COVID-19

このブログは時事問題は苦手なジジブログだということになっている。

時事問題が苦手なほうは、いつか「桜を見る会」問題で世間がこれほど騒いでいるのに触れないなんておかしいのではないか、という投稿が来て、世の中の人の考えることは面白い、とひとりで悦に入っていたことがある。

ジジブログは、つまりは、「日本語が古い」ということのようで、本人はまともな日本語を使おうと考えているだけのことで、意識しないが、あるいは明治文学と戦後現代詩でつくった日本語なので、現代のクール・ジャパンな日本語が好きな人からみると古色蒼然として見えるのだろう。

むかし、イーブリン・ウォーが自分のそれまでの一生で楽しかったことを話していて、ウィンストン・チャーチルに、「きみが書く英語は、どんどん古くなるね」と言われたときの、得も言われぬ、有頂天の気持を述べている。

戦争大好き右翼爺であったウィンストン・チャーチルは、一方では、素晴らしい英語を書いた文人宰相でもあって、ウォーはチャーチルをたいへん尊敬していたから、さぞかし嬉しかっただろう。

時事問題にあんまり触れないのは、職業上の興味以外は、世の中の出来事にたいした興味がないからで、新聞は読むが、買い出しをする人は別に存在するのにスーパー・マーケットやエスニック食料品店に年中でかけているのと同じ理由からで、人間の社会に対する感覚を失いたくないから、というだけの理由に拠っている。

時事問題についてツイッタやフォーラムで話していると、まだ人間の子の生きている社会に生きていることが確認できて、なにがなし、気持が安定する。

COVID-19については、少し、事情が異なる。

パンデミックな疫病というものは、つねに人間性と密接な関係を持っている。

その代表的なものは、言うまでもなく中世のペストで、1348年から1420年まで猖獗したペストは欧州の人口を半減させた。

当時はペストに感染したネズミにとりついて吸血したノミがペットにとりつき、そのペットの猫や犬にとりついたノミが人にとりついて感染が始まる、という経路がわかっていなかったために、なにが原因であるかわからずに混乱した人間たちは、文字通り、半狂乱になって、理性を失わねばならなかった。

もちろんCOVID-19は、そこまでのことはなくて、現に日本政府などは、故意に検査を少なくして、ちょうどfluに対する対策のように、感染が広がるにまかせて、自律的に収束するのを待つ政策であるように他国からは見做されている。

日本語の内視鏡を通して見ても、日本の社会は弱者を救済せずに、切り捨てる方向性を強くもった社会なので、社会の性格に合致していて、諸国民の観察は、ほぼ正しいのではないかと、ぼくも思う。

危機に際しては古代のローマ人の伝統に戻るイタリア人たちが素晴らしいスピードで、徹底的に対策をすすめたり、民主社会の優柔不断を常に鼻で嗤う傾向がある中国の全体主義政府が、武漢市全体を棺桶にしてしまう勢いで、凄まじい封じ込め策をとって、見事にすでに国内ではパンデミック化したCOVID-19を力ずくで収束に向かわせて、国外渡航も最小限にさせることによって、他国への影響も最小といっていいレベルにとどめているのを見ると、なるほど文明の伝統ってのは、こんなふうに活きているんだなあ、とこちらは暢気に感心してしまう。

律儀にしらみつぶしに陽性患者を洗い出して、一方でスプレッダーを厳しく糾弾する韓国社会は、かつての理非曲直に厳格な儒教社会朝鮮をおもいださせるし、日本と選手交代して東アジアの最先端技術の鋩の役をひさしい前から担っている台湾に至っては、38歳の天才ハッカー閣僚Audrey Tangがハッカーたちを率いて、あっというまにマスクのストック数を動的に表示するappをつくってみせたりして、アメリカ政府や日本政府との、台湾政府の、知的水準の差をみせつけて世界を驚倒させた。

なんだかいままでは、ぼんやりとしか見えなかった、それぞれの国のお国柄や、そういう語彙が好きな人ならば、「民度」が浮き彫りになるようで、たいへんに興味ぶかい展開になっている。

当然、個々のひとのお国柄ならぬお人柄も浮き彫りになって、SNSでも、いつもみなれたアカウント名のひとたちが、意外な顔をみせたり、やっぱりな顔をみせたりして、ツイッタを覘く興味が倍加する。

ここぞとばかり政権を激しく非難する人、現実化がいかにも難しそうな思いつきプランを述べて、何故やらないと独りごちる人、「真の民主主義」について講釈する人、科学的態度かどうかについて考証する人、騒ぎすぎだよ、と冷笑する人、見ていて、不謹慎といえば不謹慎だが、面白いなあ、とおもう。
全体にCOVID-19に対抗する現実の対策を迅速に実行するよりもCOVID-19を巡る議論にずっと多く興味があるらしいところが、いかにも日本の人らしい。

自分はどうかといえば、もともと世間との交渉が極端に乏しい生活だが、その上に外にでかけるということ自体やめてしまったので、家の建物のなかと庭だけで構成される生活になっている。

自発的に幽囚の生活を求めたわけではなくて、ペスト時代のイメージが頭にあるので、ではこの本を読もう、この映画を観よう、と決めているうちに、朝から晩まで、意外と忙しい暮らしになってしまって、あっというまに一日が経ってしまう。
外に出て、家からいちばん近いPokemon GOジムくらいまでは歩いていこうとおもうが、たいてい紙魚のような一日で終わる。

いろいろな人があちこちで述べているが、英国での1665年から1666年にかけてのペストの流行で、ケンブリッジ大学は閉鎖されて、当時22歳で雑用ばかりやらされてうんざりしていた下っ端大学人のアイザック・ニュートンは故郷のウールソープの町で「おおひまをこいて」暮らすことになる。

ちょうど、長い不遇の期間が終わって、教授アイザック・バローに薄ぼんやりとして冴えない外貌からは想像できない、異質な、異常と呼びたくなる数学上の才能を見いだされたばかりの気分が昂揚しているときで、タイミングもよかった。

この故郷の町での無為で莫大な時間のなかで、微分積分学や光学、万有引力の着想まで、ウールソープで天啓として得ることになります。

この連合王国人なら誰でも知っているエピソードで、たいていのUK人のパンデミック感染症時の過ごし方は決まってしまっている。

読書と、のんびり。

庵を閉じて、燭を灯して、明窓浄机、心を静かにして机にむかうのに、こんなに適した機会はない。

食べ物は食べ物で、備蓄用の食料に手を付けて、たとえば冷凍庫の贔屓のハラル肉店のスパイスに付け込んであるタンドリチキンが、ぶっくらこくくらいおいしかったり、おなじ冷凍庫のNizami Sheek Kabab用のパテ、買ったまままるごと冷凍庫に放り込んであった中華デリ店の豚まん、はてはオークランドの餃子有名店「百味餃子」の餃子、インドの共働き夫婦用に急速に発展して改良されたインドのレトルトのJalfreziやKadaiのカレー、食べてみると、どれもこれも想像を遙かに超えておいしくて、これなら案外長期お籠もりさん生活も悪くない、という気になってくる。

準備万端だから自分だけはCOVID-19には縁がない、とおもうほどおめでたいわけはなくて、準備しようが面会を謝絶にしようが、感染するときは感染する。

誰でも知っていることで、あらためて書くのも妙な気がするが、こういうことはすべて思考の基礎は確率でできているべきで、少しでも感染する確率が低い方へ低い方へ道をたどるのがよいのは言うまでもない。

しかし無事に生き延びた場合に、「あの期間は無駄だった」とおもうしかないのでは腹が立つので、これも縁で、普段は怠けてやりはしない勉強や、これも何事もなければ読み返すことがなかったはずの本を読むのは、やはり良い事であるような気がします。

せめても、緊急時の生活を楽しんで、普段なら巡り遭わない自分の思考に巡り遭うことをお祈りします。

では

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12 Responses to COVID-19

  1. momo says:

    おもしろく拝読しました!いつもだけど。
    いろんな顔が見える、というのは実にその通り。私も書斎に籠るのは苦ではないので、それなりに暮らしています。

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  2. mikagehime says:

    再掲 ありがとうありがとう
    ありがとう😊
    もう消さないでね!

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  3. ManmaRuth says:

    ああ、読む事ができて良かった。ありがとう。

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  4. kaz184 says:

    月が落ちてくるって, そういうことかw

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  5. 70colors says:

    やぁ、ブログを書いてくれてありがとう。
    再掲してくれてありがとうと言ったところか。

    君の日本語がまだ読めて嬉しいよ。両方の意味で。
    ぼくは—ツイッタでもさんざんごちったが—-こんなことをきっかけにEU人の友人を2人失うこととなり、文化と文明と先入観についてずっと考えているところだ。
    きっと向こうは
    「頑固な日本人女め、僕はレイシストなんかではない」と思ってるに違いないなぁ、なんて思う。

    この国の現状を見るにつけ—–街は消毒されることもなく、ようやく感染者が少しずつ発表に至り、我が街もご多分に漏れず、しかし一向に事態は改善に向かうことのない——この国で、ああ、イタリア人のパニックは正しい、と思うほかないのだ。
    それが人種差別を含むものであることはさておいても。

    そう思う。

    また、次のきみのブログを読めるのを楽しみにしているよ。
    じゃ、ね。

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  6. Yuuri says:

    春休みの子どもたちを見ると、どこにも組み入れられてないほあんとした気分を思い出して、なんだかとても幸せな気分になるのは前からですが、まちはずれの公園だらけのあたりに居るせいもあり、いつもより早くほあんとしてます。おやすみしたお父さんとお母さんも一緒。お休みできないお父さんやお母さんの子ども達も一緒。

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  7. NIKITA says:

    > せめても、緊急時の生活を楽しんで、

    やっとこういうのがわかるようになったよ。
    頑張らんで怠けるわ……。
    (当たり前のことが面白いお年頃)

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  8. UK says:

    ほんと、こんな時でも、「通常営業」に拘泥して、通常営業しなければ死活問題だと思い込んでる人たち、、、
    事態は動いているんだから、こう言う時は嵐が過ぎるのを待って充電しよう←それを自粛と人は言う、と言うだけのことと思うんだけど、なぜそれを言うと怒り出す人がいるのかと不思議に思ってましたが、ああ、コレがお国柄、民度というやつなのか、と腑に落ちました💦

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  9. wooperlife says:

    非常時に、その人の地が出るってのは、そのとおりだと思う。
    プログラマーだった頃、納期が迫ってくると、一緒に働いている人たちの、それぞれの個性があらわになって、なかなか興味深かったことを思い出しました。(^^)
    味わってる余裕はなかったけど。(-_-;)

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  10. Makoto Takahashi says:

    遅ればせながら読みました。読めてよかったです。私運良く?在宅仕事していーよ!って会社から放逐された身としてはラッキーこの上なく読書し、のんびりと家族と過ごしてます。

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  11. niitarsan says:

    読書と、のんびり。

    そう。私もそうするはずだったのだ。
    しかし遠くに住む兄がそれを許してくれなかった。前半戦は。
    来週は確定申告を終わらせさえすれば晴れて(笑)隠遁生活を満喫できるはずである。

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  12. kaz184 says:

    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56697690S0A310C2I00000/

    最近作られたIgM/IgG検査を16日から売るらしいね. 血液検査でウィルスに対する免疫反応自体を捉えるから感度は高いが, 特異度が低いやつ. 陰性確認に向いてるから, 今後予測される病床不足に対する決定打になるんではないか. 陽性確認のためのPCR検査の前段階で使えば少ないPCR検査でより広い範囲の有病率を推定することができるはずだし, そうなればWHOに提出するエビデンスが作れて, 合意形成次第では五輪年内開催も見えてくる.

    韓国のドライブスルーといい, 台湾の抗体を使用する迅速陽性確認キットといい, 助けられてばかりだが, 問題はこれを受け入れるかどうかだな. 感度と特異度の話はちゃんと分けてくれよ…

    今の世界情勢を見渡す限り. 新国立競技場を方舟病院にするぐらいの政治的パフォーマンスと, 陰性確認を徹底的に行う姿勢を見せないと合意は得られんだろう. 封じ込めは手遅れだったが, ひねくれないで努力し続ければまだなんとかなるかもしれん.

    しかし, 中韓台見てると飽きなくていいね. ふざけた状況だが, 少なくとも楽しく過ごせる.

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