2017年のサバイバルキット_2

あんまり東京が暑いので、もう少し涼しいところへ行こうと考えた。
いろいろ聞き合わせてみると、軽井沢という町がよさそうなので、出かけて探索することにしました。
鳥井原というところに、西洋式に駐車場が広い「つるや」というスーパーマーケットがあって、しめしめ、ここなら同類の外国人がいて、この町に住むのが良い考えかどうか聞いてみることが出来るだろう、と考えた。

店内に入って、誘拐する幼児を物色する目つきになって、歩いている人をスキャンする。

おっ。白いおばちゃんがおるな。
しめしめ。

話しかけてみると、「ここはパラダイスですよ!」とアメリカ人の訛りでいう。
ミッショナリの人で、日本の町にいくつか住んだが、こんなに住みやすい町はない。
このスーパーだって、駐車場が広いでしょう?
クルマで、あちこちでかけて、探さなくても店の前に駐車スペースがある。
夏は、人で大混雑でたいへんだけど、道の数がたくさんあるから、地理が判るようになれば渋滞につかまって難儀することもない。
絶対に薦められます。

そーかそーか、と考えて、軽井沢に昔から別荘をもつおっちゃんとおばちゃんの友達に全面的に家探しを依存して、夏のあいだ、こっそりやってきて、「あー東京はあちかった」をする家を買い求めた。

住んでみると、あんまり涼しくもなくて、日中はちゃんと30℃を越えたりして、これでほんまに避暑地ですかあ、コモ湖のほうがまだ涼しいのお、と考えたりしたが、この「夏の家」の購入には予想もしなかった「おまけ」がついてきて、おまけのほうが本商品の夏の家よりもゴージャスで、それが「日本の田舎」でした。

軽井沢自体は東京の飛び地のようなところで、退屈、というと怒られるが、東京の巣鴨あたりな感じの生活で、面白いことは何もない。
現に、軽井沢でいちばんおいしい天ぷら屋は万喜という店で、家の掃除にくるおばちゃんに、万喜の天丼を買ってきてくれるように頼むと、
「え?また天丼食べるんですか?ガメちゃんて、天丼男ですね」とか、
頭が揚げ物の怪人のような言われかたをしたりしていたが、うまいものは仕方がない。
話がそれたが、この天ぷら屋は、中目黒の店で、夏になると東京の店を閉めて、軽井沢にやってくるという愉快なひとびとで、この天ぷら屋に限らず、東京の店が多くて、わしが夏の家を買ったときは、もう存在しなかったが、その昔は紀伊國屋スーパーまであったそうでした。

鹿島の森ホテルというホテルの前から、ゴルフ場の脇へ折れて、離山(はなれやま)の森のなかをクルマで上がってゆく。
くにゃくにゃくにゃと曲がりながら、とんぼの湯という銭湯風な温泉の脇へ出ます。
まっすぐいくと嬬恋村という、チョーよい名前の、森が深い、広大なキャベツ畑がある村に出る国道を横切って、ややクランクっぽくなっている道に入っていくと、1000m道路で、いまなら、まっすぐ行くと、ビル・ゲーツの、学校よか大きな、アホなサイズの家がある。

ウインドーズで、世界のオフィスを下品にしてボロ儲けをこいたおっちゃんの家をすぎて、ますます真っ直ぐに行くと、満州開拓団がやっとここで定着した大日向で、それをまたずんずん行くと、追分で御代田で、…と続いている。

モニとわしは、あの道をいったい何回通っただろう?
わしは生来ボログルマが好きで、軽井沢でも、必要なことがあるのでやむをえずピッカピカのクルマを、東京から乗ってきたのとは別に一台おいてあったが、普段乗るのは歴戦の勇者というか、買ったときにそもそも8万キロ走っていた4WDで、サードギアに入れられるのがわししかいなかったので、森のなかのフランス料理屋とかで酔っ払って代行サービスを頼むと、ストールして、「すみません、このクルマのサードギア、どうやったら入るんですか?」と泣きつかれて、代行サービスのおにーさんを助手席に移らせて、自分で運転して帰ったりしていた。

サードギアが入らないくらいで泣き言を言うのでは、わしガールフレンドは務まらない。
代行サービスに来てガールフレンドにされては、たまらないが、そういう意味ではなくて、かつては、デートにやってくると、オカネモチの倅だと聞いていたのに、やたらボロいモーリスマイナーで現れて、いまにも襲いかかりそうな顔でニタニタしながら運転しているうちに、「あっ、やばい、ブレーキが利かない」と言い出して、信号のたびにパーキングブレーキを、ぐわっと引いてクルマを止めていたりして、「今度、あのクルマでやってきたら、マーシュランドの沼に捨てて帰ってくる」と言われたりしていた、強い人で、ことほどさように、ボロクルマが好きで、菅平の下り坂でクルマが減速できなくなってモニさんが悲鳴をあげたりしていたが、ははは、田舎めぐりほど楽しい遊びは、日本では存在しなかった。

国道18号線沿道の汚さはイタリアのラチオよりも酷くて、錆び付いた「ラブホテル」の看板や、半分倒壊しかけている倒産したパチンコ屋や、なんだかよく判らないクルマのスクラップやタイヤや家具が積み上げてあるゴミの山が、あちこちにある。

ところが国道から折れて狭い細い道へ入ってゆくと、これはまたびっくりするような美しさで、人間が金銭欲に駆られてゴミの山を積み上げるまでは、いったいどのくらい美しい国土だったのだろう、とよく考えた。

丸子町や御牧村、東部町、立科、浅科、佐久穂、別所、美しい田舎は軽井沢から近いところでもたくさんあったが、なかでも素晴らしかったのは広大な「名前がついていない森」や「名前がついていない野原」で、多分、名前がついていないせいでガイドブックにも載らないからでしょう、クルマから降りて、辺りを見渡して、モニさんと感嘆の声を挙げることがよくあった。

それまでは日本が美しい国だとおもったことは一度もなかったが、そのとき初めて、なるほど19世紀の母国のおっちゃんや、やたら文字を書くのが好きだったデンマークの水兵や、イザベラ・バードのおばちゃんは、こういう景色を観て「美しい国」と述べたのだな、と得心しました。

なにを長々と書いているの?
あんた、サバイバルキットの続きを書いているんじゃないの?
と言われるはずで、当然だが、なにを述べているのかというと、このあいだ述べたように「よそもの」として田舎にやってきて、ほんとは日本人だけどガイジンみたいにして暮らしているニセガイジンとして、暮らしてゆくのは、よい考えなのではないかと書こうとしている。

大雑把な人は大雑把で、日本に住んでいてはダメだと述べて、自分が住んでいるニューヨークじゃないとダメだとかメルボルンはいいよおーと述べて、それはたしかに本当なのだけれども、仔細にみれば日本も住めなくはない。
それも単に住めなくはないだけではなくて、外国に住むのと相応な、あるいは、外国に住んでも不思議なくらい一向に英語が身につかなくて、20年くらいアメリカに住んでいて、旦那さんもアメリカ人なのに、ちょっと話しているだけでも「単語を拾って話している」だけなのが判って、日本の人にとっては、なんらかの理由で、英語を身に付けるのがこんなにたいへんなのか、と、まさか口に出しては言わないが、心のなかで思ったりする。
言語などは、よく例に出すコンラッドを初めとしておとなになってから英語をベンキョーしはじめて名文家として知られた人などはいくらもいて、
母語人よりも上手になったりするのは、それほど大変なはずはないが、日本人はなぜかダメで、そういう苦労を差し引いても外国に移住してよかったという人はいくらでもいるはずだが、差し引いてしまうとマイナスで、こんなことなら日本にいたほうがよかったと考えて舞い戻ってしまう人も、また、たくさんいる。

福島事故が撒き散らして、その後は、なんだかこうやって考えていてもぶっくらこいてしまうが、政府が積極的に全国に向かって散布した放射性物質を怖がるのは、ただのまともな反応にしかすぎないが、

例えば長野県ならば汚染は千曲川の東岸で止まっている。
もっと大事なことは、長野県の人は昔から「千曲の東でりんごを食うな」というくらいで、りんごひとつとっても千曲川の西へクルマで買いに行く人が多い。

これが重要なことなのはなぜかというと、そういう偏見が土地に長くある場合、伝統的な流通がそこで切れているからで、たまたま汚染されていないまま千曲川の西が残ったのと相俟って、千曲川の西に越して農家や牧場の直販品を食べて暮らせば、汚染された食べ物を食べる確率はぐっと小さいものになります。

金沢や富山の人は自分たちの食べ物のおいしさに誇りをもっていて、その結果、流通のサークルがひどく小さいもので、遠くはせいぜい京都になっている。
もちろんスーパーマーケットは、そんなことはなくて、全国から食べ物が来ているが、それでも、伝統的な流通のせいで、金沢周辺の、地元のものが多いように見えました。

要は自分の生活なのだから、社会問題として捉えないで、自分が生き延びる方法を考えることに集中して、個人の立場から生活を組み立てていけば、あるいは北朝鮮とアメリカの戦争に巻き込まれても、北朝鮮という国がまともな通常兵力を持たないこともあって、案外と普通の生活を楽しんでいけるかもしれない。

次の回では、一歩進んで、日本でしか出来ない楽しみを並べて、外国に移住したくない/できない人たちと一緒に、問題だらけの日本の生活を、いまの慢性症状がついに劇性に変わったあとでも、楽しんで、いえーいな生活をすることを考えたいと思っています。

社会なんて脆いものだが、個人としての人間はしぶとい。
社会がダメになって個人の生活も一緒にダメになるのは、要するに全体主義的なものの考え方をしているからで、個人主義の強さは、社会が破綻したときこそ発揮されるのだということを、一緒に考えたいと思います。

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ver.6 https://leftlane.xyz もあるよ
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