マレーシア独立60周年に考えたこと

ちょうど午前0時ぴったりに、花火というよりは砲撃音のようなすさまじい音で、いっぺんに花火が打ち上げられて、あちこちの高層ビルのガラス壁面に反射して、CBD全体が万華鏡のようになった。

独立60周年記念、道路を行くクルマもクラクションを盛んに鳴らして、子供たちも目を輝かせて走り回っている。

熱帯の国の独立記念日。
ニカブの人も、ショーツに袖無しトップの欧州系人も、並んで、ベンチに腰掛けて、眩く輝く明るく照らされた空を見上げている。

アイデンティティがない国だという。
独立以来、マレーシアは、「マレーシアとは、なにか?」
どんな性格の国なのか、ということに悩み続けた国だった。

マレー系人と話していると、中国系人への敵意のおおきさにびっくりしてしまう。
「あいつらを追い出さないかぎり、この国はほんとうに独立しているとはいえない」という人さえいて、ペナン島出身のリークアンユーが、人気を博して、シンガポールという独立国をつくったことの背景の一端がわかります。

6年前だったかシンガポールに行ったとき、ちょうど出発の直前に、象徴的な事件があった。
シンガポールの共働き夫婦は家事を滅多に行わないので、インドネシア人の家政婦さんを雇うことが多い。
日本でいえば2DKの小さいアパートに、住み込み専用のトイレよりは少しおおきいくらいの小部屋が付いているのはシンガポールでは比較的ふつうのことです。

中国系シンガポール人の夫婦が、数週間の休暇旅行に出かけるのに、いったいどういう考えをすればそういうことになるのか、カップラーメンの山と一緒に、インドネシア人の若い家政婦を、この畳いちまいあるかないかの部屋に閉じ込めて、鍵をかけて出かけてしまった。
窓のない小部屋で、冷房も切られたまま監禁されたインドネシアの女の人は、気の毒に、暑さと換気の悪さのせいで窒息死してしまいます。

インドネシアの英字紙記事は「これは決して特殊な例ではない。シンガポールでは、われわれの同胞が、年々、奴隷としてこき使われ、使い捨てにされている」と述べている。

インドネシア人の怒りはすさまじいもので、口から口に噂は広まり、やがて事実であることがわかると、国民的な規模でシンガポールに対する怒りが爆発して、コンクリート材料の輸出の停止から始まって、一時は、冗談ではなくて、ほぼ国交が断絶しそうなところまでいってしまった。

あるいはシンガポールの市内をマレー系のドライバのタクシーで走っていたら、急な割り込みをするクルマがいる。
運転手の怒り方は、ロンドンの悪態ばかりついて柄が悪いタクシー運転手になれているわしから見ても、やや常軌を逸したもので、吐き出すような口調で、「ちくしょう、中国人ドライバーめ!知ってますか?中国人ってやつらは、みんな、ああなんだ。自分のことしか考えない。決まりを守らない。これがおれの国なら、クルマを止めて、みんなで取り巻いてぶち殺してやるんだが」と怖いことをいう。
最後に中国系人とマレー系人の大規模な衝突が起きたときには、たしか800人だかの中国系人が一方的に惨殺されたはずで、タイの人もそうだが、マレー系の人も、いつもは親切でおだやかなのに、いちど怒りに火がつくと、悪鬼のようになる。

あるいは2007年だったとおもうが、12月31日にシンガポールにいて、翌朝、新年のお祝いを述べたついでに、ホテルのレセプションのマレー系の女の人に、「シンガポールは春節と、年に二回お正月のお休みがあっていいですのい」と、いつものごとくノーテンキな軽口を述べたら、いつも親切で受け答えがやわらかいこの女の人が、ぶっくらこくような怖い真剣な顔で、「あれは違法です。中国人たちは、まったく決まりを守らない。わたしは許さない」と述べたので、話の収拾がつかなくなってしまって、まあ、とにかく、とかなんとか、ぶつぶつと言いながら、そそくさと引き揚げてきたことがあった。

マレーシアの支配層(←嫌な言葉)の人間と話していると、ひとくちにいえば「混迷しているのだ」という印象をうけます。
まだ統一がうまくいっていないのだ、ということもできる。
ペナン島が、あれほど落ち着いた雰囲気なのは、島であることが奏功して、マレーシア一般とやや別の「中国系社会」として安定しているということがあるようでした。
経済的には西欧型の金融とイスラム金融の汽水域になっていて、おもしろいことがたくさんあるが、ここでは、そんな話をしても仕方がないので、やめておくとして、たんなる旅行者としてのマレーシア滞在は、楽しいものでした。

中近東の食べ物が大好きなモニとわしとにとっては、おいしいものがたくさんある天国で、ひさしぶりに、新鮮な香辛料に浸かった、ラムやチキンの、身体中がぽんわり宙に浮いてしまうようなおいしさの、陶酔的な食べ物ばかり食べて、それだけでも、もう、とてもとても幸福で、クアラルンプールはいい町だなあ、とおもう。

ドバイやカタールの有名店の支店があったりして、オークランドにも中東料理店はいくつもあるとは言っても、やはり味の深みと冴えが違う。

ロンドン以来、ひさしぶりにペルシャ系人の友達が嫌うというよりも蔑んでいるアラブの支配層とゆっくり話ができたのも、たいへんよいことで、同席したイギリス人とも話したが、これからの西欧世界とアラブ世界の目立たないような交渉は、これまでのようにロンドンではなくて、だんだんとクアラルンプールのようなところが舞台になってゆくのかもしれません。

ニュージーランドでは妙におおきな声で話して、まわりのひとをびっくりさせたり、甚だしきにいたっては、「写真を撮らせてください」と若い女の人に声をかけて、いきなり抱きついてタイホされたりして、奇矯な行動がめだつ日本のひとたちは、マレーシアでは、うまく社会に溶け込んで暮らしているように見えました。
日本のプレゼンスはとてもおおきいのに、そっくりかえることもなくて、「なんだ、やれば出来るんじゃないか」という感想をもった。
クアラルンプールではマレーシア人に日本人の感想を聞きはしなかったが、聞けば、多分、よい印象の答えが返ってくるのは、別段、実際に聞いてみなくても、町でみかける日本人たちの姿をみていれば、なんとなく想像がつきます。

奇矯な行動、を見たのはペナンのファイブスターホテルだけだったので、観光客と住んでいる人の違い、ということなのかも知れません。

一方では、わが同胞の白いひとたちは、てんでダメで、あらあー、こんなのもあるんだとSuriaというモールのなかのホーカーズで、いいなあーこれ、と思いながら眺めていたら、ストールに近いテーブルに陣取った若いアメリカ人の男のふたり組が、店のカウンターのなかにいるマレー人の店員に、クイッ、クイッと音がしそうなものを飲む手真似で、カウンターのペプシコーラの缶を指さして、手のひらで手招きして、それをここへ持ってこいとジェスチャーしている。
とんでもない、大失礼な仕草で、このバカなアメリカ人ふたりは、21世紀になっているというのに、いまだに白人は少なくともアジア人の主人であると考えているのがわかって、不愉快というか、 ぼーぜんとしてしまうというか、ただひたすら、店のマレー人が、失礼は感知しても、失礼の度合いは感じないでいたことを願った。

だいたい、どこに行っても、アジアの国では、白い人同士は、お互いでかくて白くて、なんとなく間が抜けていて目立つので、リフトはもちろん、道端ですれ違っても、目配せで、やあ、と述べあうことが多いが、クアラルンプールでは、だいたい暑さでボロボロになっていて、顔色が悪いうえに目の下に隈までつくっている人が多くて、ゾンビが熱中症になったような姿で、蒼惶と歩いていて、お互いに目配せをする気力もない。
マレーシアは特に小さな人が多いので、ところどころ、でっかい道に迷って町にさまよいでたクマさんみたいなのが、よろよろと歩いているところは、いかにも東南アジアの国には不向きで、トランプのようなオオバカタレに対する国家安全保障としては、この暑さがいちばんなのかも知れません。

シンガポール人との付き合いは、子供時代からのもので、長いどころではないが、仕事の上では、ここ数年はシンガポール人がよく述べるように、世界中から、コバンザメ商売というか、なんとかシンガポールの成功者にお近づきになって、繁栄のおこぼれにあずかりたい「起業家」がたくさん押しかけていたりして、もう天井に頭をぶつけて繁栄がジタバタしている段階に至ってひさしい。
シンガポールの英語圏と中国語圏の接点という役割は特に金融において変わらないが、物理的には近い、クアラルンプールとシンガポールの、人間の交流においての意外なほどの距離の遠さを考えると、今回はたくさんの人間に会いすぎてぶちくたびれてしまったが、土地鑑とお友達ができて、まあ、よかったかと思っています。

あと一週間くらい、のんびりして、プールで泳いだり、涼しい夜には屋台をひやかしたりして、ミドルイースタン料理をたらふく食べて、予定よりは早いが、メルボルンかオークランドにいったん戻って、ぐーすか眠って、今度はどこかニューカレドニアかタヒチかフィジーで、来年以降の生活について、ろくでもない計画を策謀しようと考えている。

さて、ロティチャナイでも食べにいくかな。
モニさんは熱帯の町にくると、いっそうよく眠って、朝ご飯を一緒に食べるのをこうしてブログを書きながら待っているといっても、もう午後2時半で、朝ご飯なのか昼ご飯なのか、もしかしてハイティーなのか、食事の定義が唯心的に変化して、
唯心仏教が東南アジアで流行ったわけである、と、意味不明なことを考えました。

では

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ver.6 https://leftlane.xyz もあるよ
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