Holy Grail

自分が何者であるか、きみに説明する必要を感じない。
これから何をしようとしているか、予告する必要を感じない。

こういうことですよ。
ぼくは、ある朝、午前10時か11時頃、目を覚まして、ドゥーベカバーの上に乗っている猫さんと一緒にのびをして、よれよれのジーンズとTシャツをさっさと身につけて、家の人にもことわらずにガレージのオートマティックドアを、ぐわあああーんと開けて、黒いレンジローバーに乗ってドライブウェイを、ぶうううっーと出てゆく。

ぼくはどこに行くか屋根のうえにサインを出したりしません。
バスじゃないんだよ。
きみとぼくの生活には関係がない。
きみの生活になんかなんの興味もないし、きみがどんな悩みをもっていたって、きみがぼくの友達でないかぎり、どうでもいい。

このブログ記事のゲームブログでなくなった初めの記事には
No longer I care
という言葉がでてきます。
日本語に訳しますか?

もう、どうだっていいのさ。

20歳のころ、ぼくは、この世界をよくしなければ、と考えていた。
世界を自分たちの努力でよりよいものにしなければという考えに取り憑かれていた、と言い直してもいいかもしれない。

若い人間に特有の過剰で愚かな親切心で、この社会へのコミットメントを示すために通りに出て石を投げた、警官たちに取り巻かれた、身体が小さな友達を救い出すために、怒りと筋力にオーバーブーストをかけて、おまわりさんたちを殴る蹴るの暴行に及んで、はははは、ばっちりカメラに収められたりしていた。

祖母はおもしろい人で、孫、つまりぼくや妹に、おまえたちも、いちどくらい政府に抗議して警察につかまっておいで、と述べて、あの例の、といってもきみは知らないわけだけど、あの階級の人特有の、高らかで涼やかな、透明な笑い声をたてたものだった。

ガメや、一人前の男は、一度くらいは留置所でひと晩すごすものですよ。
心配しなくたって、次の日の朝には、おまえの父親やおじいさまが助けに来て、ちゃんと檻から出してくださいます。

ぼくは生まれついて力が強くて、敏捷で、足が疾かったから、いちどもつかまらなかったが、不謹慎なことをいえば、実際、あれはクリケットと同じくらいには面白いスポーツであったとおもいます。

ぼくは説明しない。

ぼくはぼく自身を解説しない。
ぼくはぼく自身の人生を釈明しない。

ぼくの人生はきみのものじゃないからね。

きみの人生?
そんなもの、ぼくの知ったこっちゃないさ。

30歳になると、この世界は、ぼくが手を触れられるものになっていた。
むかしは、テレビのスクリーンの向こう側や新聞の粒子が粗い写真のなかにいるクソジジイやクソババアだったものが、会おうとおもえば会えるクソジジババになって、低いテーブルの向こうで、微笑んで、お行儀良く座っている。

エンジンが付いたスケボーをつくってみたんだよ、乗ってみるかい?
え?道交法?
文句があればおまわりさんか、お節介なじーさんがなにか言ってくるだろうけど、ぼくが住んでいる国には、残念ながら、そういう告げ口おじさんは珍しい。

だいいち、きみは、心配する順番が逆だよ、やりたいことはどんどんやって、それに文句がついてから考えればいいんだよ。

自分がやりたいことをおもいつかなくなることのほうを心配したほうがいいんじゃないの?

鏡を見てごらんよ。
きみは、ほんとうに、そこに立っているの?

誰か見知らぬ人が立っている。

きみはきみなのか。
それとも、きみの社会からの切り抜きなのか。
教科書の読み過ぎで、すっかり退屈でクリシェだらけになった頭をふりしぼってきみは必死で正しい考えにたどりつこうとする。

えーと、ふたつの林檎が一個40円だから2x40=80が正しくて、40x2はダメだよね。

居間では、いましも、きみの父親と母親がノーベル賞を受賞して微笑んでいる医学者の記事の写真を切り抜いて、洋服ダンスの上のきみの写真の横に並べて、うなずきあっている。

せいいっぱい背伸びしても届かないのでキスが出来なくて困っている。
幼なじみだったボーイフレンドと服を脱ぎすててベッドの脇に立って、なあんとなくタンポンくらいだとおもっていたのに初めて実物を見た男性器のでっかさにびびっている。

女のひとのやさしい匂いにすっかり参っている。
スタンドの光に透けて輝く金色の産毛に柄にもない神秘を感じている。

隣の気の毒な独身男が壁をどんどん叩く音に笑い転げながら、朝まで踊り狂っている。

抱き合っている。
夜明けの浜辺で、抱き合って泣いている。

ぼくは説明しない。

ぼくはぼく自身を解説しない。
ぼくはぼく自身の人生を釈明しない。

夕方の凪いだハウラキガルフをpuddle boardで行くように、ぼくはきみの人生を横切っていくだろう。

見つめているきみに気が付いて、手をふっている。
いいところを見せようとしてスピードを出している。

バランスを崩している。

なんとか立ち直って、またパドルをもちなおしている。

きみが見ているうちに、ずっと遠くに行ってしまうかも知れないけど。
でも、ときどききみの横顔をおもいだして、涙ぐんでいるのさ。

もっと光を。

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