあらゆる有色人種を締め出しそうな勢いです。

イギリスがこうだとすると、ひょっとしてニュージーランドも、と思って調べてみると、2007年に移民法が変わっていて、これもいつのまにか、世界でいちばん権利が強いので有名な永住ビザを、行政レベルで剥奪して国外へ蹴り出せることになっている。

と、日本語で延々と、本来英語人のうちうちの問題にしかすぎないことを書いているのは、さっき考えていて、今年か5年後かは判らなくても、北朝鮮を挑発しまくって、いまやアメリカの代わりに一身に金正恩の憎悪を買うに至った日本が核攻撃を受けるのは、アメリカも中国も当の日本政府ですら「まあ、そのくらいは仕方がない」になっているが、三者と金正恩がちゃんとイメージとして持っていないのは、現実の核爆発は文字通り想像を絶して悲惨であることで、そもそもいっちゃん初めの原始的な核爆弾攻撃であるヒロシマですら、普通の人間には正視しえないような被害をもたらした。

二、三発の核ミサイルの着弾くらいはやむをえないというが、そういう意見を聴いていると「あんた、ヒロシマの実写フィルムみたことあんの?」と思う。

いかに、なんでもかんでもダイジョーブの社会的な危機への鈍感さで世界的に名をはせた日本人といえども、逃げだしにかかるのは見えていて、そうなると、少なくとも何十万人という日本人が海外に逃げていこうとするに決まっているが、ではどこに?と考えると、ブツクサ言いながらたいへんな数の朝鮮族を受けいれてきた中国を当てに出来る半島人とは異なって、日本人を受けいれそうな国は存在しない。

小松左京の「日本沈没」という小説ではオーストラリアの首相が、大決断をして大量の日本人を受けいれることになっているが、いまのオーストラリアがそんな道義的な決断をして、集団をなせば反自由主義的なコミュニティを形成して自由主義に対する深刻な脅威になると判り切っているエスニックグループである日本人を受けいれるわけがない。

1990年代に、たった5000人だかの日本人移住者人口を「日本人の洪水」と表現して、これ以上日本人が来て、日本みたいな国にされたらどーするんだ、というドタバタSF的な大騒ぎを演じたニュージーランドは論外であるとしても、つい最近まではおおきく門戸を開いていた、カナダの過半の州もイギリスも、移民法自体が「日本人なんて、ひとりもいらん」と言いたげです。

英語圏では日本人にとってはアメリカが居住ビザ条件が最も緩いが、では一歩すすんでグリーンカードとなると、今度は他の英語国とおなじことで、無茶苦茶きびしくなっていて、このあいだjosicoはんがグリーンカードがもらえることになったと喜んでいたが、josicoはんのような特殊技能者でもなければ、グリーンカードなどは夢のまた夢で、「一生懸命働いて、アメリカに儲けさせたら、とっとと自分の国に帰れよ」と言わんばかりの体制になっている。

そうやって、とつおいつ考えていると、日本の人の難民先はブラジルを初めとする中南米くらいのもので、なんのことはない、日本がやってはいけない外交をやりつくして、ナチドイツと同盟した挙げ句ボロクソに負けて、石器時代に町を戻されてしまった敗戦後と、条件は同じことになっている。
執行時期が曖昧な死刑判決じみて見えなくもない北朝鮮危機を別にして、国内に対しては騙せるだけ騙そうという姿勢が露骨なアベノミクスの失敗を最大の原因とする危機的な財政や社会を挙げての遵法精神の喪失、日本語の言語的な頽廃、列挙すると際限もなく延々と続きそうなくらい、いまの日本は人間の健康になぞらえれば慢性成人病の巣窟のようになって、どれかひとつでもバランスを崩すと、累卵の危機そのまま、ガラガラと崩れ落ちそうな国になっている。

到頭最近では、ジム・ロジャースを始めとして、21世紀において最も未来が存在しない国として太鼓判を押されるに至っている。

ジム・ロジャースの「どうしても日本にいたければ、将来の日本には競争力のある産業は残らないからトラクタの運転を習っておいたほうがよい」というアドバイスは、ふざけていたり、皮肉として述べられたわけではなくて、日本文化大好きじーちゃんの、ごく真摯な個々の日本人への忠告として述べられたものです。

日本がなぜここまで希望のない国になったか。
日本に住む日本人が希望として捉えているもの(例:株価)がいかに作為的に国民を騙すために仕組まれた偽りの希望であるかは、気が向けば書くだろうけど、日本語で日本の人に現実を伝えても良い事がないのは、これまでの経験で明らかなので、他の言語で書くものに較べてプライオリティはずっと下になる。

日本語で書かれたものは、最も読む人が少ないのでもあって、その割には嫌がらせは他の10倍では利かないという特徴がある。

だから、最近は、まあテキトーにやってください、ということになっているが、ときどきこうやって、日本語人の友達たちの顔を思い浮かべて書いてみたりするのは、日本文学の誼で、日本語だからといって、綺麗事ばかり述べていても仕方がないだろう、という気持ちが働くものであるようです。

暗礁は、目の前にあるのだから。

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ver.6 https://leftlane.xyz もあるよ
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One Response to 暗礁

  1. みなみまる says:

     みなみまるです。
     私は2007年に永住権を得まして、その時、IELTSは必須でした。しきい値をどうするかで、移民の難易度を調整するようですね。アメリカやイギリスが厳しくするなら、獲得競争ではNZやカナダが優位になるとは思いますが。
     日本社会への判断には同感します。いま、北朝鮮が「自暴自棄になって何をするか」は、いわば1943-44年の日本と同じような状況でしょう。竹山道雄いうところの「やましき沈黙」を良心が守っていると、北朝鮮の暴発、日本社会の長期的低迷(かつて日本が英国病と揶揄したように)は不可避だと思います。

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