Daily Archives: July 29, 2018

太陽が昇るとき 3

上手に焼けたパンケーキが皿に山積みになっていて、オーブンでカリカリに焼いたベーコンがその上に載っている。 フライにしたバナナや、ブルーベリーが脇にあって、バターを薄く切って、パンケーキとパンケーキのあいだに、溶けたときの分布を考えて慎重に配置する。 仕上げにはカナダ産のシロップをベーコンやパンケーキの上から、大々的にかけて、舌なめずりをする。 家の料理の人は、慣れたもので、この家の人間はラテを飲んでいたかとおもうと突然アルグレイを飲みたくなったり、わがままなことを言い出すのが判っているので、初めから、コージーをかぶせたでっかいティーポットもテーブルの上に載っている。 このあいだ、きみが、「人間の幸福とはなにか?」と書いて寄越したときに、考えていたのは、要するにそんなことでした。 いまの欧州の混乱が、1914年に文明が消滅したことの直截の結果なのだ、というきみの意見は、おそらく正しい。 百年を経て、そのあいだ、ひらたく述べればジタバタして、結局、どうにもこうにも文明の維持をする見通しが立たなくなったのがいまの世界なのでしょう。 子供が欲しいとおもった瞬間に、思い詰めた顔で、ガメ、オーストラリアとニュージーランドに本拠がつくれないか、と述べたモニは、いつものことで、とても勘がよかったのだとおもう。 文明の相克、ということを考える。 このあいだ、こういうことがあった。 日本語のツイッタで、最近、ようやく東京大学とハーバード大学なら、ハーバードのほうが良いに決まっている、というようなことを言い出した日本の母親たちが、例の、ハーバードのアジア人に不利な点数の傾斜を不公平だ、と述べて怒っているの。 これほど明らかな人種差別をハーバード大学のような一流の大学がやっていいのだろうか。 とうてい、わたしたちには許すことが出来ない。 マサチューセッツのケンブリッジのような町にも、ちゃんと白人至上主義者文化は育っていて、もう何年も前から、fraternitiesやsororitiesの残党のようにして集まった学生たちが、 「われわれが苦労して築き上げた教育システムを盗みに来るアジア人たち」というような意見を述べている。 アジア人は、ネズミのように勉強して、ただガリ勉で、人間的にはまったく何も学ぶことなしに点数を上げにかかっているだけではないか。 あんなものが知性と呼べるのか。 教え込まれた芸を正確に再現できるだけの猿ではないか。 われわれはアジア人の盗癖、虚言癖、要領の良さ、薄っぺらい知性を到底ゆるすことはできない。 ぶきー。 きみとぼくと、あのときボストンにいて、おもしろがって会場にでかけて、ペールエールをなめながら、これは、あれだな、この、ものすごく偏狭でケチくさい文化は、どうしたってアングロサクソン文化で、なるほどここには我々の伝統が純粋に生き残っているわけだな、と大声で笑ったら、なんだかデイビッド・ボウイに似た顔のリーダー格に、すごい顔でにらまれたのだった。 人間は、どうして、こうバカなのか、ときみがため息をついていたのを思い出す。 あれはブッシュが湾岸戦争で勝利宣言をだして、イラクの占領政策は日本方式でいく、あの日本人たちでさえ平和主義になるほどうまくいく政策なのだから、うまくいかないわけがない、と述べたときのことだから、相当むかしのことだね。 ぼくはきみの向かいの席に座っていて、薄いガラス板を二枚貼り合わせて、そのせまい空間で営巣した蟻たちが、自分たちの生活のなにもかもを見せてしまうようにして、華氏100度の夏、どの部屋にも冷房なんかないニューヨークの売春宿で、窓を開けっぱなしにして、営業に勤しんでいる勤勉な売春婦達の絵を描いていた。 あれ、きみは気に入ってくれて、オカネを払ってもいいから是非自分に売ってくれ、実家の礼拝室に飾るからと言っていたけど、家に持ち帰って、絵の中のビルの、というのはつまりbrothelの、建物の屋上に腰掛けて、売春婦たちと客たちを祝福する、キャリコドレスの天使達を描き足して、そのまましまいこんでしまったのだった。 いつかモニが掃除の途中で見つけて、この4階の男と女はクリントンとモニカルウィンスキーに似ている、と述べておもしろがっていた。 そのほかには、この壊れた世界を説明するには、どんな象徴があるだろうか。 きみがよく知っている通り、ぼくの叔母の旦那は日本人で、まったく洋化した人格の部分と、日本人のままの部分の、融合しきれなかったアマルガムのような人だが、一緒に中西部を旅していたら、ある日、 「ガメと一緒にでかけると、怖いからいやだ」と冗談めかして述べたことがあった。 冗談めかしてはいるけれども、眼が案外と真剣だったので、どうかしたの?と聞き直してみたら、 「だって、ガメ、きみは気が付かないのかい? どこの国でも、きみが好んでいくところは、色がついた人はひとりもいなくて、白い人ばっかりじゃないか。 ニュージーランドやイギリスでは、それでも、まだいいけど、テキサスなんかで、きみの趣味を発揮されると、おれは撃ち殺されて死ぬかもしれない」と言う。 なにをおおげさな、と思って笑ってしまったが、その話をあとでモニにしたら、 こともなげに「うん。ガメは土地や店への趣味がレッドネックなところがあるとおもう」と楽しそうに言われたので衝撃をうけてしまった。 そのときは、Criminal Mindsで捜査官たちが使っているのとそっくりのGMのSUVで、ダラスの郊外にある有名なBBQの店に行った。 いつもは、そんなことを考えないんだけど、ドアを開けて、テーブルに案内されて、広い店内を見渡すと、なるほど白い人ばかりで、 かーちゃんシスターとモニとわしと、やっぱり白くて、義理叔父はただひとりのアジア人で、なるほど、今度からは考えたほうがいいのかと、そんなふうにしか考えられなくなっていた。 でも、もっと、ものすごいことが起きたのは、そのあとなんだよ。 … Continue reading

Posted in Uncategorized | 3 Comments