Daily Archives: September 27, 2018

太平洋戦争へのノート 3 零戦

宮崎駿の「風立ちぬ」は、なんとも不思議な映画だった。 全篇が零戦という、戦闘機であるのに日本的なやさしみに満ちた技術へのオマージュで出来ていて、そこに零戦設計技師堀越二郎の、ヒロイン里見菜穂子への恋心が、とってつけたように描かれている。 結果は、どんな映画になったかというと、ジブリファンが多いアメリカでも、あるいは、なにしろ「風立ちぬ」は堀辰雄がポール・ヴァレリーの詩句 Le vent se lève, il faut tenter de vivre にインスパイアされて書かれた小説であることが事前に伝えられていたので、アメリカよりも一層期待がおおきかったフランスでも、 「な、なんだ、これは?」と戸惑い失望した映画評が多かったようでした。 やはりジブリファンが多いニュージーランドでは、公開さえ沙汰止みになって、されなかった。 当たり前といえば当たり前で、零戦という戦闘機への愛情がなければ、全体が実は零戦に代表される日本的技術文化に捧げられた物語なので、チンプンでカンプンで、訳がわからん、と映画館の椅子のうえで暴れたくなるのも無理はない。 最近は、多分、日本の戦後の歴史では初めて、「零戦は、ぜんぜんダメな飛行機だった」と述べるのが流行りで、このあいだ「ゼロ戦」で検索してtwitterを読んでいたら「空飛ぶ戸板と呼ぶべき駄作戦闘機」と書いている兵器オタクの人がいて、面白いので吹き出してしまったが、日本の人の面白いところは、こういう軍事技術に類することでも「立場主義」で、見ていると、国際派志向、リベラル志向で、女の人が多くあつまる「おいらフェミニスト」みたいな人は決まって「零戦は、たいしたことない」 「零戦が名機だという外国人に会ったことがない」と述べている。 インターネット・エラは便利で、ほんとうに外国人で零戦を評価するひとがゼロなのかどうかは、そりゃ、日本語で検索してはダメだけれども、英語で検索すれば英語人の評価、フランス語で検索すればフランス人の評価が、専門家のものだけでなくて、市井の人が考えた評価も、公開フォーラムの形で、あるいはQ&Aの形で、いくらでも出てきます。 いまちょっとやってみると、例えば、太平洋戦線の戦闘機を比較した、こういうのがある。 https://ww2aircraft.net/forum/threads/best-pacific-fighter.444/ これは図を初めに掲げてあって、英語がぜんぜん判らなくても一目瞭然なので選んだが、ほかのフォーラムやサイトをみればわかる、零戦への一般の「外国人」の評価としても厳しいほうです。 最も評価が高いのがF4Uコルセアで、次がF6Fヘルキャット、次にP38ライトニングが来て、その次が零戦で11.2%の人が零戦を太平洋におけるベスト・ファイタープレーンに選んでいる。 え? コルセアがヘルキャットより上なの? という人がたくさんいるとおもうが、実は英語世界で一般的評価では、F4UコルセアのほうがF6Fより遙かに良い戦闘機だったことになっていて、日本と正反対の評価です。 なぜ評価がアベコベになってしまったているかというと、多分、最前線ラバウルにいた日本の戦闘機乗りたち、なかでも著書が英語世界でベストセラーになった坂井三郎がコルセアよりもF6Fのほうが怖かった、と述べているからで、あとは、なぜか戦後、大量に発刊された戦記にもF4UコルセアとP38ライトニングを「零戦の好敵手」と呼んで、F6Fは「零戦キラー」と書いてあるからでしょう。 現実とは異なる「F6Fは捕獲零戦の研究によって設計された」という説まで巷間に流布されている。 現実は戦績を観ても、アメリカ側のパイロットの回顧談を見ても、コルセアのほうが遙かに評価が高い戦闘機で、F6Fなどは問題にならない信頼を寄せている。 ただなかにはF6Fのほうがいい飛行機だった、と述べているアメリカ側パイロットも、たしかにいるにはいて、これは自分が飛行機の免許をもっていればわかりやすいというか、グラマンという会社はエンジンが止まると「石のように落ちる」といって毛嫌いする人はいるものの、練習機もずっと作っていて、会社の伝統として、ものすごく飛ばしやすい飛行機をつくる。 「飛ばしやすい」というのは、離陸や着陸時に失速しにくい、脚が丈夫で多少乱暴な着陸をしても折れない、操縦席からの見晴らしがよい、というような、そういうことです。 F4UもF6Fも本義は空母を発って空母に帰還する「艦載機」なので、特にF6Fの、こういう素直さはありがたかったらしくて、新米パイロットにとっては命懸けのF4Uの離着艦がF6Fではリラックスしておこなえて、そのせいで好感を持った操縦士はたくさんいたようではある。 心配したり卑下したりしなくても、では、ヘンな言い方になるかもしれないが、軍事史専門家でも、兵器オタクフォーラムでも、あるいは航空技術オタクでも、またあるいはふつーの人でも。どこの国の人間にあげさせても、太平洋に限らず、第二次世界大戦中のすぐれた戦闘機のベスト10を挙げさせると、零戦は必ず10機のなかに含まれている。 最も誰もが納得しやすいベスト10を挙げると 1_Focke-Wulf Fw-190 2_P-51 Mustang 3_Spitfire 3_Bf … Continue reading

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