オカネ嫌いのための投資入門

本を読まない人は投資家は無理である、という話をしようとおもっていたのだった。
いまなかだいすけは、投資家というものは複数のモニターに囲まれて刻々と変わる市場の価格に目を光らせながら、あちこちに指示を出して暮らしているものだとおもっていた、と述べるので、か、かわいい、とおもわずにこにこしてしまったが、
一日に何度も株を売買して、あるいは通貨を売買して、理の当然に、だんだん資金を減らして、やがてはクビをくくるしかなくなりそうな、デイトレーダーのイメージで投資というものを考えていたわけで、だいすけさん、いままで「投資」をしてみようとおもわなくて良かったね、と、こっそりつぶやいてみたりしていた。

投資家といっても、いろいろなのは、ビジネスマンというだけでは、「ビジネスをしている人」という意味しかなくて、蕎麦屋さんもいれば戦闘機をつくって売り込みにかかる人もいて、多岐にわたるように、おなじことで、投資をする人、というだけのことで、それだけでは何をしているかさっぱりわからない。
ぼくは不動産の投資家で、居住用と商業と、両方にまたがっている。
おもいつきのせいで入ってきた、あんまり少なくない収入で、11軒の家を買ったのが初めで、この初めの住居用の不動産は、現金で買い取ったが、素人の哀しさ、当時はリターン、つまり家賃収入が10%をやや越える程度で、しめしめ、これでPCゲームをやって暮らせるじゃん、と思ったが、修繕費、レイツ、いろいろ支払いがかさむのが不動産投資の嫌なところで、現実の実入りはずっと少なくて、不動産からの利益を拡大するために、不動産収入だけで12軒目を買おうと考えたら、借金しなくてはならなくなってしまうではないか、と腹をたてていたりした。

…普通の人は、安全な借金なのだから、ふつうに銀行から借りるんだけどね。
自分に課したルールとして、借金はしないことにしていたのです。
不動産投資で無借金なんて、ははは、あんた、そんな無茶な、という人が「プロ」のなかには必ずいるに違いないが、オカネのことを考えるのは嫌なので、お話しをシンプルにするために、借金はしない、いちど買った不動産は売らない、というふたつのルールを自分に課していた。

そこからが投資への道で、道というとおおげさだが、通常の不動産や不動産開発に頼っていると、むははは、もうこれ以上はオカネは要らんわい、になる頃にはひひじじいになっているに決まっているので、自分だけの風変わりなポートフォリオ、というか、ポートフォリオの組み合わせをつくっていくことになってゆく。
評価に数学の知識を動員したところがミソで、うまくいったが、それはここで書いても、よいことはひとつもないので、書いてもしかたがない。

誰かが自分は若くて一文無しだが、どうすればよいだろうか、とツイッタで話しかけていて、無論、子供電話相談室(←いまでも、あるのだろうか? いちども聴いたことがないが、なだいなだの本を読んでいたら、たいそう面白そうな番組で、いちど聴いてみたいとおもっている)ではあるまいし、答えなくてもいいわけだが、「自分が一文無しの若者だったら」という仮定で、どうやったら労働で人生をすり減らさずに食べていけるだろうか、という命題が名大で、東京なら明大なのだろうが、おもしろくて、日本語で書きながら考えれば楽しめるのではなかろうか、と考えた。

とーこーろーがー。
過去に金銭について述べたものを遡って眺めてみると、いやったらしい、涎が口の端から垂れていそうなおじさんみたいなのが、いっぱいたかって、愚劣を究めた「おまえは間違っている」「そんなことは誰でも知っている」から始まるアホなコメントがゴミ箱にてんこもりになっていて、そーか、オカネの記事はストレスのもとになるのだったな、と思い出しました。

株式投資というものは、デイトレーディングのようなやくざな考えは捨てて、ふつうの方法で臨めば、企業をつぶさに見ていくことによって、世界の仕組みがだんだん分明になってくる、という重大な利点がある。
経済を通した「世の中の仕組み」のようなものが見えてくるし、あるいは経営者の考えが、例えば年度ごとの報告書を読むことによって、判って、なるほどこういう考えかたがあるのだな、おおー、こういう立派な考えから利益が生まれることがあるのだ、と、人間についてすら学習する材料にあふれている。
数的な指標にしても、PE(←日本では確かPER)を初めとして、その指標が結局は何を示しているかを、全体から見返るようにして見る方法が身についてくると、投資インデクスの教科書の上滑りでない、指標の評価の仕方がわかって、おもしろいことがたくさんあります。

おもしろいことは、さまざまな会社で、いくらでも起きていて、ひとつくらいは例を挙げると、先週だったか、オーストラリアのDomino’sの社長が、「よい報告がある」と述べて、ついに長年、株式保有者の皆さんと話しあってきた従業員の賃上げが出来ることになりました、と書いている。
あの人は、この数年、自社の従業員の賃金を上げることを大反対の株主たちと粘り強く交渉していて、ついに賃金の大幅アップと、もうひとつにはパートタイマーが十分に労働時間をとれて、自社の仕事だけで生活できるようにするシステムの提案を通してしまった。
この人と、まわりの役員たちは、たいへん面白い人達で、ロボットカーにピザを配達させるために役所と交渉したり、もっかはドローンによるピザの配達の認可を取り付けるべく奮闘している。
GPSによって、いま自分が注文しているピザが、どこを移動中か、常に顧客に見えるようにしたのも、この会社がいちばん早かった。

どんな人だろうとおもって調べてみると、本人がDomino’sのパートタイマーの出身で、宅配ピザの現場を熟知していて、しかも、最もよいのはintegrityと英語で呼ぶ資質にすぐれている。

この会社についても、おもしろい人だなあ、とおもったので、株式の価格が、業績が不振だったり、アナリストが「これではダメだ」と結論をだして価格がガクンとさがったりするたびに、こそこそ買い集めて、それでもほんの少ししかないが、自分で見てこのくらいのコストならいいのではないか、とおもう価格になるたびに買い足している。

おなじ長期にわたって付き合おうと考えた銘柄でも、テスラのように、ファンが多い会社は、ちょっと、これは儲かりすぎだんび、と考えて売って、イーロン・マスクは失敗も多い人なので、失敗して、どかんと下がると、また買って、というように値動きが荒ければ売り買いしながら伴走することもあるが、ふつうは、本業の不動産とおなじで、いちど買ったら、そのままほっぽらかしで、ときどき見て、おおおー下がってる、おおおおー上がってる、でアホそのまんまで、それでも一年になんだかんだで、初めの年の25%が最低で、世の中の金余りもあって、そのあとは、あんまり数字を書いても仕方がないから書かないが、リーマンでチョーたくさんの銘柄が、ゴミ箱に捨てられたような価格になった頃に始めた「趣味の株投資」開始以来、世の中の大半の株投資家とおなじに右肩上がりで、この9年ほどを過ごしてきている。

そーゆー程度の株式投資の知識、というか株式と付き合いながら考えたことを書こうとおもったが、不愉快な人間が集まってくるだけなのを思い出したので、うっかり約束した約束の履行は、この程度にします。

ひとつだけ、どうしても述べておかねばならないのは、投資で生活を楽にしたければ、オカネの仕組みについて、たくさん読書しなければ、どうにもならないことで、日本語世界では、よく自分の知性に特殊な自負を持っている人は、「そんな退屈なことが出来るか」と言うが、そういう人も含めて、落ち着いて、百冊をくだるはずはない、投資を理解するために必須の本を読むのが億劫な人は、投資がいつのまにか投機になって、自分で稼いだオカネが誰かの懐に移動してしまうのは判り切ったことなので、すっぱり観念して、労働と、その労働に見合うと社会が判断した対価である給料とで、残りの人生を生きていくしかない。
それは、それで、楽しい人生でありうるのは、当たり前で、オー・ヘンリーでもなんでもよい、今度は文学の世界の本を読めば、わりと簡単にコツがつかめそうです。

どんな世界にも「まあ、いろいろ考える前に、この本を読めば」という本が存在するが、投資の世界では、それが

The Intelligent Investor

という、Benjamin Grahamが1949年に書いた、チョーチョーチョー有名な本で、内容は古色蒼然としているが、これはアマチュアもプロも、法律のループホールを見つけて稼ぐタイプの人や、もっと簡単に最近ならCDO (Collateralized Debt Obligation)のような、ちょっとでも数学知識がある人間なら、誰でも詐欺にしかすぎないと判る「理論」をでっちあげて、白昼正々堂々とウォール街を動かして大規模な詐欺を起こす/片棒を担ぐタイプの人間でなければ、あるいは、そういう犯罪的な「投資家」であっても、どんな人でも読んだことがある本で、
ええええー、投資の本なんて、読んだことないし、なに読めばいいか判らないよ、という人は、なにも考えずに、この本を買ってきて読むのがよいと思われる。
たしか日本語訳も出ているのではないか。

前に書いたように投資と投機を隔てるのは、投資と呼びうるものは元金がなくなる可能性がない方法で、しかし、例えば偶然、あるいは世評につられて買った銘柄が、たまたま数倍になることはあっても、それは、表面はおなじに見えても投機がたまたまうまくいったにすぎない。
投機、というのは、つまりは博奕で、ぼくなら、そんなつまらならないことをするくらいなら、まっすぐラスベガスのシーザーズパレスに行って、いちばん奥の部屋のテーブルで、数晩ブラックジャックの興奮に耽溺するだろうと思われる。
あれはあれでオカネが稼げないわけではなくて、オーストラリア人のじーちゃんが、ひと晩で50億円近く稼いだりしているのでもあります。
もっとも、投機で50億円稼ぐ人は投機で50億円なくなる人でもあって、見ているほうは面白いが、やっているほうは、さぞかし退屈で、ストレスがたまるだろう、と、いつも同情する。

元手を失うようなやりかたをする人間は、もともと投資に向いていないので、投機の地獄を通行するか、地道に労働するしかない、と何度も書いているが、要は、
オカネをちゃんと稼ごうとするのは、オカネのことを考えるのが嫌だからで、
そういう点から言っても、なんだか一日中PCのモニタとにらめっこしているような忙しい投資をやっていては、いったいなんのためにオカネを稼ごうとしているのか判らなくなってしまう。
一日に一時間もオンライントレーディングに費やす病膏肓に至ると、病気で、しかも中毒性がありそうなので、健康体にもどれるかどうかが心配される。

さて、うっかり約束してしまったので、この記事を書いたが、前述の理由によって、もうオカネの話はしません。

The Intelligent Investorが代表だが、投資の本だと言っても、良い本は、やはり良い本の特徴を備えていて、なんどか読み返して、本そのものと対話することができる。
本に、「ベンジャミンちゃんね」と話しかけていると、奥さんに離婚される恐れがあるが、そういうことではなくて、思考のラケットを使ってボールを打ち合う、という意味です。
他にやることがないときならば、ゲームとして、そんなにつまらない遊びでもない。
ためしてみても、いいかもしれません。

これとは別に、実は集団が投機をするときの運動を理論化して、オンライン取引の即時性を利用して、例えばソフトウエアをつくって投機そのものの確実性を高めるという最近流行の方法があるが、こっちは、退屈でもあれば、比較的高度な数学的な技量を必要とするので、こんなところで書いても仕方がない。

ほんでわ。

This entry was posted in Uncategorized. Bookmark the permalink.

1 Response to オカネ嫌いのための投資入門

  1. 文左衛門 says:

    いつも参考にさせていただいています。
    The Intelligent Investorは日本語版では”賢明なる投資家”ですね。
    さすがガメさん。良い本です。

    ジョン・C・ボーグル「マネーと常識」やウォーレン・バフェットの自伝や
    日本人投資家だと、「私の財産告白」本多静六 (著)は面白いと思います。
    学者でありながら戦前に質素倹約を貫き、林業+株式投資を行い巨万の富を得、その後財産の全てを匿名で寄付した方です。
    未読でしたら是非。

    日本人経済小説家の橘玲の「臆病者のための億万長者入門 」「臆病者のための株入門」
    もこれから投資を始める方は必読だと思います。

    インデックスファンドでのパッシブ投資なら、
    「ウォール街のランダムウォーカー」や
    「敗者のゲーム」チャールズ・エリスもいいですよね。

    渋沢栄一や本多静六を見ると、日本的資本主義+社会保障が彼らの投資と才覚によって作られた投資収益(社会資本化した株式資本)によって各種財団が形作られ、出来上がっていることがよくわかります。

    お金は汚いという思考、労働のみによって得るべきという思考の方は、このことがわかっていないのかもしれませんね。

    長文失礼しました。

    Like

コメントをここに書いてね書いてね

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s